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転生守銭奴女と卑屈貴族男の美醜(女)事情 02

 でも、まあ、確かに言われてみれば、魔王サイドの話って、それこそ魔王の話しか聞かないんだよね。英雄側も、基本的には英雄の逸話ばかりだけど、ちゃんと仲間たちも出てくるのに、魔王にはそれがない。


 かつても魔王は、一人だったんだろうか。一人さみしく生きていたからこそ、世界征服なんて考えたのか、それとも世界征服なんて考える人間だったから一人だったのか。


 そんなこと、今のわたしが考えたって分かるわけもないが。

 もしかしたら、実際の魔王は本当に一人ではなくて、ただ単に、彼に仲間がいたという文献が残っていないだけかもしれないし。想像もつかないくらい昔の話だ。記録が多く残っているほうが珍しいくらい。


「……ディルミックから見て、わたしはどう見えます?」


「――……は?」


 質問の意図が分からないのか、ディルミックは怪訝そうな表情を見せた。

 髪は元からそこまで痛んでいるわけでもないし、こっちに来て毎日お風呂に入って丁寧にケアできるようになってから結構さらさらになったとは思う。でも、胸はそこまで大きくないわりには平らでもないし、顔は歳相応の顔。女の『美しい』に入っているのか、と言われると、そうでもないように思う。


 鏡を見て、自分が不細工だなあ、と思うことはない。でも、わたしの男の美醜観はこの世界とは正反対だから、女の美醜観もどこかずれているのかも、と、自分の顔に自信を持ったことがない。


「ディルミック的に、わたしの顔って美人の部類ですか? それともたいしたことない部類ですか?」


 この言い方だと分かりやすかったんだろう。処理落ちしたようにディルミックが固まる。……いや、この場合は言葉を探しているのかな?

 しばらく考え込むこように黙ったディルミックだったが、小さな声で「……まあ、悪くはないんじゃないか」と言った。呟きのような声ではあったが、彼の表情を見れば、嘘やお世辞ではないように思う。

 ふふ、と思わず笑ってしまった。


「気に入っていただければ幸いです」


 わたしが美人かどうか、気になるところではあるけれど、まあ、既婚者になったのだから、夫であるディルミックに文句なければ十分だろう。

 女性の『醜い』が曖昧で、自分が美人かそうでないかが分からないということは、裏を返せば鏡を見て自分ってブスだなあ、と落ち込む必要もないのである。


「それじゃあ、おやすみなさい。ディルミック」


 わたしは彼に就寝の挨拶をしながら、純銀貨五枚の価値は果たせているな、と考えながら眠るのだった。

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