5第一村人との出会うも、それどころじゃなかったけん
木の陰からそっと様子を伺いながら、私は興奮していた。
こう語ると変態のようだが断じて違う。
とうとう第一村人が近づいてきた。
中肉中背のなんだかパッとしない男である。
こちらには気づいていないようなので、
じっくり観察して情報収集である。
あわてず騒がず美しゅう。
まず服装からだ。
縦襟のなにやら制服のような画一的なデザインの上下に、
同系統のデザインの帽子を身に着けている。
何かの団体の構成員だろうか。
目立つ武器を装備している様子は無い。
彼自身の雰囲気は垢ぬけていないが、そこがいい。
危険な香りが全くしない。
実に安全そうである。
最高な第一村人じゃないか。
だがここで、予想外の出来事が起こった。
彼の進路が徐々にこちら側からずれてきたのだ。
このままではさりげなく私が登場する暇もないまま通り過ぎてしまう。
引き止めるべく、興奮も冷めやらぬまま
通り過ぎようとした彼の前に飛び出した。
「おー、よしよし迷子かぁ、怖かったなぁ」
あの頃のお巡りさんと同じ言葉に一瞬呆けた。
まさか同一人物じゃないよな?とありもしない疑いで
彼の顔を覗き見た。
やはりここは異世界のようだ。
もちろん、彼はあのお巡りさんではなかった。
すこしのほほんとした瑠璃色の瞳の青年である。
そう、瑠璃色の瞳。
まず日本人では無いだろう。
にもかかわらず、言葉がわかるのか。
見たことのない色の光彩を眺めながら異世界である事について考えていると、
瑠璃色の瞳に映るあるものに気づいた。
犬である。シェパードのそれに似た犬がワッサワッサと尻尾を振っている。
彼の瞳の中で、その犬が嬉しそうに撫でられている。
私の頭の上には変わらず彼の手の感触がある。
どういう事だ!?
「ウァン!?」
犬の鳴き声のような音が聞こえ、慌てて辺りを見回す。
これまでの情報の帰結に嫌な予感を覚えた。
ワッサワッサと煩い背後を、そっと振り返った。
尻尾である。
紛れもなく犬の尻尾である。
繋がる先を確認する。
、、、、、は?
そこで私の意識は途絶えた。
読んでいただきありがとうございます。