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SevenGifters(セブンギフターズ)  作者: 水無月 十
1/3

第1章 (1)

「お前達ははこれから()()()()()が使えるようになる。決してその力を悪用してはダメだ。その力をどうするかは自分で考えるんだ。ごめんな(みのる)、側に居られなくて。」


この会話を最後に親父は俺の前から姿を消した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その日の朝もいつもと変わらず1人で朝食を作り、食べている時のことだった。


ピンポーンとインターホンが鳴った。


こんな時間に珍しいと思いつつ実は玄関のドアを開けた。


「あっ、えっ、出ちゃったました〜、、、どうしましょう〜。」


そこには可愛らしい女の子が立っていた。


「どちら様ですか?」


女の子はまじまじと私を見て言った。


「貴方が想川 実(おいかわ みのる)さんですか〜?」


どうやらその女の子は実のことを知っているようだった。


「えっ、はいそうですけど。セールスとかなら全てお断りなんで、じゃ。」


そう言いドアを閉めようとする。


ガッと閉めるドアを押さえる女の子


「セールスじゃないんです〜。貴方のお父様?の紹介で来ました〜。」


「俺の親父の紹介?」


「はい。貴方のお父様の想川 現(おいかわ あらた)さんからの紹介で参りました、

療治院 直美(りょうじいん なおみ)と申します〜。」


喋り方は別として彼女の堂々とした出立ちから嘘をついているようには思えなかった。


「とりあえず、玄関先で話すのもあれなんでどうぞ上ってください。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


部屋に案内し、直美をソファーに座らせるやいなや実はすぐに口をひらいた。


「色々と聞きたいことがあるから先に質問してもいいですか?」


「もちろんです〜。」


「りょうじいんさん?は何故僕の父親のことを知っているのですか?」


「直美でいいですよ〜。それはですね〜、こんな手紙が私の部屋に置かれていました〜。」


直美は持っていたカバンの中から一枚の手紙を出し実に渡した。


(突然の手紙失礼いたします。はじめまして、療治院直美さん。私、想川現と申します。

早速本題ですが、あなたが今抱えている悩みを解決してくれる人物を紹介いたします。

その人物はあなたと()()()を持つ者です。お互いの目的を達成することができるでしょう。

以下に名前と住所を書き出しますので、よろしければ訪ねてみてください。)


「こんなのだけでここに来たのか?」


実は直美の行動力と思慮の浅さに驚いていた。


「私も我ながらこんな内容で証拠もないこれを信じてここに来たことがおかしいとは思うんですよ〜。ただ私は文章内にある同じ力を持つ者という言葉とこれが直接私の机に置かれていたことから信じてみる価値があるなぁと思いここに来ました〜。」


口調とは裏腹に直美の目は至って真剣だった。初対面でかつ意味不明なことを言っているのにもかかわらず何故か実はすんなりと受け入れていた。


「なるほど、それによほどここに書かれた悩みっていうのは切羽詰まっているみたいですね。」


「はい〜、ただここにはお互いにと書かれています。実さんにも何かお困りのことがあるのではないのですか〜?」


直美の鋭い返答に実は言い淀んでいた。


「あまり軽々と話せる内容ではないみたいですね〜。では、私の抱えている問題と能力を先にお話ししますね〜。その上で判断してください〜。」


実はコクリと頷く。


「まず自己紹介から私の名前は療治院直美、17歳あっ、もうすぐで18歳です〜。苗字からわかるかもしれませんが療治院家の跡取り娘です〜。元ですが〜。」


療治院家といえば国内で一番有名な総合病院の療治院総合病院の病院長を代々受け継いでいたことでで()()()()()一家だ。しかし病院長であった療治院恵(りょうじいん めぐみ)りょうじいん めぐみ)が当時日本一の経営規模を誇っていた先代が作り上げた総合病院の病院長の座を他の者に譲り、町医者として小さな病院を経営しだし世間を賑わせた。


「じゃあお父さんは?」


「私の父はかの有名な療治院恵です〜。」


「そのことが関係しているってことですか?」


「察しがいいですね〜。ここからは世間一般には公表されてない話です〜。」


その出来事がきっかけで恵は祖父の金満(かねみつ)から一時勘当された。しかし、子は恵しかおらず、なんとか再び病院長になるように説得していたがそれは叶わなかったという。


「何がそんなに嫌だったんですか?」


「そもそも祖父は能力を使って病院を大きくしていったのです。私に受け継がれたこのどんな病気や怪我でも治せる力で。」


実は目を見開いて驚いた。


「そういうことなのか、親父」


実はボソッと呟いたが、直美の耳には届いてなかった。


「私の能力はありとあらゆる病気、怪我を完治させることができるというものです。祖父はこれを上手く使い病院を大きくしていきました。いつからからか祖父の経営する病院はなんでも治る病院として名を馳せました。そして祖父は徐々に治療する患者に差をつけ大金を払うものにしか施さないようになっていきそんな祖父を父は嫌っていました。

