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転生守銭奴女のメイドと卑屈貴族の護衛の恋愛事情 03

 ロディナ、という名前の新しい奥様の第一印象は、普通の女、というものだった。ただ、それは見た目だけの話。よく見かける、どこにでもいそうな平民だと思ったのに、性格や思考回路が、グラベインでは見ないような人間のそれだった。


 奥様、と呼んだら、戸惑っていたので、嫌味が過ぎたか、と呼び方を変えるか提案したのだが、好きに呼んでいい、と言われてしまった。シロエ様のように、名前で呼んで、とは言われない。旦那様の妻であると証明される呼び名が、嫌ではないのだろうか。

 まあ、訂正されたらいつでもロディナ様とお呼びしよう、と思ったのに、彼女は本当に呼び方を気にしていなかった。奥様と呼ばれようと、ロディナ様と呼ばれようと、彼女からしたら大差がないのか。


 奥様が旦那様のことを、いい意味でも悪い意味でもなんとも思っていないことが決定的になったのは、シロエ様がとりつけてそのままになっていた、寝室へ繋がる鍵を、どうしてついているのか、心底不思議そうな表情をしているのを見たときだった。


 旦那様のことだから、鍵をつけていれば拒絶されたと判断して、無理強いはしてこないからと、簡易的な鍵でいいのでは、と提案したのにもかかわらず、シロエ様が「しっかりしたものを」とごねるので、それなりに立派なものになった鍵。

 グラベインの人間だったら、一見して、なんのために取り付けられた鍵なのか、すぐに分かるだろう。それなのに、「必要なくない?」と言ってしまう彼女が、異常な人間に、見えた。


 必要ない? そんなわけない。


 だって、その鍵がなければ、夜の営みを拒否することができない。子供を産むために彼女がここにいることは分かっている。

 でも、少しでも引き延ばそう、と考えることはないのだろうか。旦那様の最初の奥様、ペティ様のように、子供でもあるまいに。彼女の年齢であれば、シロエ様のように、言い訳して、夜の務めを先延ばしにして、逃げきれなくなったところで事故を装ってこの屋敷を去る、という計画くらい考えられるはずだ。


 そう、思うのに。

 不思議そうな顔をして、首をかしげている様子を見れば、本当にそんなこと、思いつきもしない、と言っているようなものだった。


 ――外の人って、皆、こんなものなの?


 異国人の母も、お世辞でも格好いいと言えない父親にベタ惚れだった。「顔は悪くても、そんなの気にならないくらい、いい人なのよ」と、ことあるごとに、笑っていた。


 意味わかんない。


 そう思っても、立場上、堂々とそんなこと、言えるわけがない。

 わたくしは奥様に、必要ないなら外す、と言うことしかできなかった。

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