イオンの沖縄フェア
一月は行く、二月は逃げる、三月は去るとはよく
言ったもので、あっという間に修了式も終わり、
春休みに入った。
そして、3月28日、日曜日になった。
僕は、父親と蝶塚市のイオンモールに買い出しに
行くことを、正直、迷った。季久美さんに逢いたいのは
やまやまだが、あの鬼のような絵里香さんがトラウマに
なっている。
「おい、無理しなくてもいいぞ。私、一人で大丈夫だ。」
そんな僕の心を見透かして、父親は言ってくれるが、
そこで、「はい。」と言うようでは、男がスタル。
僕にも、意地がある。
「行きます。絶対に、行きます。」
僕は、立ち向かうことに決めた。これから先、長い人生、
月に2回、その度に迷うなんて、男として、人間として
ダメだ。もし、絵里香さんに会ったら、逃げずに、きちんと
理由を教えてもらおう。
僕は弱いことを認める。だから、強くならなくっちゃ。
いつも通り、買い物をすませて、屋上の駐車場の車に、
荷物を積み込んだ後、自由時間となった。
「おい、未来書房で待ってろよ。」
「はい。」
僕は、父親にそう答えたものの、どこへ行こうか、悩んだ。
「ブックオフだけは、止めておこう。でも、どこへ行こうか、
悩むな。」
その時、館内放送が聞こえてきた。
「みなさん、只今、一階、特設広場にて、沖縄フェアを
開催しております。皆様のお越しをお待ちしております。」
「沖縄か。行ったことないよな。社会の授業で習ったけど、
コバルトブルーの海って、あこがれるよな。」
僕が住んでいる猪鹿町は、周りは山ばかり、海はない。
僕らの住む県自体が、海なし県だから、当然だ。
僕は、一階に足を運んだ。行って、ビックリ。会場狭しと
並べられているお菓子や食料品、民芸品、アクセサリー、
すべてが色彩鮮やかだ。BGMも、南国調で、ムードある。
お店の店員さんは、どうも夫婦らしく、ハーフっぽい色白の
美人と彫りが深く濃い顔のイケメンの二人だった。
僕はウキウキと見て回ると、神社にある狛犬に似た置物が
置いてあるのを見つけた。よく見ると、狛犬と同じで、口が
「阿」と「吽」がある。
「面白い。仁王像も「阿」と「吽」があるしな。」
来てよかった。異文化に触れることで、視野が広がるぞ。
「これ、何だろう。 ドーナツのようで、ドーナツでない。」
僕がじっと考え込んでいると、横から爪楊枝に差してある
小さく切った試供品に手が伸びて、パクッと口に入れる人が
いた。僕も、右に習えと、その未知なる物を口に入れた。
「甘くて、美味しい。ドーナツより、軽い食感だ。」
僕が、思わず呟くと、横の人が笑った。
「元気そうだね。」
その人を見た瞬間、僕は心臓が止まる思いだった。
いや、実際に、数秒間、止まったかもしれない。
季久美さんだった・・・・。




