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大井本社メインフレーム侵入

……………………


 ──大井本社メインフレーム侵入



 凛之助はバックドアの情報を持ってセーフハウスに帰宅した。


「夏姉。バックドアの情報だ。だが、彼はバックドアを教えたことが分からないようにしてほしいと言っている」


「オーケー。もう既に始めているから。いくつかの大学のメインフレームを踏み台にして大井のメインフレームに攻撃を仕掛けてる。もちろん、抜けてない。これを作ったのは優秀なハッカーだからね。だけど、その過程でバックドアを見つけたってカバーストーリーはできるはず」


 夏妃はそう言いながら大井のメインフレームへの攻撃状況を示す。


 些細な悪戯程度の攻撃だが、まさかここでバックドアを狙われるとは大井も思ってもみないだろう。大井のメインフレームは攻撃を弾き続けている。


「さて、じゃあ、そろそろバックドアを開けますか」


 開けごまと言って、夏妃はあの複雑な数列をタイプすると、バックドアが開いた。


「予想通り、メインフレーム内のセキュリティーも頑丈だね……。あのワームを使おう。雪風、準備して」


『畏まりました』


 メティス本社を攻撃したときに使用した軍用ワームが展開される。


「これを大井の台湾サーバーから……」


 脆弱な大井の海外支社のサーバーからバックドアに向けてワームを放つ。


 突如としてメインフレーム内に現れたワームは、セキュリティを突破しつつ、大井のメインフレーム内の情報を丸裸にしていく。


「魔王と勇者の文献について検索」


『了解。既に敵防衛エージェントが活動中。ですが、演算量に余裕あり』


「大井も本社のメインフレームを落としたくはないでしょう」


 大井のメインフレームが落ちるということは経済的に何兆円もの損害が生じることを意味する。メティスの時と違ってそう簡単にメインフレームを落とそうとは思わないはずだ。少なくとも今はまだ。


『データベース検索中……。該当する文章2件。ひとつは宗教法人古代神儀流の有していた資料と一致。もうひとつマジックスティック作戦という文章。内容はコピーしました。後で参照なさってください』


「オーケー。連続殺人事件との関係性を含んだ情報を次は検索」


『データベース検索中……。該当する文章2件。ひとつは東海林大河という人物についての調査報告書。今回の連続殺人事件との関係性を示しています。ひとつは大井医療技で破棄された義肢をT.Tに与えるというもの。これは東海林大河を指しているものと思われます。それ以上の情報は見つけりません』


「このままどんどん行っちゃおう。民間警備企業に対する大井の命令について」


『警告。ブラックアイスです。ですが、今のワームの威力ならば突破できます』


「なら、力尽くで突破するよ。防衛エージェントは攪乱ウィルスを散布して対応。ワームはブラックアイスの突破にだけ専念。オーケー?」


『オーケーです、マスター。早速突破にかかります』


 雪風が薙刀を取り出し、振り回し始める。


『ブラックアイス、突破40%、50%、60%、70%……』


 雪風がカウントを始める。


 ブラックアイスはゆっくりとアイスブレイクされ、じわじわとその機能を失ていく。


『防衛エージェント増大。今だ攪乱可能。ブラックアイス、突破85%、87%、90%』


 そして、雪風が大きく薙刀を振り上げて、振り下ろした。


『ブラックアイス突破完了。防衛エージェントの数、さらに増大。ですが、演算量に問題なし。情報を吸いだします』


「お宝がありますように!」


『情報抽出完了。全ての接続を切断します』


 ぶつりと大井本社メインフレームの様子が映らなくなった。


「どうなのだ、夏姉?」


「忙しくて情報を読む暇もなかったから今から閲覧」


 雪風、念のためにウィルススキャンと夏妃が命じる。


『ウィルス、ワームの類は存在しません』


「オーケー。閲覧といこう」


 夏妃は最初に読む暇がなかったマジックスティック作戦という文章に目を通す。


「何々? 『我々はこの戦争に参加すべきである。参加資格者を確保することを最優とし、勇者と魔王の戦いに介入するべきである。場所は海宮市と予想される』と。え? これだけ? これだけしかないの?」


『メインフレーム内にあった情報はそれだけです。他に参照すべき情報はありませんでした。ですが、これから大井も魔王と勇者の戦争について知っており、そして海宮市でそれが行われると予想していたようです』


「それぐらい読めばわかるよー。だけど、どうして大井はそれについて情報を得たんだろう? やっぱり古代神儀流って奴?」


『恐らくは。メインフレームには以前入手した情報と同じものが』


「ふうむ。どこのデータベースを漁れば完全なデータが手に入るかな……」


『恐らくは日本情報軍情報保安部』


「それは無理って意味と一緒だよ」


 夏妃が呆れたようにそう返す。


「さて、続いては大井から民間警備企業への指示、と」


 メインフレームのメールサーバー内にあった情報を夏妃が読み始める。


「『マジックスティック作戦実施に伴い、日本情報軍及び神奈川県警との協力を最小限に保つように。情報の共有についても最低限のみを許可。また、坂上宰司の居場所について最優先で特定されたし』と。わわっ! 宰司君、危ない!」


『宰司様でしたら、セーフハウス内です。問題はないかと』


「けど、民間警備企業が探しているわけだからね。気を付けるに越したことはないよ。しかし、宰司君を名指しで捜索するように命令を出している上に、日本情報軍や神奈川県警にはそれを教えるな、と来たか」


 間違いなくなく碌なこと考えてないよねと夏妃はぼやいた。


「宰司は大丈夫なのだろうか?」


「大丈夫。お姉ちゃんが守り切って見せるよ。安心して、リンちゃん」


「ああ。だが……」


「気持ちは分かるよ。何か行動したい。けど、今、リンちゃんまで動くと、いよいよこっちは動ける人間がいなくなる。私と雪風ではどうしようもないし。だから、今はじっと我慢だよ。迂闊な行動が宰司君を危険にさらすから」


「……分かった」


 それでも凛之助には嫌な予感がしてならなかった。


「恐らくメインフレームになかった情報は個人端末にあるね。それも高度なセキュリティに守られているか、スタンドアローン。今の私たちでは手が出せない。けど、有意義な情報も手に入った。やっぱり大井が関わっていることを証明出来たし、大井が連続殺人事件の犯人──東海林大河を匿ってることをも分かった。奴に軍用義肢を装着したのも大井の仕業。大井ががっつり本件に関わってる」


「これでビッグシックスが2社参戦か」


「そう。できれば近づきたくないドラゴンが2体。その上日本情報軍まで関わっている。私たちは正直、どんどん追い詰められていっているよ……」


 そう言って夏妃が唸る。


「不幸中の幸いはリンちゃんのことが大井にバレていないということ。宰司君を探すように命令が出ていても、リンちゃんを探せって命令は出てない。これは使えるかもしれない。少なくともこれぐらいは使っていかないと勝利できない」


 相手はビッグシックスだからねと夏妃は言った。


「国家すら動かせる相手がふたつ。国家そのものがひとつ。確かに使える情報の穴は使っていかなければならないな」


 凛之助はそう言って頷いた。


……………………

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