第1話
異世界転生してから一月。
ソロキャンは楽しい。
だが、ここの森はヤバい。
信じられないレベルで魔素が濃く、ドラゴンとか恐竜とか住んでる生物が極悪のレベルなのだ。
普通の森だったらまずはスライム、次にゴブリンとかコボルトとかじゃね?
まぁ、魔素が一番濃い森の中心近くで住んでるから弱すぎる生物は生きていけない。
空に飛び上がり、かなりの上から確かめた……確かめきれなかったけど、森の広さがヤバい。
端が見えない。
目では確認できなかった。
探査できる探査魔法を限界範囲の半径100キロメートル程に広げたが……まだまだ森は続いてる。
んでもって世界樹と呼ばれる天をつくような巨木は何本か生えてた。
初エンカウントモンスターはTレックスみたいなバカデカイ恐竜だったけど、『森の王』の称号は伊達じゃなく、相対したとたんに向こうが死んだフリしてやり過ごそうとしていた。
俺が少し離れたら足音を立てないようにそろっと立ち上がり、俺の位置を見ながらゆっくりと反対方向に逃げていって呆然とした。
俺の外見は5才児では大きい方になるが130センチぐらいしかないヒョロヒョロのチビッ子だ。
ハイエルフらしい整った顔と外見。
色白で細い身体、長い耳にサラサラの髪の毛。
胸ぐらいまであるストレートの金髪。
転生してきた次の日に確認のため、アイテムボックスから取り出した全身鏡で見たから間違いない。
瞳の色は緑。
想像していたハイエルフそのもの。
地球人のときと差があり過ぎて慣れるまで一月かかった。
こんな子供の外見でTレックスが死んだフリをするんだから俺の持つ森の王という称号が凄い……だけじゃないわな。
ステータスからして異常だろう。
輪廻転生の全ての経験値やスキルが俺の中に存在して神の域まで到達してる力を持ってる。
間違いなくこの森の頂点。
『森の王』
この森の名前は『龍の森』
なので『龍の森の王』
30メートル以上もある超巨大なドラゴンも俺を迂回して森の上空を移動してるのは確認済み。
一月が経過する頃には色々と自分自身の能力を確かめて、この存在力を体内に収縮して森の中に溶け込ませるのも造作もない事だった。
ただ存在力を消しても森の王の称号は残るので誰も襲いかかってこないのは変わらない。
数多くあるスキルもまだまだ確認できてない方が多い。
周囲に人がいないので対人スキルは確認のしようがない。
アイテムボックスの中にはモンスター等の食材だけでなく米や調味料、地球で食べたことすらない……テレビやネットで見て食べたかったデザートまで山盛りに入ってるので周りを彷徨く恐竜を狩る必要もない。
あんまり美味しそうに見えない外見だし。
極上の美味しさと言われるドラゴン肉もアイテムボックスにすでに入ってる。
草食恐竜達は俺と遭遇したらチラッと俺を見るが草を食べるのをやめない。
肉食の恐竜やドラゴン達は俺の顔を見て『あっ』って顔をして停止する。
しかしそれも一瞬だけで、俺が無視してると狙ってる獲物を狩り、獲物を咥えてそそくさと逃げていく。
触らぬ神に祟りなし……という、言葉そのままの対応をされてる。
俺もほぼ無視した状態で生活してる。
食事もそうだが、木の上で生活するのが落ち着く。
気のままに暮らし、その日一番過ごしやすい木に魔法でベッドを作りそこで寝てる。
ハイエルフだから木魔法で作るベッドで寝るのが一番落ち着くようだ。
俺はこの森の恵みに触れることなく、食物連鎖の枠外で更に5年を過ごした。
ソロキャンは流石にそろそろ飽きてきた。
10才になり身長は170センチを越えた……
ハイエルフは15才ぐらいで180センチを越えて、青年を迎え最終的に190センチぐらいでようやく成長が終わるようだ。
スラッとしたハイエルフのイメージ通り。
見た目も全く変わることない若さを保ったまま何千年と生きられるらしい。
髪の毛や髭は伸ばすも引っ込めるのも魔力で自由自在って事に去年気付いた。
ここの森で5年も生活する間に友人ができた。
ちなみに全員人類ではない。
亜人もいない。
古龍と言われるヤツらと会話できる事がわかったのは、向こうから挨拶してきたから。
龍王自ら単独で人族のような姿に変化して挨拶しにやってきた。
