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41.休養中

一、二章のまとめみたいなお話です!

短いですがお楽しみください!

「おら! さっさとかかってこいや!」

「ひぃ! い、嫌だって言ってるじゃないですかぁー!」


 騎士団の訓練場で、シオン君がカイジンに追い回されている。

 泣きながら逃げ回るシオン君を、苛立ちと楽しさを混ぜ合わせたような表情で追い回すカイジン。

 どう見てもいじめの光景だけど、周りの騎士たちは呆れていた。


「まーたやってるよ」

「シオン頑張れー。逃げろー」

「応援じゃなくて助けてくださいよぉー!」

「無理に決まってるだろー。そんな怪物の相手できるのはお前くらいだー。だから頑張れー」

「無責任すぎる!」


 同僚の騎士たちは自分の訓練に戻る。

 誰も助けようとしないのは薄情というわけじゃなくて、大丈夫だとわかっているから。

 さて、そろそろシオン君が追い付かれる。

 壁際に追い込まれて、逃げ場を失う。


「う、うぅ……」

「ようやく追い詰めたぞ。さぁ、さっさと剣を抜きやがれ!」

「ひいぃ! も、もう――」


 追い込まれたシオン君は聖剣を抜く。

 カイジンもそれをわかった上で斬りかかり、彼の攻撃は受け止められる。

 横目に観戦していた騎士たちから、おおーという声が上がる。

 みんなこの展開を待っていた。

 追い込まれたシオン君が聖剣を抜き、カイジンとのぶつかり合いが始まる。

 いつもの流れだから、ある意味安心してみていた。


「いい加減にしてください。いつもいつも、怪我じゃすまないですよ」

「はっ! 上等だガキンちょ!」


 シオン君とカイジンのバトルは、騎士団で名物になり始めていた。

 彼らは強い。

 常軌を逸する強さがある。

 それに、見ていてワクワクする戦い方をしてくれる。

 だから大勢の騎士たちが観戦に来ている。

 私はというと、二人がヒートアップしすぎて怪我をしないように見守る係だ。


「二人とも周りのことは考えてくださいね」

「わかっています」

「それはこいつ次第だな!」

「もう」


 二人は今日も元気だ。

 あの力比べから一か月が経とうとしている。

 カイジンはシオン君で暇をつぶし、毎日楽しそうだ。

 力の拮抗する相手がいなかった彼にとって、シオン君は自分を強くしてくれる数少ない相手だから。

 シオン君のほうも、毎回嫌々相手をしているみたいだけど、少しだけ活き活きしている。

 彼もまた、本気を受け止められる相手を探していた……のかもしれない。

 もっとも、性格や趣味趣向は対極な二人だ。

 

「オラオラどうした!」

「っ、このっ!」


 徐々に二人の表情が険しくなる。

 訓練であることを忘れて、本気の目に近づいてく。

 そうなったら私の出番だ。


「二人ともそこまで! 止めないなら水をかけるよ!」

「――!」

「チッ、いいところなのによぉ」


 私の声を聞いた二人が戦闘を中断する。

 よかった。

 入り込んでしまうと私の声も届かない。

 その時は上から水を降らすしかない。

 戦いを止めた二人がノソノソと私のほうに向かって歩いてくる。


「二人ともお疲れ様でした」

「全然疲れてねーよ。まだ動き足りねーくらいだ。おい小僧、さっさと続きやるぞ」

「い、嫌ですよ」


 シオン君も聖剣を鞘に納め、普段通りのヘナヘナした雰囲気に戻っている。


「メイアナさん! できればもっと早く止めてくださいよぉ」

「それじゃ訓練にならないでしょ?」

「えぇ~」

「がっはっはっ! 味方はいねーみてぇだな!」


 しょんぼりするシオン君の肩を、カイジンがガシガシと乱暴に叩く。

 相変わらず嫌そうな顔だ。

 けど、カイジン相手に文句を言ったり、自然な形で会話ができていることに、シオン君自身は気づいているのかな?


「さてと」

「どこ行くんだ?」

「殿下のところです」

「おお、もうそんな時間か。いい加減復活しろって伝えといてくれ」

「昨日も言ってましたよ?」

「毎日だって言ってやるよ。こちとら待たされてんだ」


 やれやれとカイジンは首を振る。

 性格的に待つのが嫌いそうなカイジンが、この一か月文句を言いながらも王城に残っている。

 シオン君がいてくれたおかげもあるとは言え、彼なら勝手に遺跡に入ろうとしたり、王城を飛び出しそうなのに。

 乱暴そうに見えて意外と気が利く人だ。


「なんだよ」

「いえ、じゃあ伝えておきます。シオン君は? 一緒に来る?」

「あ、いえ、疲れたので休憩しています」

「わかった。じゃあ行ってきます」


 私は二人に軽くお辞儀をして訓練場を後にする。


  ◇◇◇


 メイアナを見送る二人。

 カイジンは地面に腰かけ、メイアナの後姿を見ながら呟く。


「毎日毎日マメな奴だな」

「それだけ心配なんだと思います」

「別にもう傷は治ってるんだろ?」

「お医者さんが言うにはそうらしいです。でも、まだ安静が必要だと聞きました」

「ったく、傷が治ったなら十分だろうが」


 カイジンが呆れながら大の字に寝そべる。

 空を流れる雲を見ながら、隣に立っているシオンに言う。


「おい小僧」

「こ、小僧じゃなくてシオンです」

「めんどくせーな。んなことより、そろそろだぜ」

「遺跡のことですか?」

「おう。楽しみじゃねーか。魔神ってやつがどんだけ強いのか確かめてやるぜ」


 カイジンは空に向かって腕を伸ばし、拳を握る。

 期待に満ちた表情で。

 その隣で、シオンは呆れる。


「ボ、ボクたちは復活を阻止するために行くんですよ? わかってますか?」

「うるせーなぁ~ いいんだよ、復活したって関係ねぇ」

「……勝手なこと、しちゃだめですからね? その時は……止めます」

「お前がか?」

「……誰かが」

「そこは自分がって言えよ! 強いんだからなぁ」


 カイジンは気持ちよさそうに目を瞑り、そう言った。

 心地いい風が吹く。

 シオンは彼に認められたことに、小さく笑みをこぼす。


「よっしゃシオン! 続きやるぞ」

「まだ休憩ですよ!」

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