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07 害虫退治 前半

 

 ノープランで家から出ていたから、ギルドを後にした次は……なに?

 昼までまだ時間がある。どうしよう。


 それに先、酒場にいる冒険者の一人が私のことを『白銀』と呼びました。

 なにそれ?ゲーム時代、称号は特に効果がない、私、自慢できる対象もないから、デフォルト設定の『駆け出しの冒険者』や、イベント気分を味わえるエフェクト付きの『MERRY CHRISTMAS!』みたいな称号しか装着しないはず。

 多分、先のクエスト内容と同じ、基本的なことはゲームと一緒、細かいところは微妙に違う。あくまで『ゲームと似ている世界』、かな?

 それと、NPCたちの反応も気になります。いや、『NPC』と呼ぶのはやめよう、ユリアさんたちはこの世界の住人、つまり、人です。


 そこで、ピンとくる。

 ああああああ、それ、やばくない?

 そう、リリアナのこと。


 私は、彼女が自分の財産と権利を相続できない原因ではないか、間接ですけど。間接ですよ、直接の原因はあの土の養分になった男爵ですのよ?


 ……ゲームの時みたいにお姉ちゃん(わたし)大好きっ子でいることを祈りましょう。

 でも、私もちゃんと謝った方がいいですね。

 善は急げ。午後に時間を作って、そうしましょう。




 ところで、ここ、どこ?

 歩きながら考えることをしたせいで、迷子になった、ミニマップくんが懐かしい。

 あまり方向を変えないから、商店街のどこかの裏路地かな?開いている店の人に道を聞こう。

 店を探していると、ひとの声が聴こえます。


「よーしよし、これで道を聞けます!」


 しかし、声が荒々しいですね、揉め事?

 …………どうしよう、面倒そうな予感、でも迷子ですし、私もそこそこの良心があるし…

 ううう…やはり見ていきましょう、私は声がする裏路地に足を運んで。

 すると、


「おや?ここ、見覚えがあるね。しばらく来てないですけど、この辺、確か錬金術師のおじさんが開いた店がある。」 


 小さくても雰囲気の良いお店です、商品の値段もお手頃で、効果も抜群。それに看板娘の孫娘の姉妹はかわいい、姉のクレアさんは物腰が柔らかい美人、妹のアリーセちゃんは健気でいい子。レベル50まで、よく利用している。


 そしてその店、いま、絶賛揉め事中。


 何というか、定番ですね、異世界ストーリーで。

 店を近づくと、段々会話の内容が聞き取れる。




「やめてください!」


 開かれたドアから見るとクレアさんが叫んでいる。

 三人のチンピラ(私見)が店の中で暴れている。

 クレアさんは妹を後ろにかばい、一生懸命に抵抗している。


「今日借金を返せよ。なんなら、そのガキを売ってでも金作って貰う、ぐへへ。」


「でも、約束では今月の15号まで――」


「知らねぇよ。金かそのガキ、どっちか寄越せ、ぐへへ。」


「ぐぅ、お金を払う、払うから数日待ってください!」


「待てねぇ、払えねぇならガキを貰う、まだガキだが物好きな変態に可愛がって貰えるさ。」


 チンピラAがアリーセちゃんの腕を掴む。


「離してください!」


 クレアさんが妹を助けるためにチンピラAに掴みにかかる。

 だが、チンピラAはクレアさんを殴りつける。

 そしてチンピラAがクレアさんの髪を鷲掴みにして、小さなフラスコを取り出しました。


「これはなにか、知ってるか?あぁ?」


「ア、アルケミストファイア(火炎瓶)!?」


「これを使えばここはどうなる、分かってるなぁ?」


「ぐぅ…」


 ……ついさっきまで様子を見る、あとで借金をなんとかするのつもりだったが怒りが湧いてくる。

 よし、死刑決定。あの三匹は今日死ぬ。


 私はわざと音を立て店に入りました。


「こんにちは、クレアさん。」


「え?」


「なんだ貴様!」


 私の登場で、チンピラたちの気をクレアさんとアリーセちゃんから逸らした。

 二人とも、跡が残らないといいな。

 念のために、こっそり『マナシールド』を二人に掛けた。


 そして、私の期待通りに動いてくれたね、蛆虫どもめ。

 次は不安要素を取り除く!男爵の一件で懲りましたので。


「蛆m――いけない、あなたたち、借金、と言いましたよね。つまりサイン済みの書類と証文がありますよね?なら王国の律法に基いて――」


 ちなみに、王国の律法なんて全然知らない。

 ただそれっぽいことを適当に言っただけです、どうせこの頭悪そうなチンピラたちも知らないでしょう。


「ねぇよ、そんなもん!その女が大人しく金を――」


「ほう、ただの下っ端と、やはり話にならないですか。」


 うんうん、どうやらそんな律法は本当に存在していますね。

 その上に、煽る!さぁ、私が欲しい情報をさっさと吐け!


