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拝啓 魔王様  作者: 白猫
一部
8/19

勇者からの手紙




今代の勇者に選ばれた。

それは誉高いことであり、誇らしいことなのだろう。


家族も皆喜んでくれた。

とはいえ勇者だ。

一等危険な場所に赴き、一等狙われる存在である。

相応の心配をされ、嫌ならば使命なぞ果たさなくても良いと言ってくれる。

生きていくだけならどうにかすると。

一緒にいることで、解決できることもあると。


私の家族はとても良い存在だ。

私としても離れ難く、出来るなら一緒に居ていたい。

だが、それもそうはいかない。

何より、選ばれてしまったのなら狙われてしまう。

家族といれば危険も齎す。

残念ながら手立てはない。


そうであるならば強さを手にし、守れるだけの実力をつけた方が建設的というもの。

討伐なんて危険なものは、二の次だ。






教会や王族、民衆からの期待感なぞどうでも良いが、私の大切なものを傷つけられるのは我慢ならない。


側付きやら護衛やらを勧められたが、そんなものは遠慮被る。

次はどこそこだ。

やれ何々を目指そう。

オレ達が私達が世界を救う。


そんなものに興味はない。

それよりも私の家族を守って欲しい。


勇者を輩出したとなれば、その家族が狙われてしまうというのも道理。

当然、誘拐などされようものなら、私は何もできなくなる。

自分の命も大事だが、それと同じくらい家族も大事だ。


私が危険な目に合うのは逃れようがないとしても、家族にその被害が及ぶのはダメ。

私に精鋭を付けるぐらいなら、家族を守って欲しい。



一応、建前として輩出した国が狙われてはならないからと、国の戦力に充ててくれと伝えたが、家族に被害が及ばないようにだ。


国が守られれば、家族も平和だろう。

当然、家族は特に狙われてしまうかもと伝えているので、より手厚い守護が望める。




司祭とやらも、王とやらも、痛く感動していた。

私の本心なぞ理解していないだろう。


それに、私の仲間は私で見つけるとも伝えてある。

自身の目で見つめ、相応の者を探し出すと。

勇者ならばそれ相応の出会いもあって然るべきだと。


英雄標にでもなぞらえれば、向こうも得心がいったようだ。

えらく納得していた。

バカな大人は扱いやすいといったところか。



そもそも、魔王退治だなんだと言っているが、魔王の被害なぞとんとここ最近聞いてはいない。

やれ少し魔物の被害が増えただの。

やれ不穏な気配が漂っているだの。


安寧な国にいる身で言えることではないが、余程人同士での争いの方が悲惨なものだ。

いったいどこの誰が仕入れたのか知らないが、魔王が顕在したなんて情報は迷惑でしかない。

一応、存在は確認されているらしいが、それだけだ。


全く、急に任命され矢面に立たされる身にもなって欲しい。

魔王とやらに恨み言をぶつけるぐらいは許されるだろう。



そうだ。

そ奴に恨みはないが、手紙でもしたためてやろう。

貴方という存在を人間は知りました。

それ故私という勇者も選ばれました。


選考基準?

そんなものは知らない。

神託とやらで決まるらしいが、生憎私は敬虔な信者ではない。


どこの神だか知らないが、私を選んでくれたことにほとほと嫌味を綴ってやろう。


届ける相手は、長い付き合いになる奴へだが。





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