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1月③ 奇跡

 ナナと聡吾の周辺は宇宙警察が日本の警察の振りをして人を近づけなくしている。アカネの元にも宇宙警察が行っているので、アカネの安全も守られている。ナナと聡吾の目の見える所に宇宙警察がいないのは、ナナと聡吾はブレード達を空間跳躍で誘い込むためのおとりであるからだ。ナナも事前にその作戦を了承していた。腕利きの宇宙警察が隠れた所からナナ達を警護し、防護服を着ていない聡吾の周辺を特に注視しているため、聡吾が危険にさらされることはないだろうと考えていたためだ。


 突然、ナナと聡吾の前にブレードともう一人の部下が空間跳躍で現れた。不意に現れたブレードに対してナナが小銃を構えて撃とうとすると、部下のカートが「風撃!」と魔法を唱え、ナナの小銃をはじく。小銃は風撃でナナの拾えない位置まで飛ばされてしまった。周囲に潜んでいた20人余りの宇宙警察がブレード達を射撃しようとすると、ブレードは「無効化障壁!」と魔法を唱え、バリアを自分とカートの周りに張った。


「やっと会えたな、小娘。お前の命を俺によこせ。さもなければ、この高性能爆薬を使う!」ブレードは爆薬を上に掲げた。

「なっ!?」ナナは防護服を着ていない聡吾と池袋界隈の多数の人間の命が人質に取られたことを一瞬にして悟った。

「10数えるうちにその身を差し出せ。いくぞ10、9、8……」


 宇宙警察は強烈な射撃の連射でブレードを攻撃するが、「無効化障壁」に無効化されてしまう。このバリアはどんな攻撃でも無効化するバケモノじみたバリアなのだが、バリアを張っている時間は1分も持たないという欠点も持つ魔法だった。「無効化障壁」を使えることは宇宙警察も織り込み済みだったが、音楽街で使ったもの以外にも高性能爆薬を持っていることは計算違いだった。


「私が行かなければ、この街の人も聡吾も死んでしまうのでしょう? それなら行くわ」


 ナナは前に出た。ナナは悠然と立ちながら目をつぶる。ブレードはナナに一歩一歩近づき、テクノロジーで強化されている短剣でナナの首をかっ切った。ナナは首から多量の血を噴射しながら横に倒れた。


 誰が見ても、すでにナナは死んでいる。嘘だろ、嘘だろう!?


「カッカッカッ。よし、目的は果たせた。あとは聡吾、てめえだ」ブレードは勢いづいて言う。


 カートは何度か風撃で聡吾を攻撃しようとするが、宇宙警察の使う魔法で全て防がれてしまう。



「ナナ! ナナ!」僕は叫ぶ。

「高性能爆薬を今、使う! ざまあみやがれ!」約束ではナナを殺せれば爆薬は使わないはずなのに、ブレードは爆薬を使おうとする。はなから約束なんて通用しない相手なのだ。


「そこまでだ! 激・雷撃!」そこに現れたのはアルエだった。アルエの「激・雷撃」はブレードのバリアを打ち砕き、ブレードの身体を吹っ飛ばす。そこに宇宙警察の射撃の攻撃が加わり、ブレードと部下はうつ伏せに倒れた。


 アルエはブレードと部下の脈が止まっていることを確認する。


「アルエさん! ナナが! ナナが!」僕は泣きわめきながら必死に言う。

「駄目だ。ナナさんもすでに亡くなっている」アルエは無念そうな表情をしながら言った。

「そんな! 魔法なら生き返すことができるでしょ!?」

「私の持っている魔法では生き返すことはできない」アルエはうなだれる。

「僕は諦めてないよ! ナナを生き返らせること!」無残な姿になったナナを見やりながら、こんな結末は認めないとばかりに僕は咆哮した。


 ナナは僕の命を救ってくれた恩人だし、引っ込み思案だった僕の姿勢を少しずつ変えてくれた恩人でもある。内に秘めた優しさと熱さで僕に未知の世界を教えてくれたナナ。そんなナナが死んでしまうなんて、絶対に嫌だ!


 その後、アルエは僕の目をのぞきこみ、言った。

「もしかしたら、君なら生き返らせることができるかもしれない。この聖書を使って」

 アルエは手に持っていた聖書を僕に渡し、「聖書に向かって念じながら、君の思うがままに言葉を唱えるんだ。それが命を吹き込む魔法になるかもしれない」と言った。


 僕がおかしくなる原因の一つでもあった「ストレンジャーの聖書」のミュージックビデオで見た聖書と同じ聖書。これは運命なのかもしれない。頭にかけていたゴーグルを脱ぎ捨て、聖書を手に持ち、僕は自分の心の叫ぶ方へ言葉を連ねた。


「僕は念じる。天恵の風よ、ここで僕の一生の願いを使う。失われし命の魂魄よ、僕の願いと共に再び光輝たる核を取り戻さん!」

 すると、聖書が光を放ち、あたり一面まばゆい光に包まれて視界は真っ白な光で何も見えなくなった。


 気づくと、ナナが路地に横になりながら笑っていた。

「私は聡吾に助けられたのね」

「ナナ! ナナ!」涙と鼻水で僕の顔はぐちゃぐちゃだ。


「ワンダラーはレアな魔法を使えると聞いていたが、聡吾君は蘇生魔法を使えるとは……」アルエは一人、小さな声でつぶやいた。


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