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転生守銭奴女と卑屈貴族男の花束事情 02

 集合場所に向かっている途中、ジェリクとジェリーナにばったり会った。二人とも、手には紫や、白、水色の花がある。想像通り、紫色の花がメインの花束になりそうだ。


「ねーさま!」


「エリィ!」


 ジェリーナを見つけるやいなや、エリリアは駆けよって、彼女に抱き着く。ジェリーナは素早くジェリクに、持っていた花束を押し付けるとエリリアを抱きとめた。家族愛が強いジェリーナは、初めての女兄弟ということもあり、ことさらエリリアを可愛がっていた。

 そんなエリリアもジェリーナにはよくなついていて、見かけるたびに声をかけては抱き着いて行っている。


 花を押し付けられたジェリクは、慌てて花を持ち直している。家族愛の強いジェリーナではあるが、こういうところ、少しジェリクの扱いが雑というか。双子ならではの距離感というのだろうか。

 花を一本も落とさずに済んだことに安堵したのだろうジェリクは、ほっと息を吐くとこちらに近寄ってきた。


「兄さんたちも戻ってきたんだな」


「ああ。まだ花を選ぶにしろ、一度花を置いた方がいいと思ってな」


 もしかしたら、兄上もそろそろ集合場所に行っているかもしれない。バラバラに、手分けをして花を選んでいたが、こうしてタイミングが被るとは。ジェリクとジェリーナは一緒に行動していたはずだが、俺とジェリクたちが同じくらいの時間で集合場所に戻ろうとしていたのなら、兄上も集合場所に向かっていてもおかしくはない。


 ふと、俺の手の中にある花を見て、「ふっ」とジェリクがこらえきれずに、と言わんばかりに噴き出していた。

 ジェリクが見て分かって、すぐに笑うとは……やはり、普通の花ではなかったか。


「エリリアがどうしても、と」


「ははっ、親子だな」


 ジェリクの言葉の意味が分からず、俺は思わず首を傾げた。これが花束にふさわしくない花だから笑うのは分かるが、親子、とは……?


「母さんのキッチンに、花が飾ってあるだろ。写真立てに入った押し花」


「ああ……確かにあるな」


 俺は母の私室にある、小さなキッチンを思い浮かべる。確かに、飲み終えた茶葉の缶や食べ終わった冬ジャムのビンを飾っているスペースに、一つだけ写真立てがある。その中に、だいぶ古びた押し花が入っていたはずだ。


「アレ、父さんが母さんに贈った花らしい。でも、あれって、工芸茶に使う花なんだよな」


「……成程」


 ジェリクの言いたいことがようやく分かった。父も過去に、母へと花を贈る際、プレゼントにふさわしい花ではなく、茶にするための花を贈っていた、ということか。

 それは確かに……親子だと、言いたくなるもの分かる気がした。

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