天気の悪い日
丸く目尻が垂れた、二重の瞳
血色がよく、ぽってりとした唇
身長は低く、小さい手足
おまけに、その身長には似つかわしくない大きめの胸
「お母さん、学校今終わったから迎えに来て」
親指で転送マークを押した。既読はすぐについたが返信はかえって来ない。
(さて、今日は何時間後に来るのかな。)
スマホを操作する指先にすら視線が集まる。その度、気付かないふりをしては髪を耳にかけたり、リップを塗ってみたり、上着を脱いでみたりする。反応はとてもいいものだった。
「…。」
吐息に混じり、時々生唾を飲むような音も聞こえる。正直、私は自分の顔が嫌いだけど、熱い視線をありがとう。
その時、いつもよりはだいぶ早めの迎えが来た。
(ここまでか……。)
最後にとどめと言わんばかりの満面の笑みで、男たちに手を振り、玄関を出た。
車に乗り込もうとすると、ドアがまだ空いていて、おまけに片足が地面についているのに車が発進した。
「痛っ!」
その声を聞いても、母親は振り返る気配さえ無い。片方の靴はどこかに消えた。今日はいつにも増して機嫌が悪いらしい。
(今日は酷そうだな……。)
空が重く、陰って見える。本当は迎えなんて来てもらいたくないのだ。
だが、電車や地下鉄を利用するだけのお金はもらえず、歩くにしてもかなりの距離がある。それにこの童顔のせいで、怖い目にあったこともある。要するに、仕方がなかった。
(あの時は怖かったな。あの湿っぽいざらついた手の感触は、今でも忘れられない。)
首を滑り、肩を滑り、胸や唇、大事なところを汚された。汚されきらなかったのが、せめてもの救いだが。暗い中、埃と汗の匂いと、擦れる服や肌の音。
窓から見える幸せそうな家族を見て、爪を噛んだ。