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転生守銭奴女と卑屈貴族男の花束事情 05.5

 五人。あの子に子供ができたことは知っていたが、そんなにいるとは流石に予想もしていなかった。新しい子が、という手紙は来ていたけれど、それはまだ文章が拙いときにもらった手紙だったから、てっきり、子供が新しいことをできるようになった、という文の書き間違いだと思っていた。しっかり書けるようになってからもらった手紙は、おそらくはあの小さな女の子のときのもの。二人は見ていたし、多くても三人程度かしら、と思っていたというのに。

 もしかしたら、もう一人か二人、いたりするのかしら。いえ、流石にそれはないわよね……。


 だって、五人。健康に子供を産めるとしても――貴族夫婦にしては、やや、多い。男が生まれなくて、何回も産まざるを得なかった、というわけではないだろう。子供たちの年齢と順番は分からなかったけれど、男児が一番上なのは確かだろう。長子が男だなんて、理想的ではあるけれど、だからこそ、あんなにも数を産む必要はない。

 最低限、というわけでは、絶対にない。子だくさん、と言ってもいいだろう。

 わたくしだって、そんなに――……。


「――……」


 我が子がいつの間にか五人の子持ちになっていたという衝撃に耐えられず、あの場から逃げ出して、ふらふらと歩いて。

 気が付けば、わたくしは、温室の隅にまで来てしまっていた。

 無意識でありながらも、わたくしは、わたくしにとってこの屋敷の敷地内で一番大切な場所に来ていたようだ。


 温室に来ると必ず足を運ぶ場所。ひっそりと奥まっているところにあって、この場所の存在を知らないとたどり着けないような花壇。今でも綺麗に整備されているが、花が入れ替わることはない。

 わたくしが、元々いた領地に住んでいたころ部屋に置いていた花と、旦那様からもらった鉢植えの花、二種類の白い花が植わっている。流石にあの当時のものではないが、種を残せばまたそれを植える、ということを繰り返してきた。

 流石にわたくしが直接育てているわけではないけれど、でも、わたくしにとってこの花はとても大切なものだ。

 わたくしがここに嫁ぎ、受け入れてもらえた証。


「――……結婚記念日、と言っていたかしら」


 わたくしは、両親の結婚記念日を祝ったことがない。というより、貴族であれば、皆似たようなものだろう。

 とはいえ、この花は、人に贈るのにおかしくない花だ。一つはわたくしが旦那様にもらったものなのだし、当然と言えば当然ではあるけれど。


 わたくしは少し迷った末に、花を数本、手折る。

 今日、ロディナさんに――ロディナさんたちに贈る花は、これがふさわしいような気がして。

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