「誰が下っ端かぁ?この俺様は――」


 よーし、組織がないみたい。これで後腐れなく殺りそうだね。

 さてさて、楽しい楽しい死刑執行の時間だよ!


「クレアさん、まだ昼なのに店に()()が侵入したなんて、騎士団を税金泥棒と呼びたいところですよね?」


「え?それどういう意……あ!そ、そうですね、盗、()()がこんなに大胆なんて。」


 さすがお姉ちゃん、私の意図を一瞬で理解した。

 ゲームで、盗賊討伐任務の依頼書に、『盗賊に成り下がってしまった者があらゆる権利と義務を放棄した、容赦はいらん』みたいなフレーバーテキストがある。それから推測すると、こっちでも盗賊を殺したところで法的には何の問題もない。


「テメェ、さっきから舐めてんだろ!」


 チンピラB、うるさいぞ。


「貴様!」


 チンピラCがナイフを取り出して、こっちに襲ってくる。

 いいぞ、チンピラC。これで『向こうが仕掛けてくる』という状況も作り出した。


「『グラビティフィールド(重力場)』、『バインド』」


 私が魔法を発動させる。

 男たちの足元が黒と紫の魔法陣が現れ、黒いの方から数本の鎖が伸ばして、あいつらの自由を封じます、紫色の方は名前通り、範囲内の重力を増加して、『バインド』の命中率の向上を図る、そして『バインド』が命中した相手の反抗能力を更に奪う……けど、鎖が絡み付く前に、あいつらは重力だけでバンッと地面に押えつけられた。


 あ、あれ?弱くない?

 調子が狂う。これ、まるで私が弱者をいじめてるみたいじゃない。


「こんなことをしてただで済むと思っているのかぁ?」


 あ、どうも、チンピラBさん、殺意が戻って来た。


「クレアさん、ここは私が始m…なんとかするから、騎士団への通報、お願いできますか?『三人の盗賊が店に侵入しました』と、もちろん、アリーセちゃんを連れて、ね。」


 これからここで起こることは教育に悪いから。


「れてぃしあおねえちゃん、だいじょうぶ?」


 アリーセちゃんに心配された。ひどい目にあったのに他人を心配するなんて、いい子ですね。


「大丈夫大丈夫、だからクレアお姉ちゃんと一緒に騎士さんたちのところに行って。」


「うん!わかった!」


 しかし、もしここで言い訳の通らない柔軟性に欠ける騎士さんが来たら、面倒極まりない。

 出来れば私と面識がある、頭がそれなりに柔軟な人がいい。騎士団からの討伐任務は割と多いからそんな人がきっといるはず。


 うううう、頑張れ、私の大脳皮質神経細胞。


「あ、クレアさん、出来れば通報は南門警備隊のレオ・バラチエ隊長までお願いします。」


「南門警備隊のレオ・バラチエ隊長ですか?はい、分かりました。お気を付けください。」


「急がなくてもいいですよ。」


 クレアさんはアリーセちゃんを連れて、店の外に出る。


 私がドアを閉めて、次の行動を模索する。

 ここはやはりちょっと芝居を打って、こいつらの心に恐怖を植えつけて、黙らせた方がいいかな?

 今の状態だと、『貴様』、『テメェ』、『ふざけるな』しか言わないから、会話すらできない。

 とても困ります。

 でも私そういうキャラじゃないし、どうしよう。仕方ない、アニメやゲームのキャラクターたちのセリフを拝借しましょう。


 私はニヤリと口の端を吊つり上げて、できるだけ不気味な笑顔を作り出して、床に倒れている蛆虫どもに話し掛ける。


「さて、諸君、惨劇の開幕だ。」


一話で終わりにするつもりなのに……

なんで?なんで大きな進展もないのにもう2500字を超えた?

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