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恋するバレンタイン・キック  作者: 三ツ星真言
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型の分解組手

 新しく僕たちの空手部の顧問になった宇城校長先生は

何と空手の高段者であった。真っ白い年季が入った空手着と

ボロボロの黒帯姿が、良く似合う。

 挨拶で何となくそんな気がしていたのだが、僕的には

嬉しい。最初に僕たちの修得段階を見たいということで、

三つの型をやらされた。「三戦、内進歩、抜塞」だ。

 綯鹿、沙姫は俄然やる気を出して、がんばった。

 他のみんなも、最初が肝心と一生懸命やった。

「なるほど、なかなかよく学んでいる。」

「はい。ありがとうございます。」

 褒めてもらって、僕たちは嬉しい。

「しかし、型が固いままだ。型に隠された裏技、真の技が

わかっていないように思える。え~と、駆磨君だったか、

ちょっと私の中段を諸手で攻撃してくれたまえ。遠慮は

いらない。思いっきり、来なさい。」

 そこまで言われたら、やるっきゃない。僕は攻撃した瞬間、

冷や汗をかくはめになった。

 校長先生が、三戦の中割れで防御して、すかさず、裏拳で

僕の顔面を寸止めしたんだ。このまま当たっていたら、僕の

顔面骨折はさけられないほどのタイミングと速さと破壊力だ。

「このように、意味がある。今度は、私が攻撃するから、

やってみなさい。」

「はい。」

 校長先生が諸手突きで攻撃してきたので、中割れで防御し、

裏拳で反撃しようとした瞬間、逆に諸手受けで防御され、

中段に突きを寸止めされた。このまま、当たっていたら、

どうなるか考えただけで、ゾウ~ッとする。

「このように、三戦の中割れの真の意味も知らず、また力だけに

頼っているようでは、身に付いてないことになる。

 基礎がしっかり身に付いていないと、次の応用技にも進めない。

 今度は、好きに突いてくれ。」

「はい。」

 僕は、嬉しくてたまらない。この先生は、本物だ。僕の父親と

同じ匂いがプンプンする。

 今度は、僕の中段突きを中割れの応用として、左手で受け、

右手で首に攻防一体の攻撃を寸止めした。

「そして、これが投げにもなる。」

 校長先生は、右手を僕の首にまきつけるようにして、ふんわりと

投げた。

「はい、ご苦労さん。これからは型の分解組手を教えよう。

 これをやることで、君たちの型が形となり術と進化する。

 型はそのままでは、確かに過去の遺物、カビが生えた物とか

踊りと誤解されてしまう。女子のみんな、そう心配しなくていいから。

自由組手をやらすつもりはないから、安心して下さい。」

 その声に、始めて見た本物の空手のど迫力に顔面真っ青になっていた

女子の三人組は、安心する。紅樂なんか、唇まで真っ青だったもんな。

 その日は、徹底的に「三戦」の各技の分解組手、表、裏、変化、

応用を二人組でやらされた。

「校長先生、空手が、こんなにも面白い物とは初めて知りました。

 ありがとうございます。」

 空手は礼に始まり、礼に終わる。

 みんなで、きちんと礼をして、終わった後、僕は校長先生に駆け寄った。

「そう言ってもらえると、嬉しいよ。駆磨君、君、何か他の武道を

やってるね。」

「はい、父親から少林寺拳法を仕込まれています。」

「道理で、動きに切れがあり、呑み込みが早いはずだ。これからも、

宜しく頼むよ。キャプテン。」

「はい。」

 僕は思わず返事をしてしまった。考えてみれば、三年生男子は

僕だけだ。去年は羅王君だっただけに、責任重大だけど、俄然

やる気が燃え上がる。

 それだけではない。自分がまだまだお子ちゃまだということも、

再認識した。空手の型だけでなく、物事の表しか見なかった自分を

恥じ、これからは裏に隠された真実を見つめて行こうと思ったりして。

 ちょっと、恰好つけすぎたかな。とにかく、中学三年生だから、

何事も頑張ろうと思った。




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