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転生守銭奴女と卑屈貴族男の記念茶事情 02

 お義母様は、いつも手紙と共に花を贈ってくれた。義叔母様は手紙をくれるときには手紙しかくれないので、グラベイン貴族の慣習というよりは、お義母様個人の習慣なのだろう。

 花は違うものだったり、連続して同じものが送られてきたり、種類は様々だったが、一貫して、花言葉に気を使っているように思えた。……というか、最初の手紙と一緒にやってきた花と、花好きというお義母様の性格を考えると、確実に花言葉を意識しているだろう。


 おかげでわたしも花言葉に詳しくなってしまった。全ての花の花言葉が分かる、というわけではないけど、わたしのグラベイン文字上達の一環になったのは確かなので、花言葉によく使われる単語は、比較的早く覚えたと思う。同じ花が三回連続で送られてきたときは、色違いも含めて全部覚えてしまったくらいには。

 今回、お義母様が送ってくれた花の花言葉は……片方だけ分かる。


「こっちの花は、『祝福』という花言葉だそうですよ」


 わたしは片方の花を指さして、ディルミックに教える。花束に組み込まれる花としてはスタンダードなもので、育てやすさから、よく栽培され、売られている花らしい。義叔母様に花言葉の単語の勉強に付き合ってもらっていたときに、「この花はお姉さまもわたくしも、昔、生家にいた頃育てていたのよ」と教えてもらった。貴族夫人、いや、貴族令嬢が育てるくらいなのだから、よっぽど手入れが楽なのだろう。庭園や温室に植えて育てるのが当たり前の花であれば、流石にそれの管理をするのは使用人の仕事だと思うから。


「もしかしたら、わたしたちの結婚記念日だから、これをくれたのかもしれませんね」


「そう……だろうか」


 『祝福』という意味の花言葉を聞いても、少しだけ、ディルミックの表情は浮かない。子供たちに危害が加えられたかも、という心配――ではなく、ただ、母親から祝いの品を貰ったという現実を受け止められていないだけのような気がした。花自体は喜んでいたから、頭から信用していないわけではないのだろうけど。


 最近渡される手紙は随分と軟化していて、もう少しで和解できるかなあ、なんて感じていたわたしと違って、ディルミックはずっと昔でお義母様との関係が止まっているから、余計に信じられないのかも。手紙の内容はざっくりと伝えていたけれど、流石に全文そのままを教えたり、ましてや見せるようなことはしていない。内容が内容だから、多少はディルミックに伝えてもいいかな、と思ってはいるけれど、彼女が手紙を送った相手はわたしなのだから、許可なしにそんなことはできない。


 それじゃあ、もう一つの花の方だけど……この花、見たことないかも。ってことは、わたしがお義母様から借りっぱなしの花図鑑にはのってないのかな?

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