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悪だくみ

コトワリ様→理大御神ことわりのおおみかみに変更しました。

精鋭隊→迅雷隊に決定しました。

ご意見ありがとうございました!

1546年(天文15年) 六月 那古野城 織田信長


 親父に色々と秘密を打ち明けた後、俺たちはこれからの事について話し合った。

 先ずは史実で起こったことを、粗方親父に教える。

 すると親父はしばらく考えた後、「ふむ、道三と和睦か……」と呟く。

 そして、


「のう信長よ。その力、何故公にせぬ?」


と尋ねてきた。


「え? 何故と言われても……公にしてしまうと、神社や寺の者たちがうるさくなるのではないか? わざわざ敵対する必要もないと思うたのじゃが……」


「ふむ。何故公にすることが敵対することになる? お主の掲げる理大御神ことわりのおおみかみとやらは、他の神を否定しておるのか?」


「いや、そういう訳ではないが……」


「であろう。ならば余り心配する必要はあるまい。熱田神宮にしても他の神社にしても、恐れているのは権威の低下じゃ。権威が下がることで人が寄り付かなくなり、その結果銭が集まらなくなる。であれば、そこのところを上手い事してやればよい」


「なるほど……」


 結局のところ銭、か。なんとも親父らしい、現実的な考えだ。

 まぁでもそれは間違いではないのだろう。

 どうやったら上手く纏まるかな?


「熱田には草薙御剣くさなぎのみつるぎが御神体として祀られておる。草薙御剣は倭健命ヤマトタケルノミコトを守護したと言う事で神器として祀られた物じゃ。そして理大御神は全てのことわりを司るのであろう。であれば、理大御神は倭健命の親の様な物だ。親が子に小遣いをやるのは別におかしなことではあるまい?」


 親父が悪い顔をしながら話す。

 うわー、考えが黒すぎる。

 襖の向こうから、半蔵の笑う声が聞こえる。

 あいつもこういう話し好きそうだもんな。話に入りたいのかもしれない。


「まぁその辺りは儂に任せておけ。あとは寺だが、どうせお前の記憶では石山本願寺と敵対したのであろう。ならばもう放っておけばよかろうて」


 なんとも投げやりな意見をもらいました。 

 でもまぁ寺を気にして身動き取れなくするよりは、開き直った方がいいのかな。親父に言われると、その方が良いような気がしてきた。

 ……なんか、悪魔に囁かれている様な気がする。


「くっくっく。不安か、信長」


 俺の心を見透かしたように尋ねてくる親父。


「う、うん。少し」


「まぁ先のことなど誰にも分からぬわ。ならこれと決めて動くしかなかろう。なぁに心配するな。無理がきたら、儂が盾になってやる。安心いたせ」


 うわー、かっけぇー。

 あー……もういいかな。確かに開き直った方が、色々出来て楽かもしれない。

 うーん。今まで色々な不安材料を回避するようにして動いてきたから、こういうちょっとした博打みたいな生き方をするのに、すごく勇気がいる。

 まぁ親父がここまで言ってくれたんだ。親父の意見に従うか。


「わかった。頑張って開き直ってみる」


「くっくっく。頑張って開き直る、か。変な言葉じゃのう。なに、難しく考えることは無い。要は楽しんだら良いのだ」


「楽しむ……」


「そうじゃ。この世は楽しんだもの勝ちぞ。苦しんで生きるのなぞ、僧に任せておけばよい。儂らはこの世を楽しむ。それでいいではないか」


「楽しむ、か」


「ま、その辺りは追々自分で答えを見つけよ。さて、力を公にするのであれば、色々と話が変わってくる。先ずは美濃の道三じゃな。儂はな、あ奴と同盟を結ぼうかと思うておる」


 ……まじか。いきなり歴史変わんじゃねぇか。


「……大丈夫なのか?」


「だからそう不安そうな顔をするなて。確かに美濃は広大で肥沃な土地を持つ。しかし道三は無理な下克上をしたせいで、中にも外にも敵が多い。今儂の方から同盟を持ち掛けてやれば、喜んで手を取ってくるぞ」


