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SevenGifters(セブンギフターズ)  作者: 水無月 十
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第1章(2)

実と直美は空がいる病院へと向かった。しかしまたそこである出来事に巻き込まれてしまう…

この直美の発言はさっきまでの希望が見えていた状況を一転させ一気に絶望に陥れるようなものだった。


「な、なんで?」


「私にもわかりません。正直、非常事態です。この能力を授かってから初めての経験です。」


直美は空がいる病室の方を見ながらこう言った。


「見えないんです。空さんが何を患っているのかが。それに寿命も。」


「見えない?」


「言ってませんでしたね。私は治癒の能力以外にも相手の寿命が見えたり、身体のどこが悪いかどういった病気なのかをその人を見るだけでわかるはずなんです。なのに空ちゃんからは何も見えませんでした。」


実はひどく動揺していた。それじゃあまるで空は生きていないようではないかと。


「なので私の能力は役に立ちそうにありません。申し訳ありません。」


直美は深々と頭を下げた。


「とりあえずで能力を使うとかはできないのか?」


実は直美の肩を掴み必死に訴えかける。


しかし、直美は首を横に振った。


「あくまでここからは私の予想です。合ってるかもしれないし、合ってないかもしれません。仮に空ちゃんに能力を使うとします。使ったところで良くも悪くも何も起きない可能性があると思っています。いえ、むしろ何も起きないならまだいい方とすら思います。最悪の場合はこの能力は空さんを傷つける可能性がある。そう私は思っています。」


実は何も発する事ができない。


「7年も原因不明で目覚めてないのであれば現在世界で判明しているどの病気でもない可能性があります。最もそれでも患部が見えれば別です。そこを治せば良いだけですから。でもそうじゃない。私も未だかつて経験したことがない状況で訳がわかってないです。」


「くっ…」


実は直美肩から手を下ろしどこかへ歩み出してしまう。


「どこへ?」


「少し整理したいので1人にしてください。」


その様子を止めることはできずただ眺めていた。


「はぁ。」


思わずため息が出てしまう。あれほど自信満々に話したにもかかわらず、結局治すことも原因すら掴めなかった自分に嫌気がさしていた。


遠くの方にある窓を見ていると反射している自分の後ろのベンチに誰か座っていることに気づく。瞬間辺りが漆黒に覆われていく。


「なに!?」


最早目の前には暗闇しかなく自分の声が響くのが聞こえ、ベンチに座っている感触以外何も感じられなかった。


コンニチハ(こんにちは)リョウジインナオミ(療治院 直美)サン(さん)ゼッタイニ(絶対に)フリムカナイデ(振り向かないで)クダサイ(ください)フリムイタラ(振り向いたら)コロシマス(殺します)。」


後ろにいる()()()あまりにも禍々しく恐ろしい雰囲気を放っていた。聞こえてくる声も人間というよりかは機械のそれに近いものだった。直美はなす術なくコクリと頷く。


リカイガハヤク(理解が早く)タスカリマス(助かります)ハジメマシテ(はじめまして)ワタシハ(私は)私はアナタタチノ(あなたたちの)ショウタイヲシル(正体を知る)モノデス(者です)キョウハカンシャヲ(今日は感謝を)ツタエニキマシタ(伝えに来ました)アナタノオカゲデ(あなたのおかげで)ワタシノケイカクハ(私の計画は)ジュンチョウデス(順調です)コレハキョウリョク(これは協力)シテイタダイタ(していただいた)オレイデス(お礼です)。」


協力が何を指しているか直美にはわからなかった。


正体がわからない何かは直美の横に封筒を置く。


デハマタアイマショウ(ではまた会いましょう)。」


真っ暗だった辺りはすぐに先ほどと同様の景色に戻った。直美はすぐに振り返ったがそこには誰もいなかった。夢でも見ていたのかと思ったが、横に封筒が置かれていることから夢ではないと確信した。辺りを見回し誰もいないことを確認し封筒の中身を見た、。


「何この本。」


そこには表紙に「Seven Gifters」と書かれている一冊の本が入っていた。直美は迷わず本を開いた。しかし、そこには何も書かれていなかった。何ページもパラパラとしていくうちに何か書かれているページにたどり着いた。


(6:治癒の能力 ありとあらゆる病、怪我を治す能力。ただし死者を蘇らせることはできない。視認した相手の寿命、患部がわかる。)


