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転生守銭奴女と卑屈貴族男の新婚旅行事情 07

 マルルセーヌ国王と王妃への挨拶と、王都での観光も無事終わり、わたしたちはマルルセーヌのとある都市――メルセンペールへと来ていた。わたしの生まれ育った領地である。

 とはいえ、今いるのは領地の中心部、領主がいる都市であり、わたしの出身地である村にはまだまだ距離がある。

 メルセンペールは比較的のどかな土地だ。まあ、身もふたもなく言ってしまえば、田舎、というわけだが。

 領主のいるこの街はまだマシな方ではあるのだが、比較的落ち着いているディルミックの領地に比べても田舎である。この雰囲気が好きと言えば好きではあるが、不便であるのは事実だ。


 そんなわけで、めぼしい観光地はこれといってない。


 まあ、そもそもマルルセーヌ自体、お茶以外にめぼしい観光力のある国でもないのだが。国内全土に渡って、あちこちに観光地がある前世の世界――日本の方が、珍しい気がする。

 しかし、王都で目的もなく歩くだけでも、ディルミックと二人ならそれなりに楽しく時間を過ごせたので、メルセンペールでも、領主様に挨拶をしたら、街に下りてあれこれ散策する感じになるのかな、と思っていたのだが……。


「カノルーヴァ夫人、こちらはいかがでしょう!」


 何故かわたしはドレスを選んでいた。


 いや何故かっていうか、挨拶をしに来たら、流れであれよあれよという間に、今晩開催される、仮面舞踏会へと招待されてしまったからなのだが。

 メルセンペールの領主の奥方が、パーティー好きな人らしい。領主様も領主様で賑やかな方が好きなお方らしく、頻繁に近隣の貴族や商会の富豪なんかを呼んではパーティーを開催しているそうだ。


 わたしがここにいた頃の税金、そんなのに使われていたのか……と一瞬思ったものの、村で生活していて、生活が苦しい、と思ったことはあんまりなかった。それを考えると、頻繁にパーティーを開いている、といっても、ある程度節度を考えてやっているのかもしれない。

 貴族のパーティーって人脈づくりとかも兼ねているんだろうしな……。わたしの中の身近な貴族がディルミックと義叔母様しかいないので、いまいちピンとはこないのだが。


 まあ、わたしがあれこれ考えていてもしかたあるまい。わたしはもうこの土地に住んでいないし、貴族として招待されてしまって、ディルミックが受けた以上わたしが断るわけにも行かないし、いまさらどうしようもない話である。


 ただ、ちょっとだけ考え方が変わったなあ、とは思う。以前のわたしだったら、一円――はこの世界になけれど、十円相当の木貨一枚ですら、貯めておきたかっただろう。まあ、今でも木貨一枚で大喜び出来る自信あるけど。


 そんな今のわたしが出来ることと言えば、パーティーに着ていくドレスを選ぶことだけである。ちなみに、ドレス自体はメルセンペール領主の娘さんのを貸してくれるらしい。体格が近いらしいし、急なことだし。


 メルセンペール家のメイドさんと、次女のトリニカ嬢がわたしのドレスを選んでくれている。お嬢様の手を煩わせるなんて……とちょっと思ったのだが、トリニカ嬢はトリニカ嬢で、楽しそうだ。


「こちらなんかも、カノルーヴァ夫人に似合うんじゃなくて?」


 グラベインの流行とはちょっと違うドレスをあれこれ見せてくれる。まあ、勿論違いなんて、わたしにはあんまり分からないのだが。

 結局、選び抜くのが面倒になったわたしは、いつもの通り紫色を……ということにはならなかったものの(そもそもトリニカ嬢は寒色より暖色のほうが好きなようで、ドレスもみんな暖色ばかりだ)、淡い金色のような黄色のような、そんなものを選んだ。

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