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Say you loVe me!!!

作者: 相沢 真秀

 今日、セっちゃんと喧嘩をした。

 殴り合いになった。

 先生に止められるまで、僕はセっちゃんを殴ったし、きっとセっちゃんも本気で僕を殴っただろう。

 どうしてこんなことになったのか、先生に聞かれたし、父さんと母さんにも聞かれた。

 それでも僕は答えられなかったんだ。だって、父さんも母さんも、先生だって、きっと僕の話はわかってくれないだろう。

 「僕の好きな人の前世や魂について」なんて、そんなくだらない話しは大人はこれっぽちも聞いちゃくれないんだよ。


 掃除の時間、セっちゃんが言ったんだ。「お前が好きな○○は○○で○○だったんだよ」って。はっきりとは覚えていないんだけど、それはとっても言ってはいけない言葉に聞こえたし、セっちゃんはマセてたからそういうことを時々言う奴だったんだ。僕は頭の先まで真っ赤になるのを感じて、セっちゃんの頬を思いっきり殴ってやりたいという気持ちでいっぱいになったんだと思う。でも、セっちゃんは強いから僕は泣きべそをかいた。恥ずかしい!


 放り込まれたみたいに、自分の部屋へと入れられた。殴られた頬も肩も、殴ったげんこつも痛い。

 パソコンの電源を入れ、動画投稿サイトをみると、新しい動画が上がっていて、そこには僕の好きな子の動画もあった。

 画面越しにその子を見ても、その子は僕なんか見ているわけじゃない。知ってる。

 大人気マスコットキャラクターの声は有名な声優さんがやっている。知ってる。

 僕の大好きな子は、画面越しにしかいなくて、ヴァーチャルの世界のこの子は、まだ本当はいないんだ。知ってるよ。

 画面越しに頬を触ってみたって、好きって叫んだって、どうしたって伝わりなんてしないんだ。

 知ってるよ。知ってるんだ。それでもこの子はそうじゃなければいいのになって思うんだ。

 そうじゃなければいいなって、僕と同じ世界には住んでいてほしくはないなって。

 きっと僕のしらない素敵な世界に住んでいて、いつか大きくなったら、会える時代になってればいいなって。

 その時、スマホのアプリが鳴って、セっちゃんからのメッセージが届いた。

「ごめんね」

 僕はなんだか辛くて、悲しくて、苦しくて、

 震える指で、タップして、

「僕も殴ってごめんね」

 僕がこんなにも泣きたいのは、セッちゃんを殴ったげんこつが痛いからなんだ。

                             了

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