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転生守銭奴女と卑屈貴族男のお忍び旅行事情 13

 そう思うなら、別に我慢しなくて良かったのに。産後とかは話が別だが、それでも、治療魔法だけはあるこの世界、前世よりも産後の立ち直りが早い。


 だから――と、そこまで考えて、わたしはようやく気が付く。

 ディルミックにとっては、性行為とは、子を成すためのもので、それ以外の意味を持たないのだと。


 いや――正確には、少し違うかも。

 根底には、そういう考えがあったとしても、わたしが、愛情表現の一環として、彼と体を重ねてきていたから、彼の中でも、理解に及ばない感情が芽生えたのかもしれない。


 それで、愛情表現としての性行為と、子を成すための行為という認識とが、ごちゃ混ぜになって、ここまで我慢することになったのか。

 感情では触れたくとも、頭の中では、もう子供は十分なのだから、と。


 だからこそ、あのようなうかがいの言葉になったのだろう。


「な、なるほど……」


 衝撃の、しかし、妙にしっくりくる気づきに、わたしは思わず声を漏らしていた。


 世間一般で言えば、性行為には、本来の意味以外の役割を持つものだと思う。愛情表現なり、それでお金を稼ぐこともあるだろう。わたしがかつて住んでいた田舎では、娯楽な部分もあったと思う。田舎だから、茶を飲むか、ちょっとした賭博くらいしか刺激がないからね。


 でも、ディルミックにとってはそういうものではなかったのだろう。

 だから、愛情表現の延長線に妊娠がある、と認識しているわたしと、すれ違いがあったわけで……。


「……知っていますか、ディルミック。こういうことって、別に子供を作るためにしなくてもいいものなんですよ」


 「なんなら、避妊具というものもあります」と、こっそり教えると、だいぶカルチャーショックを受けた顔をしていた。やっぱり、わたしたちの考えには、大きな食い違いがあったようだ。


 それはまるで、彼にそのことを教えてくれる人が、誰もいなかったことを表しているかのようで。

 ……でも、それは今までの話。わたしが、その誰かになればいいのだ。


 最初の頃は、確かに義務的な行動をとっていたが、だんだんと優しく、甘くなっていったのだ。すでに、感覚では理解できているに違いない。


 わたしはディルミックの手を取り、引っ張る。


「ほら、行きましょう。……す、するんですよね」


 随分と久々だからか、情けないくらいにわたしの声が上ずった。

 まあ、でも、わたしの言葉に返事をしたディルミックの声も、びっくりするくらい震えていたから、おあいこかもしれない。

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