04 目覚め、そして…火事?
三回目の目覚め、流石に今回は寝惚けない。
見慣れない装飾が…いや、思い出した。
それはゲームでのマイホームのマイルームの天井だ。
のが多いな。
レベル40以降、アイテムボックスは玄関でアクセスできるから、部屋に入る機会が一気に減らした。部屋に入ってもわざわざ視線を天井に向かわない、だから忘れた。
ベッドから降りて、壁際に置く大きな鏡の前に立つ。
長く銀色の髪に、紫色の瞳、色白な肌と華奢な体。
ちょっと疲れた笑みを浮かべてみたら映っている女の子も笑みを浮かべたのでこれは完全にわたしです。
つまり、転生したのは間違いないみたい。
「もし夢でしたらそれはそれでへこみますけど…やはり現実味がないね。」
それから、枕元を見て…
そこに、一冊のグリモワールが置かれていた。
それを見て、なんだか安心する。
「先ずは、いろいろなことを確認しなければならないですね。」
いつものジェスチャーでメニューを出してみる。
ログアウト画面がでない、これは予想通り。
フレンドリストもでない、これも予想通り。
(出たとしてもフレンドがいないですけど…わはは。)
インベントリー画面がでない、これは不便です。
どうやら現実世界みたいに鞄とか袋とかが必要です。
ステータスとスキル画面は出てくれた(?)。
レベルアップはまだしてないから、ステータス画面に用がない。
だがスキル画面に、興味を引く物がある。
NEW!
『火の加護』、『水の加護』、『雷の加護』、『土の加護』、『風の加護』、『光の加護』、『闇の加護』。
なにこれ?3.0の新しいスキル?
どうして持っているのは不明だが、効果を確認しよう。
いつもみたいに画面にあるスキルアイコンをタップしようと、指先が画面を通り抜けた、手応えが全然ない。もう一度やってみても同じ結果だ。
ええ?見るだけ?操作できない?
大丈夫、慌てるな、わたしにはまだ切り札がある。
枕元からグリモワールを机の上に移す、それをひらく。
すると、一行の文字が表紙の裏に書かれていることを気付く。
『優しいたわけへの一言、
気を張らずに行きましょう。
偉大なる狐神より』
また悪口ですか、でも…確かに気を張る必要がないですよね。
誰かにはっきり言われると、心が安定する。
結穂さまは、おそらく、その効果を見越して、メッセージを残しただろう?
…何もかもすみません。
気を取り直して、加護のことを調べなきゃ。
えっと、
あ、い、う、え、お、
か、か、か…あった!
【加護】
3.0バージョンで追加したパッシブスキル。
様々な効果と取得条件があります。
「うむうむ…次はあの〇の加護たちですね。」
【火の加護】
火の真理を知る者に授ける加護。
与える火属性ダメージ上昇(小)
受けた風属性ダメージ軽減(小)
「おおおおおおおっ!私に相性ぴったり!」
スキル説明を読むの途中、私が興奮のあまり大声で叫ぶ。
でも取得条件は何ですか?こんな効果的なスキル、タダでもらえるはずがない。
取得条件
【最上級火焔魔法】シリーズのスキルを全て習得した
なるほど。そして、これまでの経験から推測すると、上昇(中)、上昇(大)、もしや上昇(特大)があると考えられる。
ゲーマーの血が騒ぐ、コンプしたい。
しかし、目当ての項目を探している時から気になることがある。
結穂さまからもらった攻略本(仮)の中、【???】になっている項目が妙に多い。全情報収録じゃなかったの?
うんん…結穂さまは何を言いましたっけ?
『今までの資料は全部入れたぞ。新しいの資料も自動的に登録する。』
あーあーそう来たか。
『今まで』、つまり3.0の資料はない、ということですね。
まぁいっか。
いまの私には時間制約がないから、この世界の生活を楽しみながらスキル狩りをしようか。
魔法も確認する必要があると思うその時、頭の中に、あるミームがぼんやりと浮かぶ。
「魔法使いになった人は誰でもしたことがある。」
えっと、その決まり文句はなんでしたっけ?
あ、そうだ!
「I CAST FIRE――」
目の前に急に光の玉が現れ、頭は、それが何かを理解した時点では、もう遅い。
「――BALL!」
凄じい爆風と恐ろしい轟音を共に、
わたしの部屋が爆発した。
ごめんなさい。まだ冒険に出ません。
最後の部分、読む人によって意味不明になるかもしれませんので、ここで説明します。もう知っていた皆さんはスルーでお願いします。
ミームは、ネタ的要素の強い画像や動画などの情報のこと。
「I CAST FIREBALL!」(わたしがファイアーボールを使う!)は、
ダンジョンズ&ドラゴンズ(略称:D&D)で、冒険者パーティーの魔法使いが、なにも考えずに部屋や橋など狭い空間で広域攻撃呪文を使う、自分とパーティーメンバーたちを殺傷範囲に巻き込むこと。