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転生守銭奴女のメイドと卑屈貴族の護衛の恋愛事情 14

 ハンベルとちゃんと話をしよう、と思いながらも声をかけられないまま、結構な日にちが経ってしまった。


 別に、わたくしが意気地がなく声をかけられなかった、というわけではない。単純に、仕事が忙しくなってしまったのである。

 奥様への教育係として、旦那様の叔母にあたる、フィオレンテ様がこちらに来るようになったのである。


 本来ならば、客人をもてなす準備は本館の人間の仕事なのだが、奥様の教育係、ということもあって、フィオレンテ様は別館の方に来る。よって、わたくしがフィオレンテ様をもてなす準備をしないといけないのだ。


 一応、モナが手伝ってくれることになっているはずなのに、彼女は来たり来なかったり、とあまり労働力としては期待ができない。本来は本館の使用人なので、「本館のほうで仕事がある」と言われてしまえばそれまでなのだ。まあ、彼女のことだから、十中八九、嘘だろうけれど。


 なんでも、旦那様が出席するパーティーに奥様が付きそう、という話らしく、そのパーティーに出席するまではかなりスケジュールを詰めている。同時に、わたくしに余裕もなくなってしまったのだ。


 もとより、住み込みの使用人なので、休みの日なんてそうそうないのだが。貴族の使用人なんて、月に一度休日があればいい方である。その代わりに、わたくしの年齢にしては不相応なほどの給金をもらっているのだが。

 それもあって、時間的余裕はなく、わたくしはハンベルの元へ行くことができなくなっていた。


 とはいえ、わたくしもそのパーティーに付きそうことになるだろうし、ハンベルは言わずもがな。パーティーに、と言ってもわたくしの方はホテルで身の回りの世話をするだけだろうが。

 だから、次に会えるのは早くても、旦那様たちが行くパーティーの日。


 パーティーに付き添って王都へ行くのなら、一日中仕事みたいなものだが、まあ、話があると一言声をかけるくらいなら……許容範囲以内か。

 ハンベルは護衛として旦那様についていくから、わたくしよりもっと自由時間はないと思うが、流石に一日中、朝も夜も、というわけではないはず。

 一日くらいならまだしも、三日も王都に滞在するのだ。護衛のメインがハンベルにしたって、交代制に決まっている。


「……」


 この仕事を始めると決まってから、公私混同はしないと誓ってきた。

 旦那様がどんな顔であろうとも、モナのように仕事を放棄はしないし、ハンベルに親しく接することもしない。……多分、旦那様には、わたくしが美醜観に厳しく、旦那様を嫌っていることが、なんとなく、伝わってしまっている気がするが。


 でも、クビになってしまったら、今度こそ、この辺りで働くのが難しくなってしまう。

 ここをクビになれば、遠い地で職を探さないといけなくなる。そんなことになったら、ハンベルが知らないうちに結婚している、という未来も想像がつく。


 だからこそ、公私混同をしないと、決めたのだ。

 でも、自分の意思でそれを破る、と思うと、ちょっとだけ――いや、かなり、ドキドキする。

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