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転生守銭奴女と卑屈貴族男のお忍び旅行事情 03

「旅行、と言っても、視察のついでに行くようなものだが……グラベインの観光地に行かないか、と誘っておいて、行けていなかっただろう?」


 新婚旅行で、あてもなく街をぶらついていたときの、社交辞令みたいな口約束。ディルミックが適当を言って、反故にするとは思っていなかったけど、同時に、実現するともあまり思っていなかった。忙しい人だしね。あれからもう何年も経っているから、難しいのかな、と思っていたのだけど……覚えていてくれたんだ。


 子供も乳幼児、というような年齢ではなくなったし、そもそも使用人がたくさんいるような家なので、わたしとディルミック、二人だけで育てているわけではない。子供だけで置き去りにはできないが、面倒を見る人には事欠かない。


 というか、むしろわたしが平民の出だから平民の育児に近づけてもらえているため、わたしやディルミックが子供に対して赤ちゃんの頃から結構な時間接しているけれど、本来なら乳母さんとかが育てる方が本来なんだよね。


「もう少ししたら、上の子らを連れていかないといけなくなるからな。……二人で領内を回れる機会も少なくなる」


 そういえば、もうそんな年齢か。

 もはや前世より今世の方が生きた年月が長くなったので、前世のことを引っ張り出してくることも減ってきたが、時折、ふとした瞬間に違和感を覚えることがある。


 わたしからしたら、子供たちはまだまだ遊び盛りに思えるけれど、貴族であるディルミックからしたら、そろそろ親に同行して、貴族としての仕事を学び始めないといけない時期なのだろう。


 確かに、そうなれば二人きりで出かけることもなくなるかも。

 契約結婚の難点というか、ディルミックを恋愛対象として意識してから、子供ができるまで、あっという間だった。よくある、新婚期間とか、恋人同士みたいな関係性とか、ほとんどすっ飛ばしてきた。


 子供ができて、家族としてディルミックを見るようになってきて、それに不満がないわけじゃないけど、まあ、せっかく二人で出かけられるなら――。


「君も、せっかく旅行に出かけられるなら、子供がいない方がいいだろう? 思い切りはしゃいでも問題ない」


「……ディルミック」


 そういうところ、あるよね! わたしが、初めてパーティー用にドレスを仕立てたときも、薄い反応だったし。妙に乙女心を抑えられていないというか。……いや、いい年した、子持ちの女が乙女心を露骨に主張するのも、それはそれで恥ずかしいけど……。


 でも、多分、ディルミックの頭の中では、第三王子の婚約パーティーに出かけたとき、ホテルの部屋で、好奇心のおもむくままに行動していたわたしがいるのだろう。

 いや、もういい年ですし!? あんなに落ち着きないことしないよ! ……多分。

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