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異世界を救って日本に戻れたのだが、仲間も一緒に付いて来て馴染みすぎている!  作者: おうすけ
異世界を救って日本に戻れたのだが、仲間も一緒に付いて来て馴染みすぎている!
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3話

 俺とユズハとの新しい生活が幕をあけた。ユズハの立ち位置はホームステイ中の外国人となっている。

 俺もユズハの当面の生活が確保されたので一安心した所だ。今日はユズハに街を案内する事になっていた。ユズハに俺が住んでいる世界を見てもらいたいと思っていたので丁度いい。


 今回は遠出はせずに家の周辺を散歩するつもりで、ユズハは妹の愛から借りた服を着ている。

 育ての親の俺が言うのもなんだがユズハは凄い美人に成長していた。異世界の女性達は美人な人が多かったが、俺のパーティーのメンバーは更に一段階上の美しさを持っていた。そのユズハはこちらの世界の服も見事に着こなし芸能人顔負けの存在感を発している。


 だが当の本人はそれを気付く事も無く。妹の服がキツくて少々動きづらいとか、こんな布切れだけでは敵の攻撃を防げないとか愚痴をこぼしている。

 ここは平和な日本だぞ何故攻撃に備える必要があるんだ? 今週末にはユズハ専用の衣服などを駅前のデパートに買いに行く予定になっているので今は我慢して欲しい。

 

 高校1年になる妹の私服は丈の短いスカートに白いシャツ、その上から可愛いベストと言うコーディネート。あまりの似合い様に愛が興奮してしまい2人で楽しそうに写メを撮っていた。

 携帯の画像を見てユズハは驚いたて居たのが面白い。異世界では写真は無かったから仕方ないか。


 ただ8等身のユズハが丈の短いスカートを履いていたので露出部分が多くて、俺としては目のやり場に困っていた。

 

 家を出ると住宅街特有の家が密集した風景が飛び込んでくる。俺の家は高台に作られたベッドタウンに建てられており、近くには駅や商業施設、公園、デパートなどもあった。不便な所が少なくて人気の地域だ。

 異世界とは違う街の雰囲気に飲み込まれながらも、ユズハはおぼつかない足取りで俺の後ろを付いて来ていた。


「大和、魔物がいます。すぐに戦闘体勢を!」


 ユズハの言葉に何事かと思い俺が振り向くと、ユズハは野良猫に向けて戦闘の構えを取っていた。


「剣が在れば一撃で…… 仕方ない。ならばウィンドカッターで!!」


 見えない風の魔法が野良猫に向けて放たれた。だが猫は野生の第六感を発動し身を翻して魔法を避ける。

 猫がいたブロック塀には縦長の切り目が刻まれていた。


 ユズハは追撃の詠唱を始める。俺はそれを阻止するべく全力で背後から後頭部へチョップをお見舞いする。


「痛っ!!」


 ユズハは衝撃を受けて詠唱を中断し、頭を両手で抑えたままうずくまっていた。


「あれは野良猫といって単なる小動物で害はないから攻撃しては駄目だ」


 野良猫を退治している所を近所の人に見られたら、動物虐待で逮捕されてしまう。速やかな対応が出来て良かったと胸を撫で下ろす。


「う~っ 小動物……? あの生き物は無害と言う事なの?」


 痛みから立ち直ったユズハは走りさる猫を見つめていた。


-------------------------------------------------


 今回の目的地は近所にある公園で日曜になれば家族連れで賑わう人気スポットの一つだ。

 今日は平日なので人は少なめで、たまにすれ違う人は高齢者の方が多い。敷地内には緑が多く茂っており公園の中央部には貯め池も作られている。休日にはボートの貸出もしていた筈だ。

 アスレチックゾーン。遊歩ゾーン。植栽ゾーンと訪れる人が色々と楽しめる様に幾つものエリアに分かれた複合の公園であった。


「ここは公園と言ってな、人々が休みの日にがゆっくりと過ごす場所だな」


「やまと。ずっと思っていたけどこの世界の人は武器を持っていない」

 

 すれ違う人を興味深く見ていたユズハはそう問いかける。


「良い所に気付いたな。そうだ、この世界は平和だから人を滅ぼそうとする魔族も魔物もいない。だからユズハも変に警戒する必要はないんだ」


「争いの無い世界…… これが大和のいた世界」


 ユズハは笑みを浮かべてキョロキョロと嬉しそうに見渡していた。生まれてから殺伐とした世界で過ごしてきたユズハにとって日本と言う国は真逆の世界。

 帰れるか解らないユズハの事を思うと不安も多いが、折角この世界に来たんだからゆったりとした日々を過ごして欲しい。俺はそんな事を願い公園を歩いて行く。


「あー、何か腹が減ってきたな。ユズハちょっとコンビニにでも行って何か食べるか?」


 小腹が空き腹をさすりながら俺が提案する。この世界の食べ物は旨い物ばかりで、美味しいお菓子など食べればユズハも喜ぶだろう。


「食べ物なら私が取ってくる。丁度目の前に池があるから」


「おい! 池ってどういうつもり…… まさか」


「サンダー!!」


 俺の不安は的中し、ユズハは池に電撃の魔法をぶっ放す。

 池のあちこちには、気絶した魚がプカプカと浮いていた。


「活きている魚を焼いた方が美味しいから、威力はちゃんと抑えてる」


 ドヤ顔で俺が教えたピースサインを繰り出していた。


「それじゃ、今から池に入って取ってくるから」


 そのまま池に飛び込もうとするユズハを抱きかかえて、俺は一目散にその場から走り出す。こんな状況を見られたら、病原菌の大発生や毒をまかれたとか大問題になるのは間違いない。

 確かに異世界に居た時は川や池で魚を取って食べていたけど、まさか日本で同じ事をするとは思っても居なかった。俺の考えがもう日本的な思考に戻っているのだろう。

 

 人気のない場所まで全力で走りきった後、大きく肩で息をする。これはユズハにこの世界の暮らし方について教えておく必要があると本気で考える。


「とりあえず、ユズハはこの世界で魔法は禁止だからな! 約束を破ったら本気で怒るから」


「ごめんなさい……」


 俺に怒られ子犬の様にシュンと落ち込んだユズハの手を引き俺はコンビニへと向かう。コンビニでアイスを買ってやり食べさせると目をまん丸にさせて美味しそうに食べていた。

 俺と目が合い嬉しそうに瞳を細め表情がくだけるユズハの笑顔は本当に幸せそうだ。

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