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転生守銭奴女と卑屈貴族男の(義)叔母事情 07

 あの子に接する理由。


 それは、ある種の意地だと思っていた。


 あの日、醜い男に石を投げる人たちとは違うと。

 私はお姉さまの子を等しく守るのだと。

 同情や慰めなどではなく、ただの、私のエゴだと。


 ずっと、そう思っていた。


 醜い子。お姉さまの子でなければ、どうだっていい、と。

 でも――案外、それだけではなかったのではないだろうか。


 そうでなければ、こんなこと、絶対にしない。


「……誕生日祝いのメッセージなんて、書くのはいつぶりかしらね」


 簡素なメッセージカード。たった今、私が書いたばかりのもの。私の記憶が正しければ、字を習ったばかりの頃に両親へ、嫁入りの際に一番世話になっていたメイドへ。それから、旦那様と結婚して最初の誕生日に一通。こう考えると、本当に、数えられるくらいしか、書いてこなかった。最も、グラベイン貴族であれば、誰も彼も、私と似たようなものだろう。


 姪たちには、一度も渡していない。

 ディルミックに書かないのに、姪たちだけに贈るというのは、なんだかためらわれて。書いても、結局渡さずに破棄していた。


 それなのに――まさか、お姉さまの子らに、最初に贈るのがディルミックだなんて。最初で最後、とはいえ、何があるか分からないものだ。


 何があるのか分からない……か。

 それを言い出したら、今のディルミックの状況の方が、あのときの私からしたら信じられないものだ。


 ロディナさんは、いかにも平民らしく、マナーも何もあったものじゃないけれど、それでも礼儀を学ぼうという意思はあるようだし、何より――あの子は、絶対的な、ディルミックの味方だ。男女としての情があろうがなかろうが、きっとディルミックのそばに居続けるのだろう。


 それは、ディルミックが何よりも得難かったもの。

 私では、なりえなかったもの。


 あの子の最後の手段としてしか接してこなかった私は、敵ではなくとも、味方とは、中々言えないだろう。多少は頼られている自覚はあるけれど、それはあの子の周りに手を差し伸べる人間が誰もいないからでしかない。甘えられる、弱音を受け止めてくれる相手には、到底遠い。


 それが、私の限界だったから。

 それでも、このまま、二人とも、寄り添い、末永く共に幸せになって欲しいと、そう思うのは――まぎれもない、本心だ。


 そのことを、伝えるつもりは一生ない。

 それでも、少なくとも一人は、あの子が幸せになってよかったと、喜んでいる人間がいたことの証明として。


 私は、このメッセージカードを、あの子に贈ろうと思う。

本編コミックス(コミックス版タイトル:お金が大好きな平民の私は卑屈貴族と契約結婚して愛し愛されます)二巻本日発売です!

是非よろしくおねがいします。

そして、更新頻度が元に戻ります。

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