「これって私の能力じゃ…」


急いでページを捲るがこの記述以降それ以外のページには何も書かれていなかった。本を一旦閉じ、一刻もこれを早く見せなくてはと思い走り出した。


「電話番号ぐらい聞いておくべきでしたね〜」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

直美は病院中探し回ったが実はどこにもいなかった。残す場所は空の病室のみとなった。


ゆっくりとドアを開けるとベットの横に座っている実を見つけた。


「やっぱりここでしたか〜」


「すいません、さっきは急に居なくなって。空は大丈夫だったみたいです。」


「そうですか〜。よかったです〜。」


直美は何も気にしていないように振る舞った。


「やっぱり見えないか?」


「そうですね〜。その件で一つお話いいですか〜?」


直美は先ほど起きたことを話し、本を見せた。


直美は先ほど自分が見たページを少し通り過ぎたところに何か書かれていることに気づいた。


「あれ?ちょっといいですか〜。」


そこには何か書かれているようだが掠れていてとてもじゃないが読み取れなかった。


「掠れすぎていて読めないな。」


「それはそうなんですが、さっきまでこのページには何も書かれていなかったはずなんですけど。」


その時病室の扉が開いた。


「想川さん。そろそろ面会終了時間になりm… お嬢様!?」


面会終了を告げに看護師長さんが入ってきた。


直美は苦い顔をしていた。


「こんばんは。終了の時間はもうちょっと後じゃないですかね〜?」


「あっ、えっ、はい。そ、そうでしたね。失礼いたしました。」


看護師長は逃げるように去っていった。


「めちゃめちゃ恐れられてますね。」


「祖父のせいでしょうね〜。こういう風に役に立つ時もあるので悪くはないですよ〜。ただ時間は時間ですのでそろそろ帰りましょうか〜。」


じゃあなぜあんな威嚇したのだろうと実は思ったが口にはしなかった。


「そうですね。じゃあな空また来るよ。」


空の頭を撫で2人は病室を後にした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「この後、実さんのおうちに行ってもいいですか〜?話したいことが山ほどありますし〜。」


「そうですね。直美さんの家に行くわけにも行きませんしね。」


病院から出ようとしていた矢先だった。


「直美さん!」


振り返ると白衣を着た若い男性が立っていた。


「あら由埜(ゆの)さんこんばんは。」


「どうされたんですか病院にいらっしゃるなんて?」


「友人の妹さんの見舞いですわ。」


会釈する実。男は実の顔を見て何かに気付いたようだ。


「あれ?実くんじゃないですか。お二人はお知り合いだったんですか!?」


「どういうことですの?」


実も訳がわかってないようだがじっとその男の顔を見てようやく気づいた。


「あれ癒川(ゆかわ)先生じゃないですか!」


実は嬉しそうに近づいていく。


「癒川先生は空の担当医なんです。」


「そうだったんですね。世間は狭いですね。私の()()()が担当医だったなんて。」


「婚約者?あっ、へぇ〜そうだったんですね〜。」


実は2人を交互に見てニヤニヤしていた。


直美はそれを見てゴホンとわざとらしく咳をした。


「由埜さん、時間は大丈夫なのですか?」


由埜は何かを察した。


「ああ〜、そうですね。私はまだ仕事が残っていますのでこの辺で失礼します。またお会いした時にでもゆっくりお話ししましょう。」


そう言い去っていく由埜。2人は手を振って先生を見送ると直美が話し出す。


「驚きましたね〜。まさか共通の知り合いとは〜。」


「正直知りたくなかったですね。」


結婚を阻止することすら乗り気ではない実はさらに知り合いであることを知りますます気が乗らなくなってしまっていた。


「そうですよね〜。私もあんなに良い人だとやりづらくてしょうがないです〜。それに実さん。私は貴方の願いを叶えられないわけですから、無理に手伝わなくても良いんですよ?」


確かに言われてみれば実にもう手伝う意味も得も何もなかった。ただ知ってしまった以上何もしないというのも実の考えにはなかった。


「いや、一度協力すると言った以上はやりますよ。それにまだ空のことを諦めたわけではないので。早く家に戻って話の続きをしましょう。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


実の自宅に近づいたあたりで玄関に誰かいることに2人は気づいた。


「宅配ですかね〜?」


「いや、何も頼んでないはずです。」


2人が玄関の方に向かうとタイミングよく振り向いた。


1人だけいると思っていたが陰に隠れたもう1人いることに気づいた。


1人は色白で黒髪ロングの顔立ちが整った女の子。もう1人は小学生ぐらいに見えるデコを出した女の子だった。2人とも同じ制服を着ていたのでおそらく学生であることはわかった。


「あのうちに何のようですか?」


「あっ、えっ、あの…」


話しかけると黒髪ロングの方の女の子はオドオドするだけだった。


「私とお姉ちゃんはねぇ、ここに住んでる想川実っていう人に会いに来たんだよ!」


代わりに小さい方の女の子が答えてくれた。どうやらこの2人は姉妹らしい。


「実さん目当てでしたか〜。1日に年頃の女の子3人に訪問されるとは隅におけませんね〜。」


先程の仕返しなのかここぞとばかりに煽ってくる。しかし実は気にせず話を進める。


「心当たりが全くないんですけど…」


するとおそらく妹の方である女の子が驚く発言をした。


()()()はね。みのるんと同じで能力者だよ!」

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