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転生守銭奴女と卑屈貴族男のお忍び旅行事情 05

 わくわくしていた気持ちに、冷や水をぶっかけられるような言葉を、わたしはしばらく飲み込めないでいた。

 あっ、でも、ちょうどいい、ってそういうこと!? 禁制品として、街に茶葉がないから、お茶を飲めない今なら問題ないか、っていうことなのね!?


 混乱しながらも、何とかディルミックの発言を咀嚼しようとしているところに、彼が説明を付け加えてくれる。


「曾祖父の時代に、メイナルで流行った、依存性が高い違法薬物が、植物を乾燥させて作るものでな」


「……ああ、はい、なるほど……」


 その説明だけで、なんとなく分かってしまった。


 つまりは、茶葉が隠れ蓑になっていて、まぎれて入ってくるものを選別できないから、茶葉ごと禁制品にして取り扱いをやめさせれば、違法薬物も取り締まることができるだろう、ってことなんだろう。グラベイン人、極端すぎるんだって……。この様子じゃ、他にも何か、巻き添えを食らって禁制品になっていそうだ。


「……解禁される予定はないんですか?」


「昔と違って、その違法薬物の検査方法が確立されているからな。可能ではあるんだが……検査員を雇い、育て、法を変えるには時間がかかる」


 それじゃあ仕方がないかあ……。そもそも、違法薬物と普通の茶葉の選別自体が難しかったなら、禁制品になるのも仕方がないか。マルルセーヌだったら、多分、一か月か二か月くらいで、選別方法の確立と検査員の配備、法の制定まで猛スピードで進めていくだろうけど、他の国じゃそうもいかないよね。

 そもそも、マルルセーヌだったら、茶葉と見間違われるような植物の知識が広まっていないわけがないから、土台からして違うのだろう。ゼロから検査方法を考えないといけないのでは、労力が桁違いだ。


「茶はないが、港町というだけあって、海鮮が美味い。それを楽しみにしているといいよ」


「海鮮! いいですね」


 屋敷で出る料理に魚介類が出ないわけではないが、どうにも魚に偏っているように思う。貝とか甲殻類はなかなかお目にかかれない。立地的に、そこまで海から離れているようには思えないけど、車でピューっと運ぶ、ということができないから、鮮度に難があるのだろう。


 でも――まあ。

 お茶はなくたって、ディルミックと一緒に、見知らぬものを見て回るだけでも十分に楽しいのだ。そこにお茶があればなおいい、というだけである。


「――あ、大きな鳥! あれってなんていう……」


 屋敷にいるときでは絶対に見ないサイズの鳥。この辺りに生息する海鳥だろうか、と思って、指をさしながらディルミックを見ると、また笑われてしまった。

 非常に、非常に悔しいが、ディルミックの、ちょっと分かってない気づかいは、正しいものだったのだと、今更思い知らされたのだった。

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