幼馴染と久々に星を見に行く
「さっきはごめん」
僕は前の幼馴染に、そう言った。
「さっき?」
「いや、さっきではないけど、もうちょい前だけど」
僕にとっては時間が経ってない気がするのだから、仕方がないだろう。
お昼ごろ、星を見たいと言った。幼馴染が。
今日は、2020年12月21日。
日本において、木星と土星がすごく近く見える日らしい。
そのニュースを見た幼馴染がふと言い出したのだ。
星を見てみたいと。
僕は星なんて全く興味のない幼馴染がそんなことを言うから、びっくりしてしまった。
だからまあ冗談だと思って流して話題を変えたら。
「ほんとに見たいのっ」
そうか。
見たいのか。
ただ、見たいなら……。
僕は幼馴染に言った。
「外に出ないと、見えないぞ」
「え、そうなの? 窓あるよここに」
「そこからじゃ空の全部は見えないだろ」
「外に出たって建物があるから全部じゃないでしょ」
「うーん。そうだけど」
「ま、出ようかな」
幼馴染がそう言った。
そうか、そうだ。
幼馴染はちゃんと外に出るつもりだったんだな、そう思った。
僕たちは星を眺めながら、川沿いを歩いていた。
「寒い」
「そりゃ冬の夜だからな」
「けど、外も悪くないね」
「うん」
30メートルくらいの間隔である弱い光の街灯が、川面を少しだけ輝かせる。
まだ幼馴染は高校に通うことができていない。
「星はいいよね。突然光が消えたりしないでしょ」
「そうだな」
まあ今見ている光は過去の光だからもう星はないかもしれないけどな。
でも幼馴染のいいたいことはわかる。
だから僕は、何百年かぶりに土星と木星が近くに見えるこの日に、幼馴染の近くで星を見上げることしかできない。
もう一つできることがあるなら、幼馴染と一緒にいるのが楽しいという、僕の気持ちを伝えることだ。
それは、帰ってからにしようと思う。
星と、星を眺めている幼馴染の瞳が、光っていたから。
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