エピローグ
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──エピローグ
戒厳令は4日で解除された。
自分たちの敗亡を知った日本情報軍の幹部たちは作戦を中止することにした。
これ以上の関与は無駄だとして、あらゆる部隊が引き上げていく。第401統合特殊任務部隊は解散を命じられ、日本情報軍にとっての魔王を巡る戦争は終わった。
戦争が終わったのは凛之助にとっても同じだった。
彼はこの戦争を生き延び、そして終わらせた。
もう誰も自分たちを狙ってはこない。
凛之助はセーフハウスの扉を開ける。
「ただいま、夏姉」
「お帰りなさい、リンちゃん」
夏妃は笑顔で凛之助を迎えてくれる。
これからどうしようかと凛之助は頭を巡らせた。
まず夏妃のナノマシンアレルギーを治療したい。そして、夏妃に新しい足をプレゼントしたい。これから姉弟として仲睦まじく暮らしていきたい。
「アリスは……」
だが、ひとりだけこの場にいるべきで、いない人間がいた。
アリスだ。
「大丈夫! そんなこともあろうかとお姉ちゃんはアリスちゃんのバックアップデータを盗み出しておいたのです。アリスちゃん? 構造は把握できた?」
夏妃がデスクトップパソコンに向けて話しかける。
『はい。把握しました。新しいボディに適応。凛之助はいるのですか?』
「いるよ。そこに」
夏妃がWebカメラを凛之助に向ける。
『こ、こんにちは、凛之助。私のボディに入った方の私は何か言っていましたか?』
「『あなたには帰りを待っている人がいる。その人の下に帰ってあげて』と」
『そうですか……。何はともあれ、今日からよろしくお願いします』
モニターの中のアリスが優し気に微笑む。
「ああ。よろしく頼む」
そして技術的特異点が訪れようとしていた。
AIによりより高度なAIの生産と、その高度なAIによるより高度なAIの生産。人間の知能を超えるAIの生産。
それは今から始まる物語だ。
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本作品はこれて完結です! これまでお付き合いいただきありがとうございました!