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憲兵の犬  作者: 豆太
2/26

2とにかく町に戻りたい件

どうしてこうなったのか。



始まりは、


町を出たい。朝まで待てない。


そんな我儘商人の我儘である。



朝方の森、草を踏み分けて進む姿があった。


鳶色の癖毛を、既定のデザインであろう帽子に押し込んでいる。


たれ気味の瞳に丸眼鏡。中肉中背。少し猫背。

のほほんとした雰囲気にあまり似合っていないその緑の隊服は、

森のすぐそばにある町、通称”森の隣の町”の憲兵隊のものである。



「こんな時間に森を彷徨う事になるなんて。」


迷子のようだ。


「野犬なんかに襲われたらどうしてくれるんだ。ビッツのやつ。」


青年は、台詞のわりには怯えた様子もなく、進んで行くのだった。





モリスは憤慨していた。

顧客を待たせている。だとか

時間がたてば商機を逃してしまう。だとか

そんなの僕の知ったことじゃない。


門を出るのは22時までって決まってるのに、

なんでそんな我儘を聞かなきゃいけないんだ。

本当に我儘だ。


ご機嫌な隊長に、下っ端である僕とビッツは夜中に呼び出され、

門兵でもないのに門を出る手続きを押し付けられた。


ビッツは多分寝ぼけていたんだろう。

僕がビッツに荷物のチェック完了の声をかけると、

僕が荷台から降りてくるのも待たずに

荷馬車前方の商人の方へ向かい、手続き完了の知らせをしてしまった。


はやく町を出たくてたまらなかった商人は、

手続き完了を合図にぐいと手綱を引き、見事なスタートダッシュをきった。


いやいやいやいや!


停めて!降ろして!


叫ぶより先に、慌てて縁にしがみつく。

急ぐ荷馬車。もちろん揺れまくる荷馬車。


降りようと、中途半端な姿勢で無防備な僕。


落ちる!舌噛む!死んじゃう!


荷馬車からの落下で死亡。

舌を噛んで死亡。


二つの死のイメージが僕を黙らせ、

必死に荷馬車にしがみつく事しかさせなかった。


やっとの事で、顔を上げたときには町の門はすでに遠く。


不思議そうな顔で僕を見つめるビッツが佇んでいた。


読んでいただきありがとうございます。

今回は主人公その2の視点です。

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