父はとにかく人を助けたい、その一心で医者を目指していました。当然父は能力について知ってはいましたが無闇に使っていいものとは思っておらず、祖父から能力を受け継いだ際にあの騒動を起こしました。」


「自分の信念に従ったってことか。」


「私自身、祖父の考え、父の考えどちらが正しいかなんてわかりません。私は私の考えに基づいてこの能力を使っていきたいと思っています。」


急に謎の宣言をしたことを恥ずかしく思ったのか少し顔を伏せてしまう。


「えっと、すみません。本題からずれてしまいましたね。私が実さんにお願いしたいことは()()()()をぶっ壊して欲しいのです。」


「えっ結婚!?ぶっこわっ、えっ?」


突然出てきた結婚というワードに驚きを隠せない実。


「はい、先ほど申し上げた通り、能力自体はもう父ではなく私に受け継がれています。それを知った祖父は私と今の病院長の跡取り息子と政略結婚させようと企んでいます。」


「それについてお父さんは何て」


「父は7()()()に失踪して以来会っていません。母はそのこともあり肩身が狭い状態で発言権はないような状態です。」


実は7年前と失踪というワードに身に覚えがあった。


「待ってくれ、俺の親父もそうだ7年前の7月7日に失踪した。その日から俺も能力が使えるようになったんだ。」


直美は目を見開いて驚いていた。


「私の父も7月7日に失踪しました。何か関係がありそうですね。あれ?ではこの手紙は?」


「そうなんだ、7年間連絡が一切なかった親父から手紙が来るなんてありえないんだよ。」


「ではいったいこれは誰が。」


「わからない。ただ俺は直美さんと行動を共にしてれば何かわかる気がするんだ。俺、協力するよ何かわかるかもしれないし。」


「本当ですか!?ありがとうございます。でもまだ私は実さんのお願いを聞いてませんよ?」


「それは大丈夫です。直美さんの能力を聞いたらこっちの願いは叶えられると確信してます。」


「どなたかがご病気だったりするんですか?」


実は深刻そうな顔で話しだした。


「妹が寝たきりなんです。これも7年前の同じ日から。でも直美さんの能力ならいけるんじゃないかって。」


直美の表情が少し曇る。


「絶対とは言い切れません。私自身はそのような方に能力を使ったことはないので。ただ、祖父が寝たきりの方を治した例がありますので大丈夫だとは思います。ちなみにきっかけとかはわかっていますか?」


「それがわからないんだ。正直7年前のことは異常なまでに覚えてない。最後に親父と交わした会話ぐらいしか覚えてなくて次に気づいた時は病院のベットの上だった。」


「そうなんですね。。。今から妹さんに会えたりしますか?」


「今日ちょうど行くつもりだったし一緒にいきましょうか。」


実はすっかり安心しきっていた。直美の能力のおかげでやっと妹に会えると。しかし現実はそううまくはいかなかった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 同日 療治院総合病院


まさか跡取り娘(元)と来るとは思いもしなかったと思いながら実は病院の看板を眺めていた。


「妹さんうちの病院だったんですね〜。でも7年も入院できてるってことは知り合いとかがいらっしゃるんですか〜?」


何気なく直美から発せられた言葉は実を悩ませた。


よくよく考えてみれば7年も何も言われずに病院に居させて貰えているのは異常なことかもしれない。


「いや、特に知り合いとかは居ないはずですけど。」


「そうなんですね〜。そういえば妹さんのお名前なんて言うんですか〜?」


(そら)です。想川 空(おいかわ そら)です。」


「空ちゃんですか〜いい名前ですね〜」


そんな会話をしていると空の病室に近づいてきた。


「こっちです。」


何やら看護師さんたちが慌ただしくしている。


「空の病室だ。」


実は直美置いて走りだした。様子がおかしいことに気づいた直美も続いた。


「空!。」


「想川さん!?今はダメです!下がってください!」


病室に入ると空に変わった様子は見られなかったがベッドサイドモニターから病室中に音が響き渡っていた。


実が近づこうとするとグッと力強く後ろに下げられてしまう。


「実さん。今は先生の言うことに従ってください。」


声の主は先ほどまで空をじっと見ていた直美だった。


「外で待ってましょう。今行ってもできることは何もありません。」


そう言い直美は実を引っ張り歩き出した。病室の近くのベンチで待機するのかと思いきや通り過ぎ歩みを止めない。


「ちょっ、どこまで行く気だ?」


「人がいないところまで行きます。誰かに聞かれるとまずいので。」


しばらく歩き病院に備え付けのバス停のあたりでようやく足を止めた。


「ここなら大丈夫でしょう。座って話しましょうか〜。」


直美の口調が優しいものに戻った。ひとまず安心したのであろう。しかし次に直美から発せられた言葉は意外なものだった。


「単刀直入に言います。私に空さんを助けることはできません。」

再始動。 2022/6/10


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