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転生守銭奴女と卑屈貴族男の飲酒事情 01

結婚式後の妊娠期間じゃないどこか。

 ――始まりは、些細な好奇心だった。


 僕は社交界に出ることが多くない上に、そもそもグラベインの社交界で、女性に酒は振る舞われない。だから、彼女が自ら望まなければ、酒を飲む機会なんて、グラベインにいる間はないだろう。

 それでも、普段、茶ばかり飲んでいる彼女が、酔ったらどうなるのか、そもそも酒に酔うことはあるのか、と、ほんの少し、気になってしまったのだ。


 それが――こんなことになるなんて。


「あははは、ディルミック、いい匂いするぅー!」


 べろべろに酔った彼女が、ベッドに寝ころび、そのまま、ベッドの上に座っている僕の腰に抱き着いてくる。その……、この体制はなんとも、あの……危険だ。

 飲んだ量を見るに、彼女自身、そこまで酒に弱いようではなかった。流石に体格差があるからか、僕よりは飲む量が少なかったものの、そこそこ飲んでいた。


 「このお酒、美味しいですね」とにこにこしながら飲んでいたものだから、飲める方なのか、と思いながら飲み進めていたのだが――まるで人が変わってしまったかのように、突然、彼女は泥酔した。つい、ほんの数秒前までは、ほろ酔い、といった感じだったのに。


 こんなに急に態度が変わるのなら、二人きりの寝室で、寝酒として勧めて正解だったな。

 ――……本当に正解か? 他人に、この状態の彼女を見られるよりはいい、と思うしかないのか?


「何か香水使ってるんですかぁ? お貴族様だと、たっかいヤツ使ってるのかなあ」


 呂律は比較的しっかりしているけれど、妙に間延びした声音と、砕けた口調が入り交じる。元より彼女は僕に丁寧と砕けた物言いの中間のような話し方をする人だったが、今はどうだろう。酔っているからか、砕けた言葉遣いに比重が傾いている。


「今はつけていないが……昼間はつけているから、残っているかもしれないな」


 顔を赤くして、こちらを見上げる彼女をなるべく見ないようにして僕は答える。位置が……位置が悪いのだ。彼女のいる位置が。


「へー、残り香かなあ。ふふ、わたし、この匂い、好きです」


 好き、の言葉に思わず彼女を見れば、へにゃ、とした顔で笑っていた。

 ――…………、……酔っ払い相手に、手は出したくないんだが……。

 もはや熱を持ってしまったのは仕方ないとして、なんとか理性を総動員させて、手を出さないように耐える。


 大丈夫だ、僕は我慢できる。

 今まで何を言われたって、全て投げ出さずに頑張ってこれたのだ。今更、一晩くらい――。


「ね、ね、知ってますか、ディルミック。いい匂いがする相手って、遺伝子的にも相性がいいらしいんですよ。他国の貴族と平民が結婚して、相性いいって、運命みたいですよね、えへへ」


 ――一晩、くらい、我慢、する、から……。

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