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転生守銭奴女と卑屈貴族男の新婚旅行事情 05

 特に目的地もなく、ディルミックの質問に答えながらあたりを散歩していると、大きな広場にたどり着いた。歩くだけでも、ディルミックが相手だからか楽しかったけれど、やっぱり歩くのはそれなりに疲れる。

 ちょっと休憩していきたいなーとディルミックに話しかけようとすると、彼が不思議そうにきょろきょろと辺りを見回しているのが目に入る。まあ、今日のディルミックはずっとこんな感じだけど。また何か、珍しものがあったのかな。


「今日は祭りか何かあるのか?」


「お祭り、ですか? 特には……ああ、なるほど」


 大きな広場にはたくさんの屋台が並んでいる。そう言えば、グラベインでは街に出ることが多くなかったけれど、このような屋台街は見かけたことが一度もなかった。

 マルルセーヌだとよく見かける光景だが、ディルミックのこの反応だと、グラベインではお祭りのときくらいしか見ないんだろう。

 カノルヴァーレはちらほらと屋台があったけれど、ここまでずらりとは並んでいなかった。

 わたしの田舎でもあるくらいにはよく馴染んだ文化である。わたしの田舎ではここまで数が一杯あったわけじゃないけど。


「あれは共同店舗って奴ですね。朝は青果店など農産物を売る店やちょっとした食品加工品売りが屋台を使って、昼時になるとテイクアウト系の軽食が売られるようになって、夕方以降はお酒やアクセサリーの販売とかされますよ。複数の店舗が共同で一つの屋台を使って商売をするんです」


 メリットとしては、実際に店舗を構えるよりも安く商売が始められることで、デメリットは毎日ちゃんと店が開けるわけじゃない、ということろだろうか。

 駆け出しの新人が試しに店を構えてみる、という場合や、引退後の老人がのんびりと趣味半分で商売をする場合に向いているようで、店員の年齢層は極端に分かれている。

 この屋台は使用申請が必須なのだが、翌日の申し込みは屋台が撤去される夜にしか申請ができない。


 先着枠と抽選枠があるが、抽選枠は前日に店を開けなかった人の方が優先される。まあ、多少お金を積めば融通してくれる、という噂があるが、そうやって毎日お金を出して店の場所取りをするくらいなら、ちゃんと店舗を構えた方がいいはずなので、その噂の真偽は確かではない。

 余談だが、屋台の設営・撤去には専用の業者というか、働き手がいる。子供の頃に設営の様子を見学したことがあったが、まあ組み立てるのが早いこと。出来高制で、わたしの田舎ではちょっとした副業くらいの立ち位置な職業だったが、手慣れている人がやると職人技! と言いたくなるくらい本当にあっという間なのだ。


 今は丁度ほとんどがテイクアウト系のお店がずらりと並んでいる。おやつどきなので、昼食で人気の店はちらほらと片付けに入っているようではあるが。


「少し覗いて、何か……」


 何か買って食べてみます? と言うつもりだったのだが、途中で迷ってしまった。別にこんな街中でディルミックに毒を盛るような人はいないだろうが、万が一何か混入している、ということもあるだろうし、毒見がいるだろう。


 普段のディルミックが毒見をしないのは、わたしが淹れるお茶くらいである。多少例外はあるものの、基本的にはどんなささやかなものでも毒見をしているので、多分、今回も買って食べるのならするのだろう。


 でも今は毒見係いないし、無理かなあ、と思っていると、護衛の一人が声をかけてくれた。護衛の一人、というかハンベルさんだった。


「自分は市中の視察の護衛にも普段から同行させていただいているので、よろしければ自分が毒見を」


 護衛が毒見しちゃって大丈夫なのか? と思ったが、お忍びで市中視察に行く際は、毎回彼を護衛に選び、その際に何か食べることがあれば毒見をしてもらっているらしい。耐性もちゃんとあるし、ある程度の解毒薬は常備しているのだとか。


 それなら、とわたしはハンベルさんの申し出に甘えることにして、ディルミックを連れて屋台街へと足を運んだ。

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