一番大きな世界樹の麓で生活してると言われた。
ジャンプして上に飛び上がった事は何回かあるが、いくつかある世界樹の下からしか見てないので、どれが一番デカイ世界樹なのかわからないと言ったら、世界樹の大きさ等々(などなど)事細かに書かれた全世界の詳細な地図の知識をもらった。
もちろん龍の森の地図データを中心にしている。
世界中に眷属や子分かいる龍王が持つ地図データなので、龍の森のどこにどんなドラゴンが住んでるかだけではない……人の国での現在進行形の紛争中の場所や、過去に栄えて滅びた遺跡群、亜人等の勢力圏も詳細に入ってる。
しかも日々データ更新されてるようだ。
あまりのデータの量にビビったが、俺の脳がパンクしないよう魔力を使ってもらったデータは、自動的に魔力で作られたデータサーバーに保管されて、いつでも取り出し可能になってると教えてくれた。
めっちゃ便利だ。
お礼にデザートのアイスクリームをあげたら、あまりの旨さに感動したようで時々仲間を連れて遊びに来るようになった。
この『ジャスビレンド』の世界にやって来て初めての友人だったので嬉しくなった。
この森に住み始めて2ヶ月ぐらい誰とも会話してなくて最初に龍王に話しかけられてビックリしたぐらいだし。
龍の森には洞窟がけっこうある。
そのいくつかはダンジョンになっており、最奥にはダンジョンの主がいる。
ダンジョンの主でリッチと呼ばれる『不死の王』とは友人関係。
森で肉を焼いて飯食ってたら向こうから話しかけてきて……餌付けに成功した。
それ以降、時々暇潰しでダンジョン産の酒持ってやってくる。
ダンジョンの主なのにダンジョンから離れて大丈夫なのかと心配したが、一月ぐらいなら大丈夫みたいだな。
魔力が減ってきてヤバくなったらダンジョン最奥にあるダンジョンコアから魔力を補充しろと強制転移で引き戻されるので心配すらしてないようだ。
人の生活圏に近いダンジョンだと沢山の冒険者や騎士団等の人族や亜人がやってきて、ダンジョンの恵みを得るために無茶をしてダンジョンに入ってくるのでかなり忙しいようだが、人族の寄り付かない龍の森の奥地にあるダンジョンに、冒険者なんか来たことないし、ほとんど放置してるからダンジョンコアもそこまでゴチャゴチャ言ってこない。
暇潰しで龍の森をあちこち散歩して歩きまわってると教えてくれた。
自由だな。
リッチになったのも……ダンジョンと共に主として産まれたから、よくわかんないらしい。
ダンジョンコアと時々会うドラゴン以外と初めて会話したと教えてくれた。
まぁ、俺も似たようなもんだし。
俺の場合……龍王に詳細な地図データをもらったので、世界中のどこにでも転移魔法で移動できるようになった。
散歩以外で歩きまわるのは止めたが龍の森以外には転移したことない。
龍の森という物騒な場所で生活しているが争いも戦いもない平和な世界を満喫中。
ソロキャンはちょっと飽きてきたけど。
異世界の人族とはまだ交流はない。
人族が暮らす生活圏に一歩も踏み入れてないので会ったことすらない。
人族は相も変わらず争い世界を壊していると、ドラゴンの長老達は酒を呑んでボヤいていた。
そんな事聞いたら交流する気も減るわ。
人族が龍の森にある恵みを奪いに果敢に挑戦してきたり、時々子供を捨てにきたりして、龍の森の端に訪れているようだが……全員が待ち構えている肉食恐竜達に根こそぎ喰われているようだ。
龍の森の肉食恐竜と言っても、龍の森ヒエラルキーの中でも端でしか暮らしていけないかなり底辺の生物。
生きるために龍の森の魔素が必要なんだが、森の端でしか生きていけない森の中での弱者。
訪れてきて喰われる人族よりも龍の森の弱者の方が俺には仲間意識があるので、弱者から食事を奪うつもりもなく、人族を助けようとも思わない。
わざわざ森の中に入ってこなけりゃ喰われないんだから。
龍の森で生息する生物は森の外には出ない。
たまにはぐれて出ていくヤツもいるらしいが、龍の森の周辺には生物は全然いないので食べ物がないし魔素の薄さに耐えられずに戻ってくる。
龍の森の魔素は森が守ってる。
森の切れ目が魔素の切れ目。
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