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精霊《ルフ》と奏でるコンチェルティーノ  作者: 音虫
第四幕 精霊と奏でるカルテット 〜重なる音色は心を繋ぎ〜
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第二楽章 続・森人族の国

 二番奏者は七色。

 煌めく光はくるりと踊り

 戯れながら、重なり合う。

 心を映し、(あまね)く世界へ。



♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪



 あまりよく眠れなかった。

 寝ぼけ眼を擦り起き上がった心音は、手元の懐中時計で時間を確認する。まだ、起きるのには少し早い時間だ。


 故郷のそれと一致する、この世界の星空。

 昨日知ったその事実がぐるぐると回り、とても安眠などできなかったのである。


 ここでの生活も長くなってきたが、今まで全く気が付かなかった。まさか星座が一致しているだなんて思いもしなかったのだ。


 それが意味することなど分かるはずもない。しかし、少なくとも故郷とどこか関わりのある世界であることは、確かな可能性として挙げられるだろう。


 真実を追求し、故郷に帰るため。

 答えの見つかりようがない悩みに溺れていても仕方がない。今はただ、少しでもその可能性に近づくため、出来ることを、少しずつ。


♪ ♪ ♪


 あれから数日、心音たちは森人族の都市ファイェスティアに滞在し、彼らとの交流や観光を楽しんでいた。

 もちろんそれは表向きの行動で、その最中もしっかりと森人族を囲む実情の調査を進めている。

 とはいえ.......


「今日も大した情報は得られなかったね」


 借りている空き家の一室で、シェルツが集まったパーティ皆に向けて事実確認をする。

 当然と言えば当然であるが、日を追う事に得られる新情報は少なくなってくる。初日に得た情報が八割、と言ったところだ。


「魔人族の情報がほとんど無いことも誤算でした。不可侵を守る状況下、国を跨いだ移動も滅多にないようですね」

「フーリィさんが、獣族の国に行った方がその辺は分かるかも? と言っていました!」


 エラーニュが整理した情報に重ねた心音の言葉に、そうだったね、とシェルツが頷く。

 そうなれば、今後の方針は決まったようなものである。


「それじゃあ、近いうちに獣族の国を目指して移動を再開しようと思うけれど、異論はないかな?」


 ヴェレス、アーニエ、エラーニュの三人が同意を示す。

 その中で、心音だけが躊躇いがちに口をもごもご動かしている。


「.......コト、何か引っかかってることがある?」


 シェルツに促され、心音は個人的な要望を零した。


「あの.......ぼく、森人族の皆さんが使っている〝重力魔法〟の概念を会得したいです。もちろん他種族のぼくたちに簡単には教えてくれないと思いますが、ぼくが故郷に帰るためのヒントとして、少しでも知っておきたくて」


 最近まで聞いたこともなかった〝重力魔法〟の概念。未知の知識や感覚を得ることで、故郷とこの世界の繋がりを感じるきっかけになるのでは無いかと、淡い期待を抱いていた。

 それに、ラネグが〝重力魔法〟を発現させていた例もある。交渉によっては会得を許されるかもしれない。


「そうだね.......うん。フーリィを通じて、族長さんにお願いしてみようか。コトにとっては、そのための旅でもあるからね」

「ありがとうございますっ! なんだか、ワガママ言っちゃってすみません」


 心音は表情を和らげる。安心したようなそれにシェルツは微笑み、早速行動に移すこととした。


「それじゃあ、フーリィの元を訪ねようか」


♪ ♪ ♪


『んー、たしかにそれはわーの判断だけじゃ案内できないなぁ。お父さん.......族長に相談してみよっか』


 フーリィの元を訪ねて重力魔法について聞いてみれば、やはりそう簡単に扱っていい件ではないらしい。それでも快く族長に取り次いでくれるのは、前例としてラネグのことがあったからであろう。


 族長に会うべく、フーリィに連れられ都市の中枢に位置する巨大な樹木へ向かう。近づいてみれば、樹木を囲むように螺旋階段が備え付けられており、上部には枝に支えられるように、いくつかの建物がまるで果実のように点在していた。


『これはまた、すごく独創的な建築方法だね』

『すごくファンタジー感ありますっ!』

『たしかに、幻想的って言葉が相応しいわね。基礎とかどうなってるのかしら』


 パーティの面々から飛び出した感想に、フーリィが可笑しそうに返す。


『ふふふ、創人族の人たちからみたらそんな風に映るんだ。高いところにあれば街中が見渡せて異常にすぐ気づけるし、不届き者も入りづらいからね!』

『建てるのは難しそうですけど、良いところもいっぱいあるんですね!』


 建築する上では多くの問題もあったのだろうが、そこには千年以上森の中で生活する森人族ならではの叡智が集結しているのだろう。

 芸術的とも言える光景の中、心音たちはフーリィの先導のもと螺旋状の階段を登っていく。


 その長大な長さに無視できない疲労が脚部に溜まってきた頃合、フーリィからの『着いたよ!』という声を受け登りきれば、広いテラスのような空間の奥に一際大きな家屋が枝に縫い付けられるように存在していた。


『あそこが、族長が執政をする屋敷なの。住居にもなってて、わーの部屋もあるよ!』

『え、それじゃあフーリィさんは毎日ここから昇り降りしてるんですか!?』

『ん? そーだよ? 森人族のみんなはこれくらい普通普通!』


 心音は息を切らしながら目を点にする。パーティ内では体力があるシェルツとヴェレスも疲労の色を浮かべてることから、やはり森人族は特別身体能力に秀でているようだ。


『それじゃあ、わーは族長にキミたちと会ってもらえないかお話してくるから、そこの椅子で待ってて!』


 座って休めるのは僥倖と、五人は安堵の息を漏らす。

 軽やかな足取りで屋敷に入っていくフーリィを見送り、ひと時の休息を噛み締めることとした。


いつもお読みいただきありがとうございます!

ブクマもいただけて、嬉しいです♪

今話から第二楽章スタートです!

そして……作品のタイトルにサブタイトルを付けてみました!いかがでしょう?

今後も続くコンチェルティーノの物語をお楽しみください♪

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