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恋するバレンタイン・キック  作者: 三ツ星真言
4/50

こうじもなきにしかず

「何も獲って喰おうと言ってるんじゃねえよ。

 カラオケにでも行こうと言ってるんだよ。」

「・・・・・・・」

「そう、そう。俺らと楽しく遊ぼうぜ。ボウリングでもいいよ。」

「・・・・・・」

 ブックオフの入り口近くの自動販売機がある場所で、

白昼堂々、見るからにチャラい高校生くらいの男二人が、

同じ年くらいの女の子に絡んでいた。ヤンキーっていうのかな。

たまたま、ピアスを開けていた方の男が僕と眼があったが、

『失せろ。ぶっ殺すぞ。』と言う無言の圧力をかけてきた。

『触らぬ神に祟りなし。でも、父親にバレたら、殺されるな。』

 悩んでいたその時、絡まれていた女の子と眼があった。

「遅いよ。」

「えええええええええ~」

 僕が驚く暇も与えず、その女の子は僕の背中に回り込んで来た。

 生まれて初めて女の子に背中に密着され、僕は慌てる。大慌てだ。

「何でえ~。連れがいたのか。」

「おい、お前、この女の子、貸せ。いいな。」

 有無を言わせず僕に迫る男たちに、正直、ションベンをちびる

くらいビビるけど、「はい、どうぞ。どうぞ。」などと、言えない。

好時不如無こうじもなきにしかず

 思わず、この言葉が出てしまった。

「はあっ、どこで工事やってるんだよ。」

「こいつ、馬鹿か。」

 二人は顔を見合わせて、ニヤケテいる。

「好事にたどりつくことは良いことである。しかし、そこに固執すると

よろしくない。「好事魔多し」という言葉もある。良いことがあっても

そこにとどまっていず、捨て去ることを旨とする。執着すると、煩悩や

妄想の種となるのだ。種は、いつしか・・・・」

 父親の受け売りを説こうとしていた僕にキレた男たちが、僕に無言で

襲い掛かってきた。確かに、難しいわな。

「キャア~」

 背中に密着していた女の子が悲鳴を上げた。

 自分のせいで僕がボコボコにされると思ったのだろう。

 普通、みんなそう思うと僕も思うわ。

 しかし、地面に倒れたのは、僕ではなかったんですよ。

 ピアスの男の大振りの右ストレートに対して、剛法、仁王拳の

内受突うちうけづきで水月に右拳を叩き込んだ。

「この野郎。」

 いかつい男の方が、思いっきり右足で僕の腹を蹴ってきた。

 まともに受けると、腕が折れる勢いだから、三合拳の十字受蹴じゅうじうけげり

体を引くように柔らかく捌いてから、水月に右足を蹴り込んだ。

 僕が使った技は空手ではない。少林寺拳法だ。幼い頃から、

仏教徒として父親に叩き込まれたものです。

「種はいつしか芽を出し、心の中にツタが絡みつくようになる。

 そうなってしまっては、除草が大変です。まずは、煩悩の種を

まかないことが大切です。」

 水月を抑えながらも、再度僕に襲い掛かろうとする二人に、

僕は御仏の慈悲を持って、全部説いた。

「こいつ、頭おかしいんじゃないか。こんな奴に、関わるのは

馬鹿々々しい。」

「そうそう。中2病かもよ。シケタわ。行こうぜ。」

 男たちは面白くなさそうに、自転車に二人乗りして、県道を

走り去って行った。

 


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