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転生守銭奴女のメイドと卑屈貴族の護衛の恋愛事情 02

 ハンベルとは長い付き合いで、いわゆる幼馴染という関係。白い肌だから、周りから浮いてなかなか仕事が長続きしなかったわたくしに、ここの仕事を紹介してくれたのも、彼だ。

 それでも、職務中は公私混同をしない――どころか、彼と会話をすることすら少ないので、わたくしたちが子供の頃からの付き合いであることを知っている人は、きっとほとんどいない。ハンベルがここの仕事を紹介してくれただけあって、旦那様は知っていると思うけど。


「旦那様から伝言。ミルリが新しい奥様付きのメイドになるってさ」


「……そうですか」


 「お前の方が奥様に歳が近いからって」とハンベルは言う。

 旦那様が求めていたのは、逃げ出さずに子供を産んでくれる女性。子供が成人して再雇用された夜勤のメイドよりは、確かにわたくしの方が年齢も近くなるか。


「来るのは来週。それまでに、奥様用に部屋を掃除しておけって」


「分かりました」


 本来なら、こんな伝言、執事であるセヴァルディさんの仕事だろうに、ハンベルは嫌そうな素振りも見せず、旦那様のことづけをわたくしに伝える。使用人の人数が最小限であるこの別館では、本来は他の人の仕事でも、やらなくてはならないことはままあることだ。


「……新しく奥様になる方は、どのような方ですか?」


 確か、ハンベルと、彼の先輩との二人で、旦那様と結婚してくれる新たな女性を探していたはずだ。彼ならば、奥様になる人がどんな人か知っているだろう。

 わたくしが会話を広げると思っていなかったのか、ハンベルは少し驚いたような表情を見せるが、それも一瞬のこと。すぐにいつもの顔に戻る。


「なんていうか……金が第一、みたいな人だったよ。でも、シロエ様のような、嫌味っぽい女性ではなかった」


 シロエ様。旦那様の、二度目の奥様。気が付けばいつも渡り廊下の本館側にいて、仕事をサボっている本館の使用人と旦那様の悪口を言っていた人。旦那様の顔は『アレ』だという噂なので、まあ、悪口くらいは仕方ないのかな、と思うけれど、それはそれとして、使用人までも見下した態度を取る人だったから、あまり好きではなかった。


「今回は長くいてくれるといいな」


 ハンベルは、旦那様に恩があるのか、時折、旦那様に同情するようなことを言う。それとも、顔の造形が悪いもの同士、何か感じることがあるのだろうか。

 どうせ今回も、早いうちにいなくなると思うけれど――ハンベルの、長くいてほしい、という言葉は彼の本心のようだったので、わざわざ否定する言葉を口にするのは、流石のわたくしでもはばかられた。

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