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転生守銭奴女と卑屈貴族男の新婚旅行事情 11

 わたしが男性に返事をする前に、すっとディルミックが一歩前に出て、わたしを庇うようにして立ってくれた。


「――こんばんは、よい夜ですね」


 ディルミックは比較的穏やかな声を出してはいるが、背中から警戒心のような物がにじみ出ているのが分かる。


「メルセンペール家の仮面舞踏会には初めて出席させていただきましたが、とても華やかで驚きました」


 そう言いながら、ディルミックは自身の付けている仮面のふちを軽く撫でた。その様子を見た相手の男性が、少し慌てた様になるのが分かる。

 やっぱりこの仮面、踊れない人間とか、特別なゲストを表す色なんだろうか。


「申し訳ない、その、ダンスのお誘いではないのです。――少しだけ、話をさせていただければ、と」


「話……」


 まあ、舞踏会とは言え、別に皆が皆、全員そろって踊るわけではない。全く踊らないのはわたしたちだけだろうが、休憩に、と立食を楽しむ人もいれば、誰か別の人と雑談をする人だっているだろう。


「――ロディナ、どうする?」


 正直、好き好んで貴族と話したいわけではないが、義叔母様から叩きこまれた教育の成果を出すときかもしれない。こうして社交界に出たとき、いつまでもディルミックにべったり、というわけにもいかないだろう。

 まあ、ディルミックが今後どのくらいの頻度で社交界に出るのかは知らないけど……。


「わたしは大丈夫です。ディルミックも、もし話したい相手が他にいればそちらへ行っても平気ですよ」


 そう言うと、ディルミックは少しだけ迷った様子を見せた。多分、こういったパーティーでわたしを放置したことがないので、心配なんだろう。結婚式の前夜、ほいほいと貴族に言いくるめられて後をついていき、結構な大事にまで発展した前科もある。


「こういった場で言ってしまうのはマナー違反ではありますが、自分は今後メルセンペールに婿入りする人間です。そちらの夫人の事情も、おおよそは聞いていますので」


 仮面舞踏会において、身分を明かすのはやっぱりマナー違反らしい。それがこの国特有なのか、この世界特有なのか、それともどこの世界でも同じなのか、それは分からないけど。

 しかし、そのマナー違反を犯してまでわたしたちのことに気を使ったことに、ディルミックは少しだけ安心したようだ。こんな気遣いが出来る人間が、なにかやらかすこともないと、そう判断したのだろう。


 まだ少し心配そうだったが、結局ディルミックは「それでは、少し席を外させていただきます」と他の貴族へ声をかけに行った。

 わたしはディルミックが他の貴族の会話に混ざれたのを見送り、男性に視線を移す。


「それで、お話とはなんでしょう?」


 緊張しながらも、義叔母様にあれこれ教わったことを思い出しながら、男性に向き直る。


 彼は「不躾な質問で大変申し訳ない――貴女は、夫の何処を好きになったのですか」と言った。

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