人の噂も七十五日だけど
人の噂も七十五日。
町の噂も日常の生活の慌ただしさでか、3月になり、春への準備で
忙しいのか、すっかりおさまったみたい。僕としては有り難いが、
その件について、下校途中、山田さんに出くわしても、挨拶だけで、
何も言われなかったことが、不思議だった。家でも、父親から何も
聞かれなかったこと、注意を受けなかったことが、不気味だった。
「僕のことを、それだけ信じてくれているんですよね。」と、僕は
寺の境内の観音菩薩像に語り掛けたが、当然、答えは帰ってこない。
でも、僕には、観音菩薩像が笑ったように見えたので、勝手に
そう思うことにした。
そして、卒業式を迎えた。落窪先生の司会で、式次第に沿って、
厳かに進み、最後の全校生徒による式歌となった。今年は、三年生
男子の希望で、あの米津玄師の「飛燕」だったんだね。一年の時は、
アンジェラ・アキの「手紙~拝啓 十五の君へ~」で、去年は、
いきものがかりのの『YELL /エール』。
声変わりも十分終わっていない男子には、聞く分にはすごくお気に
入りでも、歌う分には、高音の歌はかなりきびしく辛かったらしい。
今年こそは、自分たちの歌いたい曲、歌いやすい曲を選んだみたいだ。
僕も、その選択、ナイスだと思い、乃木先生のピアノ演奏で、心を込めて
歌ったよ。とにかく、みんなの御蔭で涙、涙の感動の卒業式で終わった。
三年生の担任の黒木先生、存在感の薄い先生だったけど、この日ばかりは
号泣していた。一年生担任の奥村先生だけは、無表情だった。
高校受験は、本人たちの日頃の努力が物を言うので、僕たちには、
どうすることもできないよね。
暫く平穏無事な生活が進んだが、学校では相変わらず、紅樂の
僕に対する態度は変わらなかった。全校生徒で受ける体育、音楽、
美術、技術・家庭の授業は、ちょっと気まずいかな。
クラスの中では、女子二人の僕に対する態度はかなり、微妙。
紅樂に対する同盟、協力行為はないんだけど、僕を異性として
意識するようになったというか、男として見るように変わって来た。
年頃の女の子がそんなものなのか、僕自身が二人の言うように
変わったのかどうかは、神のみぞ知るってもんだよ、まったく。
そして、いよいよ、3月14日、ホワイトデーの日がやって来た。
そう、日曜日、蝶塚市に父親と買い出しに行くんだ。