 むぅ。確かにそうかもしれん。史実では親父がコテンパンにやられた後、こちらから同盟を持ち掛けた。今はまだ負けておらず、寧ろ2年前の戦で親父は道三に勝っている。

 案外すんなり同盟の話は進むかもしれない。


「幸い、前回の和睦の際に、お主と道三の娘の婚約の話が出ておるからの。それを固めてしまえばよかろう」


「うっ、そう言えばそうであったな。どうせ一度流れると思うて忘れておった」


「かっか、お主ももう元服した武士なのだ。女の一人くらい抱いておけ」


「前世では抱いたことくらいあるぞ。……たぶん」


「くっくっく」


 くっそー。ちゃんと覚えてないけど、多分あると思う……んだけどなぁ。

 外で半蔵も笑っている。あとで覚えとけよ。

 まぁそれはいいや。


「では帰蝶を迎え、道三と同盟を纏めるのだな?」


「うむ。だがお主のうつけの噂がまだまだ尾を引いておるからのぉ。うつけと結婚させると言われても、向こうもこちらの心内を疑うだけであろう。じゃからお主は一度、道三の所に行ってまいれ」


「え」


「心配せんでも、お膳立てはこちらで済ませてやる。お主は行って帰ってくるだけじゃ」


 いやいやいや、それ絶対違うだろう。

 だって相手はあの美濃にマムシだぜ? 俺人質に取られたりしないかな……


「心配せんでも大丈夫じゃて。何の為に力を公にすると思うておる。例えもし何かあったとしても、その力を全力で使えば、死地の一つや二つどうとでもなるであろうに」


「むぅ、そう、だろうか」


「ふんっ、不安か。それはつまり半蔵達を疑うておると言う事か?」


「いや、そういう訳では決してない。が……」


「ウジウジする出ないわっ! お主は半蔵達の力を知っておるのであろう。であれば、奴らに身を任せろ。それが信じると言うことであるぞ」


「なるほど……」


 俺が自信を持てないのは、結局の所、半蔵達を信じてなかったということになるのか。


「……わかった。半蔵、入ってこい」


「はっ」


 半蔵が襖を開け、膝を付き頭を垂れる


「半蔵よ、すまぬ。儂はお主らを重用したつもりでおっても、信じ切れてはおらなんだらしい。しかし儂は決めたぞ。儂の命、お主たちに預ける。任してもよいか?」


「わが命に代えても、お守りいたします」


 いつも感情豊かな半蔵が、力強く答えてくれる。


「そうか。頼もしいな。……親父と言い半蔵と言い、儂の周りには頼もしい者がたくさんおる。今日初めてそれを知ったぞ」


 俺の言葉に、半蔵が笑い、親父が気まずそう頬を赤らめ顔を背ける。


「今頃気付いたか。どんなに力があろうとも、お主は儂の息子だ。それを忘れるでないぞ」


「うむ、そうじゃの。親父も儂は息子なのだから、体調が悪うなったら何時でも言ってよいぞ。ただで治してやるからな」


「かっかっか、この戯けが。……と言いたい所だが、早速頼むとしようかの。実は最近、腰が痛うて敵わんのじゃ」


「親父よ、それは夜遊びが過ぎるからではないのか? 儂の兄弟、いったい何人おると思うておる。元気になってまた増やされたら叶わんぞ」


「む、そこを何とか頼んでおるのではないか。儂は親父ぞ。息子よ、孝行いたせ」


「儂は孝行息子じゃからな。親父の400年後の評判を心配してやっておるのだ。我慢しろ」

 

 俺たちのやりとりに、半蔵が笑う。

 それにつられて、俺と親父も笑い出す。

 親父の部屋に、三人の笑い声が広がっていった。

 道三との会見か。腹を据えて頑張るとしようかね。


親父に全てを話したせいか、話し方に主人公の地が出始めました。

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