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転生守銭奴女と卑屈貴族男の(義)叔母事情 02

 それこそ、最初は待望の男児というものもあり、それはもう、ディルミックはもてはやされていた。今では考えられないほど。

 余裕そうに笑っていたお姉さまも、なんだかんだ言って心配だったのか、囲まれるあの子を見て、ほっとした表情を浮かべていたのを、私は覚えている。


 しかし――だんだんと、ディルミックから、人は離れていった。幼児特有の幼さとあどけなさが抜け、顔立ちがはっきりとしてきたから。


 醜い子、と言われるようになり、人が離れていくのを見て、それでもお姉さまは、ディルミックのそばにいた。

 でも、それは、我が子を愛しての行動ではない。ただ、まだ子供だから、もしかしたらこれから顔がマシになるかもしれないから、そんな幻想を抱いたのだろう。


 それでも――ディルミックは、お姉さまの望むようには育たない。


 ディルミックに見切りをつけたお姉さまは、新しい子を、と子をもうけたが、結局は女児。ディルミックの件でストレスが重なったのが原因か、それとも単純に運が悪かったのか、そのどちらかは分からないけれど、お姉さまは産後に立ち直ることができず、魔法を使っても、子供が産める体に戻ることはなかった。


 ディルミックを跡取りにするのは難しいのに、もう子供を望めない。

 それが、決定打だった。


 お姉さまの義両親は、それはもうお姉さまを責め立てた。ある意味で当然だ。ディルミックがカノルーヴァ家の当主ともなれば、嫁をもらえず、血が途絶えるのは確実。


 お姉さまの義母は、お姉さまと義兄を別れさせて新しい嫁を取りたがり、お姉さまの義父は養子をとって育てるべきだと言い、相当な言い合いになったと聞いている。その仲たがいでのストレスが、全てお姉さまにぶつけられる。


 義兄は、明確な解決策を見つけられず、どっちつかずな態度。お姉さまを見捨てなかったことは感謝しているけれど、頼りない、と言わざるを得ないのは事実。支えにも敵にもならなかったけれど――お姉さまを助けられなかったのだから、どうしようもない。お姉さまに味方をつくれないまま、事故で命を落としてしまったのだから、男としては甲斐性なし、という判断をせざるを得ない。


 もしも、あの屋敷に、一人でもお姉さまの味方がいたら。親族の中の誰か、なんて贅沢は言わない。使用人でだってよかった。

 私以外に、私よりも物理的にもっと近いところにいる誰かがそばに寄り添ってくれていたのなら。


 きっと、あそこまで追いつめられることはなかったのだから。

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