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憲兵の犬  作者: 豆太
11/26

11遭遇

「へへっ、やっぱ犬を釣るには肉だよなぁ。」


なんだか変な犬だなと思って気になってた。


毛足が長い茶、濃茶、黒が混じる毛は、艶があり毛並みも悪くない。

全体的にシュッとしてなかなか格好いい。

きっと金持ちの犬に違いない。


金持ちの犬は、プライドが高いのか偏屈な犬が多い。初対面で懐く事はまずない。


だからこの犬の澄ました態度もそんな類のものだと思っていた。


でも何かが違う。

モリスに蹴り転がされた俺を目で追っていた犬と、同じ目線の高さで目が合う。


状況について来れずに少し戸惑ったような目をしていた。


その後も時折犬の方へ注意を向けると、

視線は森の向こうにやっているが、隊長達の会話の合間に

時折ぴくりと耳を動かし首をかしげたりとしていた。


犬の癖に、俺が弾き出された会話に参加している風がなんだかむかつく。


お前は絶対こっち側だろう。と、思ったら即行動な俺はいいものを作る事にした。


隊長のリュックから失敬した物と、拾った枝と蔦を念着粉で引っ付ける。


まぁ、念着粉は隊長もうるさい奴の口封じに使ったりしてるから犬も多少食っても大丈夫だろ。


ほーれほれっ


犬の目の前でこれ見よがしに獲物を揺らす。


うっとうしそうな顔をされた。

だがしかし、尻尾は素直だぞ。


粘り強く誘惑する。


ワッサワッサ


そして俺と犬は存分に走り回った。


息も切れてきたその頃、犬がピタリと足をとめた。

その視線を追うとそこには人影があった。


旅人のようなローブに身に包み、フードを目深に被っている。

こんなまだ開門もしてない早朝に自分たち以外に森に人がいるなんて思わなかった。


どうしてこんなところに? と声をかけようとした。


ところが、その人影はすぅっと森の中に消えてしまった。


「あっ、おい!待てよ!」


そいつが立っていた位置まで来たが、すでに影も形もない。

足元の草を見てみる。

草はわざと踏み荒らされたように、めちゃくちゃの方向へ倒れていて

向かった方向さえわからなかった。

憲兵隊の隊服の俺を見て逃げるなんて、怪しいやつに決まっている。


「おい、犬!どっちかわかるか?」


そう声をかけると犬は踏み荒らされた草に鼻を近づけ、

次に周りを見回すが、首をかしげて座り込んだ。

どうやらわからないようだ。


「おいおい、どうしたぁ。」

背後から、隊長とモリスが追ってきていた。


「なんか怪しい奴がいたんすよ!でも見失っちまって、こいつもわかんねぇみたいで。」

犬がつんとそっぽを向いた。

本当のことじゃん。犬の癖に。


「いやぁ、いきなり普通の犬に探査犬の真似事をさせようったって無理だろうよ。」

わかんねよなぁ と、隊長は不貞腐れているような犬の頭をぽんぽんと撫でた。


「そんなことより、早いとこ森を出るぞ。

怪しい奴がいるかもしれねぇってんなら尚更だ。

森の中、この人数で鉢合わせしたくねぇ。

一旦町に帰って荷馬車を引いて戻ってきてサシャ達と合流だ。」


おらいくぞっ と歩き出す隊長と共に俺たちは町に戻ることにした。






一方、町へ向かう三人と一匹を見下ろす人影があった。

腰掛けた木の枝を撫でながら呟く。


「はぁ、犬がいるなんて。嗅音消しが使える位置で良かった。」

ちら、と商人を最後に見た方向を見つめた。


「あのおじさんが救い上げられた事、

司祭様に報告しなくちゃ。」


ごそごそとローブの内側から何かを取り出すと膝の上で広げる。

白く透けたごく薄く柔らかそうな布。

両手で布の左右の端の方をつまむと、そのままヒラリと枝から飛び降りた。


空中でふわりと布を下へ揺らし、布を踏みながら着地した。


なかなかの高さから飛び降りたにもかかわらず、

タンッと僅かな音で着地したその人物は、少しずれて淡い水色の柔らかそうな髪を覗かせたフードをまた深く被りなおした。

布についた砂を軽く手ではたいた後、再びローブの中にしまいつつ

商人がいた方向に目を向けた。


「善きお導きがあらんことを。」


短く黙祷を捧げたのち、軽い足取りで歩き始めた。

数歩進んだ所で「あっ」と何かを思い出したように足を止める。


「仕方ない。」

数秒立ち止まっていたその人影はそう小さく呟くと、歩みを再開し森の木々に紛れていった。


読んでいただきありがとうございます。


大体土曜か日曜〜月曜の早朝に投稿するようにしています。今回いつもより少し遅くなってしまい、すいません。


念着粉の字は粘着粉でなく念着粉で使っています。

音感の通り、ひっつきます。


異世界独自の物を現地人目線で登場させる時、説明が難しいですね。

できれば文中で上手に入られたらなぁと思いますが、なかなか上手くできません。苦戦してるなぁと生暖かく見守って頂けると幸いです。そのうち上手になるかもしれません。

さらっとやってのけてる他の作者さん達の凄さを改めて感じました。



そしてそして!

アクセス解析ってなんぞ?と思って押したら

アクセスしてくれてる人が思ったより沢山いらっしゃってびっくりしました。


わーい!やったー!誰か見てくれてたー!

描いてるだけでも結構楽しいんですけど、

誰かが楽しんでくれてるって思ったらとっても嬉しいです。


いつもありがとうございます❀.(*´◡`*)❀.

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