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転生守銭奴女と卑屈貴族男の二年目結婚記念日事情 02

 正直に言おう。

 すっっっかり忘れていた。

 一年目は結婚式まわりでばたばたしていたから何もできなかったとはいえ、丁度一年だなあ、なんて思っていたはずなのに。


 お義母様のことがあった――っていうのは理由にならない気がする。

 だってディルミックはちゃんと覚えて、宝石を用意してくれていたんだから。


「本当は、いつも通り茶葉も贈ろうと思ったんだが、妊婦に茶はあまりよくないと聞いているし、調べても結婚記念日に贈る茶葉、というものが見当たらなくてな」


 わたしが内心で冷や汗をだらだらかいているのに気が付かないのか、ディルミックはわたしの動揺をよそに話を続ける。


「まあ、マルルセーヌの結婚記念日って、四年目くらいからが本番なので……」


 わたしは言い訳がましく聞こえるかもしれないと思いつつ、「忘れていました」と素直に白状した。こうして祝われてから、そういえば、結婚記念日って毎年祝うもので、本来ならば、年数を重ねたほうのがおざなりになっていって、最初の若い年数の方が派手にやるものだよな、とようやく思い出したのだ。

 マルルセーヌの文化にどっぷり染まってしまった。


 まあ、それなりの年数、マルルセーヌで生きてきたのだから当たり前と言えば当たり前だが。たとえ生まれたときから明確な自我があって前世の記憶があったとしても、これだけの年数、生活していたら順応するものである。


「――……四年目からが本番、というのはどういうことだ?」


 忘れていた、という言葉よりも、そちらのほうに興味を引かれたらしいディルミックが、わたしの言葉を聞き返す。


「ええと……『セーヌ』っていう低木があるんですけど……」


 説明をしようとして、はたと気が付く。

 今、セーヌの木の説明したら、嫌味っぽくないか……?


 セーヌの木は結婚したときに購入して育てるものだ。

 わたしたちの出会いは完全に利害関係から始まったから、そんなことする余裕も必要もなかったのは理解している。なので、結婚したタイミングでこの木を植えていないことに対しては特別なんとも思っていないのだが、わざわざ結婚記念日にふさわしい茶葉があるかと調べてくれた相手にこの説明をしてしまうのは……調べが足りない、と言っているようなものではないだろうか。


 ディルミックがどこでどう調べたのか知らないけど、もしマルルセーヌ人に相談していたならセーヌの木の話をしてよ! と思いつつも、わたしも相談されたら、『セーヌの木があるのにわざわざ別に贈るの? それなら、まあ……相手が好きな茶葉とか?』って思って、適当なアドバイスするわ! そのいるかも分からないマルルセーヌ人の誰かを責められん。いや、実際はどうなのか分からないけども。

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