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拝啓 魔王様  作者: 白猫
一部
9/19

勇者からの2




どうやら眠ってしまったらしい。

昨夜はこの身の置かれた惨状を振り返って、少しダウナーになっていたようだ。



全く、私としたことが。

手紙だなんて、そんなもの書いたところで届けようもないのに。

魔王に手紙を届けれるような存在がいるのなら、私の代わりに魔王を討伐して欲しいぐらいだ。


恨み言をぶつける時は、殺し合いをしている時になるだろうに。




特に寝坊してしまった訳でもないようで、まだ陽は上りきっていない。

体の調子は悪くないし、今日も鍛錬と訓練に励まなければ。

比較的弱い魔物しか現れない街の近くで、地道に実力を伸ばすのが私の日課だ。


人間が定住している付近には、奴らもわざわざ乗り込んではこないらしい。

稀に進行してきたり暴れ回る例外もいるが、そんな特異な奴がそうそういてたまるか。

それに、そんな奴が現れれば、国の精鋭が討伐にあらわれるだろう。

まあ、私にもお呼びがかかるだろうが。




生憎とまだまだ未熟な私は、敵の本拠地に乗り込める程の実力には程遠い。



勇者に選ばれたというのなら、それ相応の実力をくれても良いだろうに。

全くもって面倒極まりない。

こんなことで魔王討伐なぞできるものなのだろうか。




さて、朝の支度も済んだことだ。

なんだかんだ魔物を倒せば強くなる。

そう実感をする程には私も慣れて来た。

忘れ物をしていないかもう一度確認して、



『配達完了通知』



なんだこれは?

昨日何か荷物でも受け取っただろうか?

いや、昨日も変わらぬ魔物狩りの日々を送り、帰って来てから何かを受け取ったということもない。

勿論、私が不在の時に宿に届けられていたなんてことも聞いていない。


ただ封筒の表にそれだけを記載されている便り。

えらく簡素に内容を語っているが、記載通りなら何かしらの完了を知らせる類なのだろう。

いや、何かしらの配達を完了した通知か。



私の部屋にあるということは、私宛で間違いないのだろう。

もしくは、違う人へ宛てたものが私の部屋に間違えて届いたか。

それならば私が開けてしまうのもよろしくない。


しかし、昨日戻ってきてからこの部屋には私しかいなかった。

部屋には鍵がかけてあるし、来訪者もいない。

ドアの隙間から挿し入れるにしても、机に置かれているのはおかしい。



差出人も、送り主も、家紋や封蝋もないとなれば全く手掛かりなしだ。

これはとりあえず中身をあらためて、もし人違いであったのなら素直に謝ることにしよう。

このまま放置しておくには些か不気味で、不安が付き纏う。


何、私は勇者だ。

何かの手違いで届いた便りであっても、送り主も何もないのだから〔神からの啓示かと思った〕とでも言えば許されるだろう。


そもそもいつ届いたかも定かでないのだ。

そんなことができる奴が、宛先を間違えるなどという初歩的なミスをすることもあるまい。




便りを開いて見ると、そこにはまた簡素な一文だけが綴られていた。



『ご要望にありました、魔王〜〜へお手紙をお届け完了致しましたことを、ここにお知らせ致します。』




私は思ったより、疲れているらしい。







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