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転生守銭奴女と卑屈貴族男の新婚旅行事情 18

「じーちゃんいるー? っとと……」


 とある茶器販売店にわたしは声をかけながら入店する。外からは誰もいないように見えたので、てっきりお客さんがいないものだと思って声をかけながら入ってしまったものの、目当てであるじいちゃんは接客をしていた。

 ぎろっと睨まれてしっしと追い払うように手を振られた。接客の邪魔だと言いたいんだろう。


「ごめんって」


 軽く謝って接客が終わるまで店の外で待っていようかな、と思ったが、ここは田舎。全員が顔見知りなわけで、客もわたしの顔を知っている。

 じいちゃんはあんまり馴れ馴れしい接客が好きじゃない、というか、公私混同はあんまりしたくないみたいで、わたしがお客さんに対して気軽だったり、お客さんがおざなりになるような状況を嫌う。


 でも、狭い田舎で客商売をしていると、客の方がわたしを可愛がってくれるもので。


「おっ、ロディナちゃん、大きくなったなあ! 今いくつだ?」


 年齢を言えば、「はー、もうそんな歳か! 俺も爺になるわけだ!」と豪快に笑われる。……じいちゃんからの視線が痛い。


「あれ、でもロディナちゃん、お隣に嫁に行かなかったっけ? 何、出戻り?」


「縁起でもないこと言わないでくださいよ。普通に新婚旅行で寄ったんです。……ま、まあちょっと遅いですけど」


 新婚旅行のつもりではあるが、つい先日一年目の結婚記念日を迎えたので、一般的な新婚旅行よりはちょっと遅い。でも結婚した当初はいろいろあったし……。


 どのみち、ディルミックは貴族なので、仮に出会ったその日に互いに恋に落ちていたところですぐに新婚旅行へ行こう! となれるわけもなく。結局、今くらいの時期になったんじゃないだろうか。


「こんな田舎に見るところないだろ」


 がはは、と笑いながらお客であるおっちゃんは笑う。


「観光は王都と領都で済ませてきたから。……ここには夫婦茶器買いに来たんです。折角なら、じいちゃんのところで買いたいな、と」


 ディルミックがわたしの育ての親に挨拶したい、と言ったのもここへ来た理由の一つではあるけれど、大きな理由はそれだ。

 貴族との契約結婚で、ましてやマルルセーヌの人間じゃないから必要ないだろうな、と思って買っていかなかったのだ。今、ディルミックの屋敷のわたしの部屋には、わたしが愛用している茶器しかない。


「夫婦茶器! いいねえ! こうしちゃいられない、ほら、俺なんかよりロディナちゃんの茶器を見繕ってやんなよ」


 じいちゃんは非常に渋い顔のまま、わたしに予算を聞いてきた。……本当はわたしより先に接客していた人の方を優先したいだろうに、当のお客さんからそう言われたらなかなか断れないようだった。

 とはいえ、長く邪魔するつもりもなくて。予算はもう、決まっているから。


「――純銀貨五枚が予算だよ」


 まあ、この金額を提示したところで、じいちゃんがこんな高い茶器を扱っているとも思わないけど、でも、このお金を使うのだと、わたしは決めてきたのだ。

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