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異世界を救って日本に戻れたのだが、仲間も一緒に付いて来て馴染みすぎている!  作者: おうすけ
異世界を救って日本に戻れたのだが、仲間も一緒に付いて来て馴染みすぎている!
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18話

 作戦は包囲殲滅戦とフラウ救助を同時に行う2面作戦が提案された。まずは俺と騎士団、冒険者達で敵のアジト周辺を包囲し敵の注意を引く。そうして敵の戦力を分散させている間にフラウを救出する至ってシンプルな作戦だ。


 俺は敵の注意を引く為に包囲組に入り、ユズハ、エルザ、ソフィーの大陸最大戦力である3人はサポート組と共にフラウ救出に向かう。

 アジトは魔王軍との戦いで滅びた小さな村の廃墟。作戦の決行は今から4時間後の深夜と決まる。


「フン、フフン! フ~ン」


 会議が終わり騎士団長やギルド長などの多くの人員を指揮する者は素早く会議室から飛び出し、準備に取り掛かる。俺達は装備を整える程度しかやることは無いので、まだ会議室の中に残っていた。

 上機嫌に鼻歌を歌うエルザや魔法書を読んでいるソフィーは普段と様子が変わらない。フラウが攫われたのに心配していないのか? と不思議に思う。


 その時、机を手で叩き大きな音をさせてユズハが立ち上がる。


「ええい! 腹が立つ。 エルザもソフィーも気が緩みすぎじゃないのか。フラウが今どんな目に在っているかも解らないのに、鼻歌を歌ったり、本を読んだりと心配はしないのか!!」


 俺が会議室に入ってから気付いていたが、ユズハがずっと不機嫌だった理由が今解った。ユズハは2人の余裕そうな様子を見て機嫌が悪かったのだ。

 そして遂に堪忍袋の緒が切れ年下の仲間に怒りつけたという事だろう。今回は俺もユズハと同じ事を思っていた。この2人は心配している素振りが最初から全く無かったのだ。


「え~ 心配? 僕はしてないけど」


「私もしていない……」


 2人はユズハの剣幕に動じる事なく言い放っている。何か根拠でもあるのだろうか?


「心配していないって、どういう事なんだ? 仲間が拐われたんだぞ?」


 壁に体重を預けて遠くから様子を見ていた俺が問いかけた。エルザとソフィーは互いに顔を見合わせ笑う。

 一体何がそんなに可笑しいのだろうか?


「や~ちゃんも解っていないの? だって攫われたのはふ~ちゃんだよ? ふ~ちゃんが本気で出した障壁を破れるのって幹部クラスじゃないと難しいんだよ」


「幹部は殆ど私達が倒した…… 今残っているのは雑魚ばっかり……」


 エルザの言葉に相槌を打ちながらソフィーが続く。

 確かにエルザの言う通りだ。フラウは随一の神聖魔法の使い手で神の障壁は鉄壁とも言える。あの障壁のお陰で何度命を助けて貰ったのか? 軽く思い出しただけでも数え切れない。

 それに俺達は魔王と戦う前に各地の幹部を軒並み倒していた。魔王城にいた側近達もあの戦いでみな倒している。

 更に魔王が倒され数ヶ月しか経過していない現状で、幹部並みの強さを持った者が急に現れるとは考えにくい状況だとも言える。


「や~ちゃんもゆ~ちゃんも、向うの世界に戻ってから温くなったんじゃない?」


 ニシシと笑みを浮かべてエルザは言葉を浮かべた。2人の言い分も解るが、生き残りの幹部がいるかもしれないし薬など使われて身動きを封じられているかもしれない。

 

「確かにそうだが、生き残りがいるかもしれないじゃないか。余り余裕を見せるのもどうかと思うぞ」


「うん、それは解ってる。だけどあのふ~ちゃんだよ?」


「フラウは強い…… 心配ない」


 俺達は心配しすぎているのか? 俺もユズハも顔を見合わせ困惑の表情を浮かべた。日本の平和な空気が俺達を弱くしているのかもしれない。


「あっそうだ! ずっと気になっていたけど。ゆ~ちゃんって太ったよね?」


「えっ嘘! そんな事は……」


 顔を真赤に紅潮させてユズハは否定する。だがエルザはスタスタとユズハの背後に周り腰に両手を添えてヒョイっと持ち上げた。


「うん、うん。絶対に太ってる。重くなっているから、それに腰の肉がこんなにも沢山‥…」


「エルザ、放して! 嫌、腰を揉まないで、エルザァァァァ~」


 足をバタつかせ、ユズハは絶叫していた。俺はユズハが太った事など気付かなかったのだが?


「お菓子が美味しいからいけないんです。ケーキ、あんみつ、アイスクリーム…… うわぁぁぁん。私稽古に行ってくる」


 ブツブツと恨み言を行った後にユズハは走って部屋を飛び出していった。


「ニシシ、行っちゃったね」


「いい気味…… 抜け駆けなんてするから…… お仕置きは必要」


 2人は仲良くハイタッチをしている。こいつらユズハを弄っていたのか…… こんな事で救出作戦が上手くいくのかと心配になってくる。

 ユズハが戻って来たのは作戦の一時間前で全身汗まみれで息も絶え絶えであった。

 こいつはどれだけ稽古をしてきたんだ? やり過ぎだろう……


-----------------------------------


 夜の9時、街頭も無いこの世界では暗闇に包まれる。星の輝きと月の様に優しい光を注ぐ衛星が少しの視界を確保してくれていた。

 岩陰に潜んでいた俺は魔法具を取り出して魔力を流し話し出す。これはトランシーバーと同じ道具で魔力を流す事によって使用可能だ。この世界にはこの様に魔力を使う便利な道具が色々と作られている。


