表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/50

23.仲間探し

 私は殿下に入り口の発見と、その先で見つけた扉について報告した。

 執務室の椅子に座り、殿下は私の報告に耳を傾ける。


「庭の噴水か。予想外のところにあったな。通りで見つけられないわけだよ」

「ルーンで隠されていました。魔術師でも感知はできなかったと思います」

「君だから見つけられた、ってことか。石板に続けてお手柄だ」

「ありがとうございます」


 殿下はしっかり私のことを褒めてくれる。

 この一言が聞けただけで、これまでの苦労も吹き飛ぶ。

 もっとも、今回はそこまで苦労はしていない。

 

「それで、例の腕輪がこれか」

「はい」


 殿下が座る椅子の前、テーブルの上には台座にはまっていた四つの腕輪が並んでいる。

 錆びてはいるけどルーンはくっきり残っている。

 見た目は磨けば綺麗になるだろう。

 

「この腕輪が、扉を潜る鍵なんだな?」

「おそらくそうです。扉、というより壁は鉄に近い金属で出来ていました。硬度はわかりませんが、相当な硬さです」

「扉の周りは?」

「土と岩、地面です。ただ横から侵入はできません。軽めに砕いて確認しましたが、扉以降も同様の金属で覆われていました。そしてすべてに、無数のルーンが刻まれていました」


 扉、壁、台座。

 確認できたほぼすべてにルーンが刻印されている。

 それも十や二十という易しい数字ではない。

 文字通り無数、数えることすら困難な数のルーンが重ねて刻印されている。


「石板の時のように解読はできないのか?」

「難しいです。今回は規模が違います。それに、ルーン自体が外からの魔力を拒絶していました」

「拒絶?」


 私はこくりと頷く。

 石板のルーンは合計百二十文字。

 対して今回のルーンは、少なく見積もっても万を超えている。

 たった百文字程度で三週間かかった。

 同じやり方で解読したら、何年もかかる。

 加えて刻印されたルーンは、術者の意志で外部からの干渉を拒絶している。

 読み解くことも難しく、強引な破壊すら今回は望みが薄い。

 唯一解読ができたのは、腕輪に刻まれているルーンのみであることを、殿下に改めて伝えた。

 

「そうか。なら、鍵を使って出入りする他ない、か」

「はい」


 殿下は腕を組んで悩む。

 憶測を含むけど、この腕輪を装着している者だけが、扉の奥に進むことを許される。

 腕輪は四つしかない。


「ルーンで閉ざされているということは、内部にも同様の仕掛けがあると考えたほうがいい。四人のうち一人はメイアナ、君が適任だ」

「はい!」


 私は力強く返事をした。

 殿下に言われるまでもなく、そのつもりでいた。

 ルーン魔術への対策は私にしかできない。

 何より、興味があった。

 文献以外でルーンに触れる機会があまりになかった私にとって、古代の遺産に触れることは願ってもないチャンスだ。

 この遺跡探索が、私自身の成長に繋がる。

 そうすればもっと、殿下の役に立てる。


「あと二人か」

「二人?」

「ああ、君と、俺で二人」

「殿下も探索に加わるおつもりですか?」


 驚いた私は尋ねる。

 すると殿下は不服そうな表情を見せて。


「なんだ? 俺と一緒は嫌か?」

「ち、違います! 私は、嬉しいです」


 以前されたのと同じ、意地悪な質問をしてきた。

 私はすぐに否定して、恥ずかしさに耐えながらも本音を口にする。


「ははっ、冗談だって。そうか、嬉しいか」


 そう言いながら、殿下も少しだけ嬉しそうに笑う。

 

「安心しろ。こう見えて俺は強い。自慢じゃないが、この国で俺以上の魔術師はいない。ルーン魔術を除いて、な」

「それは、存じております」


 アレクトス殿下は魔術の天才だ。

 多くの才ある魔術師たちが集う宮廷であっても、殿下の才覚には及ばない。

 第二王子にして、現代最高の魔術師。

 改めて凄い人物と、こんなにも近くで話している。


「どうせ少数なんだ。テキトーな人材より、実力があって信頼できる人間がいい」

「はい」


 それには激しく同意する。

 殿下が同行されるなら、殿下が信頼している方を加えるべきだ。

 他人と接するのは苦手だけど、殿下が選んだ人なら、きっと大丈夫。


「殿下はもう誰にするかお考えなのですか?」

「そうだな……一人、候補はいる。まだ若いが才能だけで言えば、この国一だ」

「王国一の才能?」


 殿下がそこまでハッキリ言う人物がいる?

 誰だろう。

 パッと頭に浮かばない。

 強い人で思い浮かぶのは、王国が誇る騎士団の方々かな。

 あとは宮廷魔術師……でも殿下のほうが……。

 考えてもわからない私は、素直に尋ねることにした。


「どんな方なのですか?」

「――勇者」


 ぼそりと、殿下は口にする。

 ニヤリと笑みを浮かべながら。 


「この国でただ一人、聖剣に選ばれた者」

「聖剣……そんな人がこの国に?」

「ああ、いる。ちょうどいい」


 殿下は椅子から立ち上がる。


「今から会いに行こう。スカウトだ」

「は、はい!」


 聖剣に選ばれた人……勇者。

 一体どんな凄い人なのだろう。

 私は屈強な男性を思い浮かべ、ワクワクしながら殿下と共に部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