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精霊《ルフ》と奏でるコンチェルティーノ  作者: 音虫
第五幕 精霊と奏でるシンフォニエッタ 〜旅の果ての真実《こたえ》〜
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3-9 決戦前夜

 夜が更け星々の光が明るく感じる時分。人気のない自然公園に五つの人影がひっそりと佇む。

 会話をしている様子ではあるが、不思議と話声は聞こえてこない。更に言えば、その五人の人影そのものですら周囲の自然に完全に同化し、人であると認識することすら適わない。

 その五人組の中で最も小柄な少女――加撫心音が辺りを確認して「よし」と呟き、少し抑えた声で仲間たちに声をかける。


「〝音響魔法〟による消音、バッチリです。認識阻害の魔法も問題なく機能しているはずですっ」

「ありがとうコト。万が一にも会話の内容は漏らしたくないからね」

「だがよ、こんな便利な魔法を使うなら、オレは酒場で飯でも食いながらが良かったぜ」

「ヴェレスあんたねぇ、今シェルツが万が一にもって言ったでしょう。世の中には口の動きだけでも会話内容を読み取れちゃう奴も居んのよ」

「それに、コトさんは自宅……ということで登録してあるヴァイシャフト邸への一時帰宅というテイでお城を出ています。酒場や冒険者ギルドでの目撃は極力避けるべきでしょう」


 音響魔法により会話の声が外に漏れることはないと分かってはいても、みな自然と小声になる。実状的にも心情的にも、あまり長く時間はかけない方が良いだろうと、心音は早速報告を始める。


「早速ですが、調査結果です。結論からになりますが、魔法陣の設置場所を見つけました!」

「良くやったわ! これで一先ず安心ね」

「ちなみに、お城のどの辺りだったのかな?」


「創世祭でぼくたち聖歌隊がヴェアン中に演奏をお届けした場所……大聖堂屋上の露台ですっ」

「なるほど、思えば確かに道理ですね。それにそこであればコトさんの勝手知ったる場所。城内移動の心配はなさそうです」

「魔王様をお呼びした後の案内はお任せくださいっ!」

「がはは、まるで逆賊の会話だな!」

「というかあたしたちがやろうとしてることは逆賊そのものよ」

「でも、それこそが世界を救うための道なんだ」


 生まれ育った国の王殺し。

 それは紛れもなく国家に対する反逆であり、重罪であり、裏切りであるだろう。


 だがそれはあくまでハープス王国という狭い世界に限定した話に他ならない。


 年々可住域が狭まっているこの世界、そしていずれ侵略の対象になるであろう地球を守ることを考えれば、それが最善の行動なのだ。


 葛藤はある。

 躊躇いもある。

 不安もあれば恐怖さえある。


 それでも、旅の中で見て感じてきた〝この世界の本当のこと〟が、シェルツたちの背中を後押しする。


 少し長い沈黙の後、重たい足を確実に前へ進めるが如く、シェルツがゆっくりはっきりとした口調で切り出す。


「それじゃあ、具体的な動きを詰めていこう。

 まずは明日明後日の流れについてだけど……予定では工業都市マキアの跡地の方角から大規模な魔物による侵攻が始まるはずだ。おそらく先ずは軍隊が派遣されて、戦況によっては、これも予定通りなら四段位以上の冒険者にも派遣依頼が下りてくる。たぶん時期(タイミング)としては作戦決行当日にもつれ込むだろうけど、俺たちは王都の守護を名目に残るつもりだ。

 そして昼過ぎころ、 ヴェアン近郊に大型の魔物が出現したとの報告が聞こえてきたらそれが合図だ。そうなれば王城守護隊も派遣されて混乱や焦りと共に一気に王都内の守りが薄くなるだろうから、その機を狙って城内の魔法陣に転移だ」


「転移用の魔法陣は、あらかじめぼくがお願いを込めた精霊(ルフ)さんたちと一緒にシェルツさんの部屋に設置しておきます。ぼくもその頃には大聖堂屋上で待機していますので、シェルツさんたちが転移してきて、魔王様たちも揃ったら作戦行動開始ですねっ」


 事前に予定は組んであったが、心音の作戦成功によりどのルートで進めていくかが確定した。

 あらためての意思統一を兼ねてその内容を確認し終えると、日付が変わる前に秘密の会合を収める。


 決戦の日はもう目の前。各々が運命の日に対する想いを抱きながら、深い夜間に溶けていった。


いつもお読みいただきありがとうございます!

ブクマ評価も頂けて嬉しいです♪

第三楽章はここまで。

次回から遂に第四楽章です……!

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