「大和だ。こっちは配置完了。ほかの者はどうだ?」


「こちら、冒険者組配置完了!」


「騎士団です。配置完了しています」


「救出組、いつでも行けます」


「それじゃ、作戦を開始しよう」


 作戦はまず俺達包囲組が遠距離の威嚇攻撃を初め敵の注意をこちらに向ける。そうすれば相手戦力の一部が確認に来るだろう。敵の戦力が分散されている隙に救出組がフラウを救出する。その後は冒険者と騎士団による殲滅戦を行う手筈だ。


「よし。魔術士は水魔法で村を攻撃してくれ。今回はあくまでも威嚇攻撃だ。村の中心部じゃなく、周囲を狙って欲しい。攻撃開始!」


 騎士団所属の魔法部隊が水球弾を作り出し村の周囲に発射していく。村に当たらずとも地面に当たればそれなりの打撃音が発生するので相手もすぐに気づくだろう。


「攻撃の手は緩めるな! どんどん打ってくれ」


 俺達が攻撃をしつづけていると、村の方からも反撃が開始される。


「よし、いいぞ。 このまま攻撃を続けろ」


 敵の魔法は障壁で防ぎつつこちらも攻撃の手をゆるめない。そうしている内に村の方から10数名の魔族が攻めてきた。相手は一定の距離を保ち大声を張り上げて威嚇を始める。


「お前達は正気か? 王女がどうなってもいいって事だな」


 一番前衛にいる魔族の男は火球を作り出してこちら側に投げつけた。その火球を俺は大きくジャンプし空中で2つに叩き切る。


「約束通り、勇者様が来てやったぞ!」


「ほぉ~ お前が勇者か? なら話は早い。王女の命が惜しくば大人しくしてもらうぞ」


 近くで見てみると、相手は魔族でも中位の力を持っている様に見える。だが幹部や魔王に比べると赤子にも劣る。若返った俺の姿を見ても反応が無い事から、どうやら僻地に派遣されていた魔族だろう。


「王女は無事なのか?」


 俺の言葉を聞き、要件を受け入れたと勘違いした魔族の男は口角を釣り上げて笑みを浮かべた。


「あぁ、丁重に扱わせて貰っているぜ。だがなそれはお前が大人しくしている間だけだ」


 次に男は背後に付き添う部下の方を向くと王女を連れてくる様に指示を出す。

 だがその時、村の中央部分から巨大な火球が打ち上がる。

 魔族達は一瞬その火球に気を取られ、逆に俺の方は素早く勇者の剣を抜き先程まで話していた魔族の男へと駆け寄り一瞬の内にその首を切り落とした。


「なんだと……」


 断末魔も殆ど発する事も出来ずに魔族の男は大地に倒れる。


「フラウは救出済みだ。総員突撃!!」


 俺の号令を受けて全ての者達が村へと突撃を始めた。残された魔族達はすぐに劣勢になっていき、瞬く間に殲滅されていた。


 敵が殆ど倒された事を確認した俺は村へと入る。村の方でもユズハ達が魔族と戦闘していた様で至る所で死体が転がっていた。

 俺は村の中央で仲間たちの姿を見付け駆けだした。その中にはフラウの姿もあり、怪我も無さそうで先ずは一安心だと言える。

 フラウも俺に気付き駆け出してくる。そして俺に抱きついてきた。


「助けに来てくれると信じていました…… 凄く怖かったです」


 震える様な声でギュッ力強く抱きしめてきた。余程怖かったのだろう俺は安心させる為に頭を撫でて落ち着かせる。


「フラウ!! 離れなさい。そんな芝居までして大和の気を引きたいの!?」


 その様子を見ていたユズハが俺とフラウを引き離す為に間に入ってきた。


「おい、フラウは攫われて心細かったんだぞ。この位はいいんじゃないのか?」


 ユズハの行動の意味が解らず俺がそう言うと、ユズハはビシっと人差し指をフラウに向ける。


「だって、私達が突入した時、大和がいないと解った途端のあの顔!! えっ!?あなた達だけ? って顔してたもん。絶対に捕まったのもわざとよ」


「いいえ。心細かったのは事実ですわ。大和様だけしか私の気持ちを理解してくれませんのね」


 フラウは俺を抱きしめる力を更に込めだした。


 ユズハの後ろにいたソフィーとエルザは予想通りと言わんばかりな顔をしている。


「まぁ、フラウが無事で良かったと言うことで……」


 それしか言えず。後処理は騎士団達に任せて、俺達は一足先に王宮へ帰る事にした。

 馬車に揺られ戻っている時に俺の腕に抱きつくフラウに小声で本当の事を聞いてみた。


「確かに私を攫った者達の実力は高くありませんでしたわ。ですが心細かったのは事実ですの」


 メイドの命を守るために捕まったのだ、いくら自分の方が強くても敵が多くては手出し出来ない。心細かったのは事実だと俺は思う。


 その後王宮へ帰ったフラウは国王や皇太子と抱き合い。無事を喜んでいた。


 俺はフラウの帰還を確認した後、皇太子に明日の早朝、日本へ帰る事を伝えた。

 その時にある頼み事を幾つかしておく、皆には悪いがこうするしか今の俺には考え付かない。 

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