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転生

一人称

1544年(天文13年)4月 那古野城


 頭が痛い。なんか体中がだるい気がする。っていうか、地面が固い。また飲み過ぎで床に寝てしまったんだろうか。あぁ、これは仕事で地獄を見そうだ……。

 ……あれ、俺ってば何の仕事してたっけ? ていうか昨日って俺酒飲んだっけ? ていうか、昨日どころか最近の記憶がメチャクチャあやふやだ。え、ナニコレ。えーっと、俺の名前は、名前は……


「名前が分からん!?」 


「っ! 若っ、お目覚めになりましたか! 良かった、本当に良かった……」


 自分の名前が分からないという異常事態に飛び起きてみれば、見知らぬ老人がおいおいと泣きながら縋りついてきた。


「えぇっと、あなたはどなた?」


 訳の分からない展開について行けず、つい思ったことを口にしてしまう。すると、老人は見る見る内に顔を真っ青にしてしまった。


「なんと……爺めのことをお忘れですか?」


 不安げな顔で俺の顔を除いてくる老人。

 いや、爺さんにそんな可愛い顔されてもあんま嬉しくねぇから。

 なんと答えた物かと考え、ふと爺さんから視線を外す。今いる部屋は古びた和風の一室で、爺さんの来ている物もまるで大河ドラマで見る武士のような出で立ち。

 

 えーっと、ここは忍者村か何かだろうか。それにしても、爺さんの演技が迫真に迫り過ぎている様な。


「残念ながら、記憶が混乱している様で……ちなみにここはどこなんでしょう?」


「なんと! この場所が分からぬと申されますか! やはり落ちた際に頭を強く打たれたのじゃ……ここは尾張の国の那古野城にござります。織田家の嫡男であるあなた様の城ではございませぬか」


 え、尾張? 那古野城? って言うか俺の城って言った?

 突然の情報に混乱しつつ、ふと自分の体を見渡す。日に焼けた若々しい肌、少し硬い手のひら、つるつるとした自分の顔の感触。

 ……えっと、これは俺の体じゃなさそうだ。

 年齢は思い出せないけど、仕事を始めて結構立ってたはずだし、仕事も確かデスクワークだったはず。そう、ちょっと思い出したぞ。結婚はしてなかったから、多分20代くらいだったと思うんだが……まぁ深く考えるのはよそう。傷つきそうだ。


 兎に角、俺の体はこんな健康そうな体じゃなかったし、若々しくもなかった。それにこの体かなり小さいし。年齢一桁代なんじゃねぇか?

 ってそれはいいとしてだ。尾張の那古野城で主で織田家の嫡男、ってことは……


「吉法師?」


「おぉ! 思い出してくださりましたか。そうです、あなた様は織田家当主、織田信秀様のご嫡男、吉法師様にござります。はぁ、安心いたしました。もし記憶がなくなったなどという話になれば、爺は腹を切って殿に詫びねばなりませなんだ故」


「え」


 重い重い。なにこの爺さん。記憶を失くしたぐらいで腹切りて。ん? 信長、爺さん、腹切り……もしかしてこの人――


「平手政秀?」


「左様、若の傅役である爺の名前を忘れるなど、些か酷うござりまするぞ。爺はこんなにも若の事を愛しておるというのに……」


「えぇ……」


 重いっていうか怖ぇよ。平手政秀って確か、信長のうつけ振りがあまりに酷いからって、自害して諫めたんじゃなかったっけ? あぁ、この重さならあり得るかも。


「まぁそれはさておき。目が覚めたのであれば、早速医者を呼びに行かねばなりませぬな。若、今医者を呼びに行かせますので、少々お待ちくだされ」


 そう言って立ち上がり、ふすまに手を掛けようとする爺さん。

 ってやばい、状況は何にも好転してないじゃないか。


「ちょっと待った!!」


「ん? いかがされ申した?」


「あ、いや、えーっと」


 どうする俺。方針が決まらないまま状況が進むのはちょっとやばい気がする。でも引き留めたは良いけど、ここで引き延ばすのはあまりに不自然過ぎる。正直に俺が吉法師じゃないと伝えるか? いや、そんなことしたらこの信長狂いの爺さんに殺されかねない。うーむ、何かいい方法は……


 俺がうんうんと唸っていると、爺さんの方から声を掛けてきた。


「若、先ほどから少し気になっていたのですが、もしや若、少し光ってはおりませぬか?」


 ん? 何言ってんだこの爺さん。信長好きすぎるからって、光って見えるってやばいだろ。

 爺さんに言われて俺も自分の両手を一応確認する。ってあれ?


「え、俺、何か光ってね?」


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