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実験

「お前達には、これから俺の実験台になってもらう」


 俺の訓練という名のシゴキの結果、散々走り回った俺たちは人目のない山の中へとやってきた。

 こいつら子供のくせに体力が異常だ。

 俺もこの体じゃなければ、とっくにダウンしてたわ。


「実験、ですか」


「そう、実験だ」


 俺の提案に、万千代が首を傾げる。

 俺のスキルの能力は、未だはっきりしていない部分が多い。

 そこで、こいつらを対象に色々と試してみようと走りながら考えたのだ。


「じ、実験って、いったい何をするんですか?」


 勝三郎が、心配そうにこちらを見つめる。


「なぁに、大したことはしねぇよ。多分」


「不安だ……」


 勝三郎の顔が少し青い。

 ごっつい図体して、肝の小さな奴だ。


「若、なんでもいいからさ、早く始めましょうよ!」


 待つのに飽きたのだろうか、犬千代が早く早くとせかしてくる。


「よし、そこまで言うならまずは犬千代から試してやろう」


 今日これからやる実験は、神聖魔法の≪支援≫のスキルだ。

 現在俺の信仰ポイントは257P。

 昨日と今日、コツコツと貯めたおかげで大分集まった。


 この2日間で分かったことがいくつかある。

 先ずは信仰ポイントの集め方だ。

 これは俺との距離が約3メートル以内にいる人間で、俺に意識を一定以上向けた人間からポイントを自動的に集める仕組みらしい。

 つまり相手からポイントを回収するためには、俺と話す、俺に注目する、俺を拝むなどの行為を相手がしていなければいけないと言う事だ。

 ポイントを回収しても、相手の信仰度が減ることは無い。

 そして同じ相手でも、約1日経てば再び回収できるらしい。

 ポイントの回収方法にはまだルールがある気がするが、一先ず分かっているのはこれくらいだろうか。


 次は、【信仰度確認】をした結果だな。

 先ずは【信仰度確認】の視認距離だが、これは≪発光≫のスキルと連動していることが分かった。

 つまり、≪発光≫による輝きが強ければ強い程、【信仰度確認】の視認距離も伸びていくらしい。

 この実験のために物陰に隠れながら女中たちをずっと視認し続けることになった。

 かなり怪しかっただろうが、誰にも見られないよう気を付けたから大丈夫なはず。

 もしかしたら信仰ポイントの回収距離も≪発光≫の強弱に関連する可能性があるが、今は周りにバレる訳にはいかないため調べるのは別の機会にしておこう。


 あとは信仰度の数値の基準か。

 青の数値しか確認できていないが、

1桁P:悪感情

10P台:可もなく不可もなく

20P台:好印象

30P台:尊敬、恋慕、親愛

40P台:崇拝

 と言ったところだろうか。

 屋敷の使用人たちはほとんどが10P前後。

 吉法師、嫡男のくせに人気無さ過ぎだろ。

 親父と爺さんのポイントが高い事が唯一の救いだな。



 さて今日行う実験は、まずは≪支援≫の効果の確認だ。

 それともう一つの信仰度である白ポイントの発生条件の確認だな。

 あれから白ポイントは爺さんにしか現れていない。

 これら2点をこいつら三人で試してみようと思う。

 能力をバラすことになるが、いつも身近にいる奴らには知っておいてもらった方が何かと動きやすいから丁度いいだろう。

 それにこれだけ青ポイントが高ければ、俺を裏切る事もそうそう無いだろうしな。



「じゃぁ犬千代、今からお前に目が良くなるまじないを掛けてやる。ワシが良いと言うまで目を閉じておけ」


「はーい!」


 俺の言う通り、ギュッと両目を瞑る犬千代。

 素直で可愛いな。


「勝三郎と万千代は、俺が良いと言うまでそこで決して口を開くな。良いな?」


 俺の指示に勝三郎たちも息を呑みつつ頷く。


「では行くぞ」



ーー≪支援≫ーー



 スキルを念じると、俺から光が犬千代へと流れる。

 いきなりの現象に、万千代と勝三郎が目を見開いている。

 今犬千代には、視力の強化をイメージして≪支援≫のスキルを掛けた。

 この状態ではまだ3人とも表示は青のままだ。


「よし。じゃぁ犬千代、目をゆっくりと開けてみろ」


 俺に言われた通り、ゆっくりと目を開く犬千代。

 そして――


「うわっ!!」


 急な視界の変化に驚いたのか、思わず尻もちをつく犬千代。

 

「犬千代、どうだ?」


「すごい……すごいですよ若! 遠くまではっきりと見える! まるで世界が広がったみたいだ!!」


 嬉しそうにはしゃぐ犬千代。キラキラとした目でこちらを見てくる。

 あ、犬千代の青ポイントが少し上がった。


 万千代たちは俺に何か問いたそうにしているが、俺の指示を実直に守ってこちらを窺うに留めている。 まだ3人の表示に白ポイントは現れていない。

 ふむ、スキルを認識しただけでは白ポイントは出現せずか。

 よし、では次だ。


 勝三郎と万千代のそれぞれの耳元で、別々の言葉を囁いてやる。

 先ず万千代には「実は木から落ちた時、不思議な力を手に入れたんだ」と。

 そして勝三郎には「実は木から落ちた時、神からこの力を頂いたんだ」と。


 すると勝三郎にのみ、白ポイントが表示された。

 ふむ、白ポイントの表示条件は『神』か……

 自分で神という存在にたどり着いた場合はどうなんだろう。

 ちょっと試してみよう。


「よし、じゃぁ二人とももう喋って良いぞ」


「「……」」


 話す許可を出すも、二人とも黙りこくって喋ろうとしない。いきなりの展開に、何と言っていいのか分からないのだろう。


「どうした二人とも黙り込んで。まあいい。なぁ万千代、この力どう思う?」


「どうと聞かれましても……ただ凄いとしか」


「そうだな、ワシもそう思う。して万千代よ、この力、誰がワシに授けたと思う?」


 万千代は俺の問いに悩みつつも、徐に口を開く。


「そう……ですね。先ほどの光をみるに、神か仏の類でしょうか」


 うん、流石万千代。俺の欲しい言葉を言ってくれる。

 今万千代が神と言う言葉を口にしたが、彼にはまだ白表示が出ていない。


「では勝三郎。ワシが先ほどお前に伝えた言葉を、今度は万千代に伝えてやってくれ」


 未だ状況が呑み込めてないのであろう勝三郎も、俺に指示され乾いた唇を動かした。


「万千代、若のあの力は、神から授かったものらしい」


 すると、万千代の頭の上にも白いポイント表示が現れた。


「よーし、二人ともご苦労。実験は成功だ。楽にしていいぞ」


 俺にそう言われ、緊張が解けたんだろうか。

 その場に二人とも座り込んでしまった。

 やれやれ、これは説明に苦労しそうだ。


 俺の心配をよそに、後ろからは犬千代の楽しそうにはしゃぐ声が聞こえてきた。

 この二人にもスキルを掛けてやったら、一体どんな反応をするんだろう。

 すこし楽しみだ。


三バカ 白 0P→20P



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