9話
俺の目の前には顔見知りの女性が座っていた。
「フラウ……」
「あら、お久しぶりですわ。大和様もユズハも元気そうで何よりです。ここが大和様が住んでいる世界なのですね」
金髪のロングヘアーに整ったプロポーションを持ち、胸は大きく自己主張が激しい。容姿は知性と気品を感じさせ、綺麗と言うより美しいが似合う。今は異世界のドレスを着ておりこの世界では映画の中でしか見る事が無い格好をしている。
冒険に出ていた時はパーティーメンバーの中で俺に次ぐ年長者で、今の年齢は20歳の筈だ。女性ばかりのパーティーで他のメンバーのまとめ役として良く助けて貰っていた。今は俺が17歳だから、3つ上のお姉さんになる。
フラウは突然異世界に連れて来られた動揺は全く感じさせない。これが国を治める王族の器なのだろうか?
「ユズハ…… 貴方の事で向こうが大問題になっていますよ。まさか、あんな行動を取るとは…… 抜け駆けした貴方の事を残りのお二人方がガチで殺すって息巻いておられました」
万遍な笑みを浮かべて恐ろしい事をユズハに伝えて居た。ユズハは額に汗を浮かべて、フラウの顔は見ずに違う方を向けている。
「今はそんな話しをしている場合じゃないだろう。国を治める王族の人が飛ばされたんだ。これは大問題だろう。すぐに帰る方法を見つけないと…… そうだ、護符はまだ無いのか? あれを使えば……」
「帰還の護符はあれが最後だよ」
ユズハの言葉に俺はガックリと肩を落とす。
「心配はありません。大和様もご存じと思いますが、私には兄がいますので国の方は大丈夫でしょう。それよりも私にも大和様の住んでいる世界を教えて下さい」
「そんな簡単に言って大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫ですわ」
確かにフラウには兄がいるが…… それでも駄目だろう。俺は頭痛を覚えて頭を抱えた。
その後、俺はユズハの現状を説明する。共に生活を行い。学校へ行っていると。話の途中でユズハも説明に加わり楽しそうに話ている。
実はこの2人は異世界でも仲が良かった。ユズハはフラウの事を実の姉の様に慕っていた事を思い出した。
とりあえずユズハにフラウの事を任せて、俺は異世界にコンタクトを取る方法を考えてみる。ユズハの道具袋の中を漁ったりしてみたが特に有効なアイテムは見当たらなかった。
数時間程経過しただろうか? 良い方法が見つからないまま、一度俺はフラウの元へと向かう。今はユズハの部屋にいるはずだ。
ドアをノックすると元気の良い返事が聞こえてくる。中へ入るとフラウは異世界の服から着替えていた。
「ん? そんな服何処にあったんだ?」
少し古そうなデザインだが、素材が良いので普通に着こなしている。
「あぁ、これはお母様からお借りしたんですよ。似合ってるって喜んでいましたよ」
ユズハは元気良く答えた。
「えっ! 母さんに合わせたのか!? ビックリしなかったのか?」
「えっ!? 何をビックリするんですか?」
俺は嫌な予感がして一階へと降りソファーでくつろぐ母さんの姿を見つける。
「母さん、フラウって言う女性は、えっと……」
いざ降りて話しかけても、言い訳を考えて居なかった。これはマズッたと思っていたが、母さんは何を今更と言う感じで答えた。
「何を今更言ってるの? ユズハちゃんのお姉さんでしょ? ホームステイに着た時から一緒だったんじゃない」
「へっ!?」
(まさか、あいつ等再び洗脳を……)
俺が部屋へ飛び込みユズハの道具袋の中を見て見たが、混乱の粉は見つからない。
「抜いて居やがったのか!!」
だが、幾ら考えてもこの方法しかない。仕方ないかと考え直す事にする。
その日の夕方、俺は部屋から出る事は無かった。
2人は今、俺の父さんと妹を洗脳中の筈だ。幾らなんでも身内の洗脳の現場にいるのは良心が持たない。
「父さん、愛、俺をゆるしてくれ……」
2人を生贄に捧げている気分で俺は神に許しを請う。
今後俺の生活はどうなっていくのだろう? 不安ばかりが募っていった。




