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初陣を終えて

1546年(天文15年) 10月中旬 美濃国 織田信長


 勝った。

 終わってみればあっけなかった。

 負けることはまずないとは思っていたけど、ここまで圧勝とは。


 今回は色々と条件も良かった。

 先ずは敵が固まっていたこと。

 固まり亀の様に籠ってくれていたからこそ、あれだけ狙い打てた。

 あれが散開していたら、もっと苦戦しただろう。


 あとは敵の遠距離攻撃の射程。

 今使われている弓の殺傷可能範囲は大体一町(百メートル)くらい。

 二町になるとほとんど届かないか、届いても大した脅威ではない。

 これが山地で高所から打たれたりしたらまた話は変わってくるけど、今回は平地だ。

 横は崖だし、平地で敵の攻撃が届かないところから攻撃できた。


 攻撃を始めた時、敵は先ず動揺した。

 この時代まだ日本ではスリングなどはほとんど見かけない。

 忍は使うこともあるようだけど、戦ではあまり見たことは無いらしい。

 ガキの抗争では石を投げ合うこともあるようだけど。

 そのイメージが強くて避けられているのかな?


 迅雷隊が投げつけたのは、拳大ほどの石だ。

 それが時速百キロ以上でビュンビュン飛んでくる。

 まともにぶつかれば普通に骨は余裕で折れるだろうし、当たり所が悪ければ死ぬ。

 そりゃ恐いわ。


 その後敵も立て直して迫ってきたが、そこへ槍を投げさせた。

 地面に平行に真っすぐ槍が飛び、人を貫きあわよくば後ろの奴も巻き込む。

 そこでまた敵の足が止まった。


 そしてダメ押しで、人の頭より大きな岩を山なりに投げつけた。

 これをする奴らには≪支援≫三段階目を掛けている。

 体の制御は全くおぼつかないため精密さは欠片も無いが、ただ斜め上方に投げるくらいなら問題ない。

 岩が降ってくるんだ。それで敵はほとんど沈黙してくれた。

 最後はみんなで降伏を呼びかけ地面に伏せさせ、敵将を狙いやすくさせた。

 

 そうそう。今回の主犯が誰なのか知りたかった俺は、敵が逃げ出さない様半蔵に足止めできないか尋ねたんだ。

 半蔵達ならうまい事敵を足止めくらいは出来るかなと思ってさ。

 そしたら半蔵が“分かり申した”とか言って飛び出していってしまったんだ。

 何をし出すのかと思っていたら、半蔵はそのまま敵陣の横まで移動し、崖をそのまま走り出した。

 

 俺は口を開けながらそれを見ていたんだけど、半蔵はそのまま敵後方に消えてく。

 そして敵後方が騒めき始め、時々敵兵が上方へ放り投げだされたりしていた。

 要は半蔵が、自分で暴れて足止めをしてくれたらしい。

 バカかよ。


 結局俺の要望通りに敵は足止めされ、敵兵が皆伏せてくれたので、丸裸になった敵将の馬を槍で射させてこの戦は終わりだ。

 

 最高の結果になったわけだけど、一言だけ言わせて欲しい。

 半蔵よ。

 次回からは忍びらしくもっとスマートにお願いします。



 

1546年(天文15年) 10月中旬 美濃国 山間の谷 織田信長

 

 俺は敵兵に武装を順次解除させ、丸腰になった奴から≪回復≫を掛けていくつもりだった。

 しかし久秀がそれに難色を示し俺に言う。


「若、いくら何でもそれは甘すぎるのではありませぬか? 敵は我らに牙を剥いたのです。これは自業自得という物でありましょう」


「確かに戦に臨む以上、負傷や死は覚悟せねばならん。しかしそれは武士たちの言い分ぞ。こやつらは本当に自らこの戦に臨んでおったと思うか?」


「それは……」


 俺の言葉に久秀は口ごもる。


「それにの、久秀。こやつらはすでに戦意を失くし、武器を捨てておる。ならば最早兵ではなく、ただの民じゃ。民であるならば、それは我ら武士が守るべき存在ではないのか?」


「若……」


 俺の言葉に、久秀が感動し言葉もない様子。

 周りで聞いていた敵兵たちも、感激し涙を流す奴までいる。

 青ポイント急上昇でございます。

 

 それに正直言うと、こいつらはいずれ俺の治める土地に住まう民となる。

 それをここで助けると言う事は、それだけ土地の生産能力が上昇すると言う事。

 ここで見捨てるなんてもったいない事する訳がないじゃないか!


 兄貴や覆面男辺りは俺の本音が分かっているのか、後ろでニヤニヤしている。

 ほんとあんたら似てるのな。


「久秀、長秀。分かったのならさっさと怪我人を集めろ! 迅雷隊も使い、瀕死の奴らから集めるのだぞ。敵であった者たちにも、手を貸す様に伝えよ!」


「「はっ」」


 俺の指示に皆が動き出す。

 俺はそれを横目で見つつ、帰ってきた半蔵にも指示を出す。


「半蔵。敵将を一まとめにしておけ。もちろん武装も解除させよ。抗うようであれば、少々手荒な真似をしてもかまわん」


「御意」


 半蔵が嬉しそうにしながら答える。

 返り血で真っ赤じゃねぇか。

 彼は徐々に忍の本分を忘れている様だ。


 俺は連れてこられた兵を次々に≪回復≫していく。

 かなり手ひどくやられ、色々とグチャグチャの奴らもいたけど、俺のスキルの力にかかれば何の問題も無い。

 死んだと思われていた奴らも、何人かはその息を吹き返す者まで居た。

 目の前で起こった有り得ない光景に、人々の騒めきが徐々に大きくなる。

 ここが稼ぎ時かな?


「皆の者静まれ! 今目の前で起こっておる奇跡は、全て理大御神ことわりのかみ様より授かった力の賜物じゃ。皆が心を一つにし、真に世の平和を願うのであれば、この力はお主たち民全てを守る盾となろうぞ!」


 俺の突然の叫びに、場が静寂に包まれる。

 そして――


「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」


 戦の余韻のせいか。はたまた絶望からの奇跡を見たためか。

 皆のボルテージが一気に上がり爆発した。

 白ポイント、ごちそうさまでございます。


 皆が盛り上がっている中、他とは違い、こちらを睨みつける集団があった。

 廻りには半蔵達が鋭い視線を送りながら見張っている。

 さてさて、最後の仕上げといきましょうか。

 

 


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