ステータス
1544年(天文13年)4月 那古野城
自分の両手が仄かに発光している。
えーっと、これは一体……
「やはり爺の見間違いではござらんかったか。若を愛するがあまり、後光が射して見える様になったのかと思うておりましたが……これは一体……」
爺さんがなんか言っているが、俺はそれどころじゃない。
え、この光は一体何なの?
ただの逆行転生だと思っていたけど、実はファンタジー転生だったとか?
えーっと、ステータスとか出てくんのかな?
「ッ!!?」
俺がステータスと念じた瞬間、目の前に現れる一冊の本。
白い革表紙に金の装飾が僅かに施されていて、上品でありかつ華美ではない神々しさを感じさせる。
「若! その本は一体なんですかな!? 一体どこに隠し持っていたのですか!」
突然の本の登場に慌てふためく爺さん。
「爺よ、少しの時間だけ黙っていてはくれぬか」
俺もよく分かっていないんだ。周りでごちゃごちゃ言われてはかなわん。
爺さんも俺にそう言われてしまっては仕方が無いと、渋々黙って俺の横に座りなおした。
えーっと、とりあえずこの本から中を確認してみよう。
先ず一ページ目。
スキル
【神聖魔法】
≪発光≫≪浄化≫≪回復≫≪支援≫
【信仰度確認】
【眷属化】(規定信仰ポイント不足)
【社作成】(規定信仰ポイント不足)
信仰ポイント:40P
うん、すげーファンタジー。しかも神官系のやつだ。
どうしよう、織田信長のイメージに全然合致してねぇよ。
で、次のページはっと……開かない。
え、なにこれ、こんな分厚い本なのに1ページ目で終わり?
う~ん、よく分からん。
まぁ分からんことを考えても仕方が無いか。次行こう。
信仰ポイントってのが最後に書いてあるけど、これは何だろう。普通は俺が何かの神様を信仰した際に溜まるポイントだよな。いや、逆に俺が信仰されることによって溜まるってこともあり得るのか? 中途半端に40Pってのも気になる。俺を信仰してそうな人って言うと……
俺が顔をあげると、キョトンとした顔で俺を見つめる爺さん。
あぁ目の前に一人いたわ。まずはこの爺さんで【信仰度確認】を試してみよう。
でもどうやったらいいんだろう。またさっきのステータスみたいに念じればいいのかな?
(進行度確認)
心の中でスキルを念じてみる。すると爺さんの頭の上に40Pという数字が。
シ、シュールだ。なんか、ゲームのアバターのアイコンみたいにぽつんと数字が表示されている。
うん、やっぱりこの信仰ポイントは、俺が誰かに信仰された際のポイントってことなんだろう。
えーっと次は、【神聖魔法】かな。戦国時代に魔法て。まぁ気にしたら負けか。
先ずはこの≪発光≫か。多分今俺が光ってるのがこのスキルのせいなんだろう。
これ消したりできるのかな。また念じてみるか。
消えろ~、消えろ~、光よ消えろ~。
すると徐々に発光が薄まってきた。でも完全に消すことは出来ないみたいだ。パッシブスキルか。
逆に強くしたりできるのかな。
光れ~、光れ~、俺の体よ光れ~。
先ほど薄まった光が、段々と強く発光しだし、思わず目を瞑ってしまう。
こりゃいかん、普通、普通の光でお願いします。
「若! 先ほどの眩い光はなんですか! お体に異常はありませぬか??」
俺がいきなり強く発光しだしたのをみて、爺さんが慌てて俺の体を調べ出す。
「あぁ、驚かせて済まぬ。俺は何ともないから。な、なんともないってば!! ちょ、どこ触ってんすか!!」
勢い余って俺の体の隅々まで調べようとする爺さんを振りほどく。振りほどかれて少し残念そうな顔をする爺さん。やべぇ、この爺さんまじやべえよ。
っと、それはいいとしてだ。とりあえず発光については分かった。さっき爺さんが後光が射して見えるとか言ってたから、これを使って信仰心を集めるための助けにすればいいってことだな。
この時代、神や仏とか神罰とか異様に畏れ、信じられていたらしいし、後光が射す人間とか見た日には、勝手に敬ってくれるだろう。
よし、じゃぁ次のスキルを調べてみますか。